大型航空母機から吊り下げ式宇宙往還機を打ち上げるのが彼らの仕事なのだが、
一筋縄でいかない仕事ばっかり請け負っている。
早朝のど田舎のハードレイク空港。
管制塔の当番チャンが寝ていたら、太平洋を渡ってきた小型機から着陸許可を求められる。
それも予備燃料も使いきるから、最優先ど降ろせという男の声。
しかし、その頃 同業他社の母機 アントノフ An-225ムリヤがミッションのため、時間がないと離陸体制に入る。
そこに接近する小型機…管制塔にいるチャンはアボートを通告するが、燃料がないと突っぱねる。
あわや事故!?ってところで、機首を跳ね上げてムリヤのジェット後流を使って減速、
ドラッグシュートを開いて機首を下げて着陸なんていうプガチョフ・コブラの変形技を見せつけたのは
自家用登録されたF18ホーネットにのったニューフェイス 羽山美紀。
ベビーフェイスと声でなめられないためボイスチェンジャーをつかっていたらしい。
度胸は据わっているのだが、経験ありってことで雇ったはずが、
宇宙飛行士としての資格もちだけど、実戦経験がまったくなしというルーキー…
他のパイロットは宇宙に出ているし、仕事は受けてしまってる…
で、シミュレーションによって適性を見ることになるのだが、このシミュレーション 51-Lは無線はダメ、母機との接続を切った後、とんでもないトラブルの連続に対処し続けるというシミュレーションだった…
って具合にテンポよく進む作品なんですが、それよりも舞台設定が良くできているのです。
作者である笹本祐一は宇宙マニアです。資料調査、取材旅行(=自分の趣味)を綿密に行ったうえで、
もっともらしい世界を設定しています。
●宇宙港
昔のSFに書かれた宇宙港というのはずいぶん大げさな感じでしたが、
本作のものは、母機に吊り下げ高空から空中発射という古くはチャックイェーガーのX1(1947)や、
オービタル・サイエンシズの L-1011トライスターから打ち上げるペガサスロケットなどの例から、
母機として、An-225ムリヤ(アビオニクス、エンジンは換装されている)、超音速ダッシュができるB-58ハスラーなどを運用できて、騒音問題もなく安全な砂漠に空港を設定している。
本が書かれた1997年当時には民間宇宙港はなかったのですが、
世界初の宇宙船空港「スペースポート・アメリカ」が米ニューメキシコ州にできたのは今年のこと。
やっぱり砂漠に作られました。
●ダイナソア
空中発射型宇宙機の名前ですが、もともとアメリカ空軍により計画されたロケットの先端につけるタイプの往還機 Boeing X-20のコードネームです。
諸事情により実機は一機もないのですが、この作品のダイナソア SB-911 も Boeing製であり、X-20のダイナソア計画を21世紀にBoeingがアレンジしたものとなっています。
エンジンには 三菱 LE-9A。実在するLOX/LHの液体二段燃焼方式で H-IIA/Bで使われた LE-7/LE-7Aを、空中発射型宇宙機用に、小型化したバージョンとして設定されています。
ちなみに
525円ってのは、この本が1997/3に出たために 本体価格510円、消費税率3%だったため。
現在は536円です。
-
購入金額
525円
-
購入日
1997年04月頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。