レビューメディア「ジグソー」

幻の盤

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。時代の波、版権の壁にもまれ幻の盤と化してしまった音源があります。そんな音源をご紹介します。
このギターの弦を切るジャケットがラスト、という感じでいいですね
このギターの弦を切るジャケットがラスト、という感じでいいですね

The Doobie Brothers。1970年代から80年代初期に活躍したアメリカンロックバンド。基本系としてツインギター、ツインドラム構成のバンドで、初期はC&WやR&Bが強いがメンバーチェンジを経てAOR、コンテンポラリー系の曲まで演るようになった幅広い音楽性を持つバンドだ。初期はギターのTom Johnstonを中心に組まれていたが、後半彼の健康状態の問題でメインボーカル(キーボード兼務)がMichael McDonaldに変わったあたりで、カラーが激変した。のちに再結成されるが、再結成前12年に及ぶ歴史に通しで在籍したのはギターとボーカルのPatrick Simmonsただひとり(ちなみに現在Tom Johnstonも復活して再結成された形式で活動をつづけているがここでもPatは参加していて、全Doobiesの歴史を通して完全参加は彼ひとり)。前期は前期で、後期は後期で味わい深く甲乙付けがたいのだが、やはり同一のバンド名で活動するには難しいほどの変わりようで、このアルバムの公演(1982年 GREEK THEATRE)を持って活動休止となる。

オープニングは「Slippery St. Paul」だが、開演前のBGMといった風情。実際は「Takin' It to the Streets」からコンサートは幕を開ける。Willie Weeksのベースラインからはじまり間髪入れずツインドラム(Keith Knudsen、Chet McCracken)がどんぴしゃりのタイミングでイン、後期メンバーのCornelius BumpusのテナーサックスがAORの薫り高いソロをとるなか、Michael McDonaldがいい味のボーカル。期待が盛り上がる。
続く「Jesus Is Just Alright(希望の炎←なんつ~邦題だ)」は初期の曲だが、「歌える」メンツが多いDoobies、ブリッジ部分ではCornelius Bumpusがクロいボーカルを聴かせる。
このあとPatrick SimmonsのしみじみとしたMCが入り、「LAで始めて、12年かけてLAに戻ってきた。今日はDoobie(マリファナのスラング)でもやりながら楽しんでくれ」と語りかける(実際に吸いながら聴いていた連中も多かったらしい)。
続く「Minute by Minute」はイントロの変拍子風のエレピや途中の転調していくくだりがMichael McDonald色の強いAORチューン。後期の代表的名曲だ。スローシャッフルのリズムと♪Minute by, Minute by, Minute by...♪の繰り返しとイカした(←死語)コード展開が良い。
「Listen to the Music」は初期の曲だがちょっとベース重視のコンテンポラリー系味付けがされている。歌に入ってしまえばツインドラムならではの“リズムの甘さ”とメインボーカルがとれるプレイヤーが多いDoobiesならではの厚いコーラスでウエストコーストロック、なのだけど。
「Black Water」は途中参加ながら再結成後の現在までも引き続き参加する才人、ギター兼バイオリンのJohn McFeeの活躍するカントリーチックな曲。
そのMcFeeは「Slack Key Soquel Rag」で、Pat Simmonsとハーモニクスアルペジオも聴ける息の合ったアコギのラグタイムを聴かせるが、その前にMichael McDonaldの渋いボーカルが聴ける“ザ”AOR「You Belong to Me」がくる。泣きのサックスソロ、薄く入るストリングス系キーボードがラシイ。
「Don't Start Me to Talkin'」の最後にPatがスペシャルゲストを呼び出す!
"Everybody knows my friend, your good friend, Tommy Johnston!"
懐かしいTom Johnstonの熱いボーカルで始まるのは名曲「Long Train Runnin'」。あのギターのカッティングだけで観客総立ちのどよめき、Bobby LaKindのパーカッションソロからツインドラムのソロもあり大盛り上がり!ちょっとギターソロのバッキングパターンなどが初期の頃よりひねってあってMichael McDonaldの洗練を感じさせるが、闘争・内部抗争が多いアメリカビックネームバンドのなかで例外的に新旧メンバーが仲が良いこのグループ、みんな一丸となって演奏している。
アンコールはTomも入れて初期の名曲「China Grove」!アメリカンロックなこの曲で12年のバンドの歴史(再結成前)に終止符を打った。エンディングを死ぬほど引っ張った「Long Train Runnin'」に比べてあっさりした終わり方だが、それも彼ららしくて良い。

で、この盤。現在国内廃盤中。中古で3倍以上のプレミアがついている。実は同内容のCDは輸入盤だと新品も手に入るが(こちらもプレミアついてるけど)、実は「重要な部分」が欠落している(らしい)。

曲はあまねく網羅されているが、削られているのはMC。特にPatrick Simmonsのしみじみとした「LAで始めて、12年かけてLAに戻ってきた。今日はDoobieでもやりながら楽しんでくれ」のくだりや最も聴衆が沸いた"Everybody knows my friend, your good friend, Tommy Johnston!"のコールが削られているらしく、AmazonのImport盤のレビューでも不満噴出!当然私の持つのは初期国内盤ですので入ってますが、これは昔からのファンの特権ですカネ。
収録曲には変化がないんですが...
収録曲には変化がないんですが...

曲でなくMCが削られ、盤の価値が変動した、希有な例です。

【収録曲】
1. Slippery St. Paul
2. Takin' It to the Streets
3. Jesus Is Just Alright (希望の炎)
4. Minute by Minute
5. Can't Let It Get Away (愛のゲッタウェイ)
6. Listen to the Music
7. Echoes of Love
8. What a Fool Believes
9. Black Water
10. You Belong to Me
11. Slack Key Soquel Rag
12. Steamer Lane Breakdown
13. South City Midnight Lady
14. Olana
15. Don't Start Me to Talkin'
16. Long Train Runnin'
17. China Grove

The Doobie Brothers Officialsite
  • 購入金額

    2,348円

  • 購入日

    1990年頃

  • 購入場所

11人がこのレビューをCOOLしました!

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