レビューメディア「ジグソー」

ELTの曲のチカラとヴォーカリスト/プレイヤーの演奏のチカラ

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。「出稼ぎ盤」。海外の有名なプレイヤーが日本の企画盤に登場することがあります。プレイヤーにとっては小遣い稼ぎに過ぎないのかもしれませんが、そこはそれ、プレイヤーとしてきちんとした仕事をしますので意外な好演が残ったりします。そんな企画モノを掘り起こしてご紹介します。あれ?どこかで同じような事を言った気が..デジャヴ?

「ELT Songs from L.A.」。これは企画モノ。ELTことEvery Little Thingの曲をAORの大物ミュージシャンに歌わせようというモノ。当然詞は英語詞になっている。そのため(および私の英語力がないため(^^ゞ)五十嵐充の物語性のある詞の良さは感じられない。

でもこれ

と大きく違うことは当時のメンバーであり、メインコンポーザーであった五十嵐充が選曲に関わっていること。でも五十嵐はメロディー譜とコード進行だけ渡して後はミュージシャンに任せたらしい。そのため逆にミュージシャンのカラーが強く出たアルバムとなった。

そもそも私がこのアルバムを知ったのはJALのCFで3曲目の「Over and Over」がオリジナルではなく、この盤のバージョンで流れていたため。「妙にChicagoっぽいELTダナ」。もともと五十嵐の曲はAORの影響を強く受けており、「それっぽいな」とは思っていたが...当時私は会社の研修で街中に行く機会が多かったたため、巨大CD屋に寄り試聴してみるとまさにChicago。だってメインヴォーカルがJason ScheffでコーラスがBill Champlin。すぐにレジに行ったことは言うまでもない。

買ってみて判った。
参加ミュージシャンがものすごい。
Chicagoからは前述の2人、TOTOからはJoseph Williams、Steve Lukather、Mike Porcalo、AIRPLAY(!)からTommy FunderburkとJay Graydon、INGRAMからPhillip IngramなどAORの時代を支えた「アノ」メンツ。

特にTOTOトリオ(Joseph Williams+Steve Lukather+Mike Porcalo)が参加する8曲目の終わりの怒濤のギターソロとエンディングのキメのユニゾンで終わるあたりはまさに「愛する君に(I'll Supply the Love)」。一方2曲目のクィックィッと引っかけるユニゾンギターソロが始まる「今でも…あなたが好きだから」は「あの」「Stranded」を彷彿とさせます。前述の3曲目に加えてこの2曲が特に関わったミュージシャンのカラーが色濃く出ているモノ。

さらにプレイヤーもよくぞここまで、という状態で、前述のメンツに加えてドラムスにVinnie Colaiuta、John Robinson、ベースにAbrahum Laboriel、Neil Stubenhaus、ギターにLee Litenour、Paul Jackson Jr.、Michael Landou、キーボードには共同プロデューサーのTom KeaneなどAORシーン(つかアメリカの音楽シーン)を識る人間にとっては「なんじゃそりゃ~~」的黄金セレクト。

特に5曲目の「Future World」はVinnie Colaiuta+Abrahum Laborielの超絶リズムユニットにPhillip Ingramのクロいソウルフルなボーカルが絡み、大のVinceファンである自分はこの曲一曲だけでも「買って良かった~」な大当たり曲。またELTの出世作でもある「Time goes by」はパーカッションと生ギターの弾き語りで印象ががらっと変わっていますが、このアコギはPaul Jackson Jr.。彼と言えばファンキーで切れの良いギターのカッティングのイメージしかありませんでしたが(この手のものは4曲目で聴けます)、「生ギターの弾き語りもケッコかっちょええな~」と認識を新たにするプレイでした。

当然これだけ個性の強いミュージシャンに「任せた」訳ですから、アルバム通して聴くと統一感は希薄ですが、逆にどういうプレイをされても揺るぎないELT(五十嵐充)の曲の良さとどんな曲でも自分を「出せる」ミュージシャンの個性が光る一枚となりました。

AORファンは感涙モノの仕上がりです。

【収録曲】()内ヴォーカリスト
1. たとえ遠く離れてても...(Marilyn Martin)
2. 今でも…あなたが好きだから(Tommy Funderburk)
3. Over and Over(Jason Scheff)
4. Face the change(Amy Sky)
5. Future World(Philip Ingram)
6. For the moment(Mary Ramsey)
7. All along(Tanya Kelly)
8. Dear My Friend(Joseph Williams)
9. Time goes by(Natalia)
10. Looking Back On Your Love(Lalah Hathaway)
11. Here and everywhere(Jevetta Steele)
12. 出逢った頃のように(Kuk Harrell聖歌隊)

「Over and Over」-Jason Scheff-

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    2000年頃

  • 購入場所

    TOWER RECORD

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