レビューメディア「ジグソー」

いにしえの日本人の魂のうた

舒明天皇即位(629年)から淳仁天皇の天平宝字3年(759年)のおおよそ130年間の歌を集めた日本最古の一大抒情詩集。
収録歌数約4,500首。
ひらがなを用いた”やまとうた”を編纂した「古今和歌集」のきらびやかさや洗練された技巧はないのですが、おおらかで伸び伸びとした、日本人の心が詠み込まれているような気がいたします。
とくに巻頭の2首は、日本の太古の情景が霞みの向こうから見えてくるような感がし、とても好きな歌です。

「籠(こ)もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち この丘に
菜摘ます児 家聞かな 名告(の)らさね そらみつ やまとの国は おしなべて
吾(われ)こそをれ しきなべて 吾こそませ 我こそは 告(の)らめ 家をも名をも」

「大和には 群山(むらやま)あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 
国見をすれば 国原は 煙(けぶり)立ち立つ 海原(うなはら)は
かまめ立ち立つ うまし国ず あきづ島 大和の国は」

この詩集の歴史背景を年表で見てゆくと・・・

大化の改新(645)
白村江の戦い(663)
壬申の乱(672)

・・・古代天皇制社会の確立期~中央集権国家の成立~律令制度の黄金期。

「あおによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花のにほふがごとく今さかりなり」

国家機構が整備され、遣唐使を通して唐の文化を積極的に取り込んでいた「日本という国」が生まれ成長ゆく、発展的で情熱に満ち溢れていた時代。
そして、飛鳥浄御原宮(あすかきよみはらのみや)から奈良の平城京に遷都(710)そして天平の時代に入り、東大寺大仏開眼供養(752)。

「藤波の花は盛になりにけり平城の京(奈良の都)を思ほすや君」

先述の太宰少式小野老朝臣の京の華やかさを謳歌した歌に対し、辺境の地に追いやられた、
防人司佑(さきもりのつかさのすけ)大伴四綱の歌も。
王朝の優美さと悲壮を感じさせる歌の対比に、藤原一族、僧侶、皇族政治家たちの権力争いから、藤原摂関政治へと繋がる律令政治の崩壊の始まりが見られます。

そんな激動の時代に詠まれた一般民衆から詩人や貴族、天皇と様々な階層の人々の歌がおさめられた国民的歌集。
賀茂真淵や本居宣長を始めとする大先生達によって徹底的に研究され、漢字の羅列のみだったものから、仮名交じりに読み下されております。

岩波文庫は昭和26年に80歳を迎えた編者、佐佐木信綱氏の執念の賜物。
集英社文庫ヘリテージシリーズから刊行されている、伊藤博氏著「萬葉集釈注」などの現代解釈と比較すると、その解釈具合に古さは否めませんが、やはり岩波信者として(というより私が学生の頃は万葉集といえば文庫ではこれしかなかった(笑))、岩波の黄色帯で登録。
  • 購入金額

    700円

  • 購入日

    2000年頃

  • 購入場所

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