レビューメディア「ジグソー」

一番読み応えがあるのは目次です。

C/C++言語にまつわる誤解を紹介する本です。
誤解の生じる場面を寸劇で書き、何が誤解のポイントかを解説し、関連する言語規格を示す、というのが全編を通したスタイルです。

筆者はC/C++言語に精通しているようで、技術的には興味深い話も多く、テーマは面白いのですが、表現が主観的で無駄話が多く、読むのが精神的に疲れます。
例えば
「このようなテンプレートのテクニックを身に付けなければ、C++という言語の能力を半分も引き出していないといえます。」
とか
「…常識的なことですので、このコードを見て明確であることがわからない場合は勉強不足だといわざるをえません。」
とかは、本題と全く関係が無い筆者の主観的な記述でイライラするばかりです。必要なことだけ書けば半分くらいの文量にできそうです。

それでいて言語規格を示す割には解答(少なくとも筆者の思う正解)を書かずに
「何が正しく、何が間違っているのかという点については、できる限り読者自身に判断してもらうことにしています。」
なんて書いています。このポリシーがコラムじゃなくて「はじめに」に書いてあれば購入時に判断もできたのですが。
ちなみに「はじめに」には
「『合理的根拠のない誤った理解』、つまり”迷信”が多数収録…(中略)…実際はどうなのかあまりよく知られていない知識について、徹底的に掘り下げています。」
と書かれているので、誤解の原因と解答、およびその解説まで掘り下げて書いているものと勘違いしかねませんが(僕はしました)、答え(答えに至る考え方)はあんまり書いてないです。

対象とする読者も絞れていない感があります。上級者には今更なテーマもある反面、初心者が読むには前提知識に関する解説が足りないし、中級者以上であれば自分で調べられるような(それこそ目次だけに価値がある)内容に終始しています。これに、筆者の貴重な知識と経験から得られた解答やその考え方が書いていれば、多少の無駄話なぞ看過できるのですが!

さらにボールドの多用やどうでもいいフォントの使い分け、何を狙っているかわからない漫画が随所にあり、読み辛く感じました。


表現、体裁含めて本としての完成度はいまいちです。
知識を広げるきっかけ作りや、著者が「はじめに」で書いている通り「一種の話のネタとして」読むのが良いと思います。
読者の技術レベルに関わらず、目次以外購入する価値はありません。
  • 購入金額

    2,604円

  • 購入日

    2011年05月08日

  • 購入場所

    書店

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