レビューメディア「ジグソー」

彼女たちの魅力は、その時しかない「刹那感」だったのかな

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽、曲というものの中には、時代に紐付いているものもあります。70年代のハードロック、80年代のテクノ、90年代は渋谷系やR&Bテイスト...そのほかにも夏の海辺の歌や、スキー場で良く聴く歌など、季節に結びついているものもあります。それらにさらに歌っているシンガーの置かれた年齢・状況が合わさり、その時代での奇跡のバランスを魅せる曲もあります。そんな「あの瞬間に」あったことが重要だった楽曲を収めた作品をご紹介します。

 

SPEED。女性アイドルグループが、とくにその年齢において「SPEED以前」と「SPEED以後」に別れて言われるほど早熟なグループだった。1995年の結成時にはメンバーの半分が小学生、翌年のデビュー時でさえ、全員が小中学生と、高校生すらいなかった。特に最年少の高音域担当メインヴォーカルの島袋寛子の透き通った声と、当時としては高レベルなダンス、そして伊秩弘将の高品位な楽曲と年齢からすれば背伸びした歌詞内容のアンマッチの妙が合わさり、社会現象になるほど売れた。

 

本作“RISE”は、“Starting Over”

につづく2ndアルバムで、最大ヒット曲「White Love」も含んでおり、一番「売れた」アルバムでもある。

 

当時は4ヶ月ピッチ(1年に3曲)でリリースされたこともあり、真夏!という感じの「Wake Me Up!」、クリスマスを前に「White Love」、卒業式が近い時期の「my graduation」と季節も取り込み、その時期のオンナノコの気持ちに寄り添い、高い支持を得た。

 

Sophisticated Girl」。伊秩の遊びが感じられる歌詞にちょっと舌足らずについていき、ラップ調にフレーズに載せる曲。このアルバムのおよそ半数ほどでギターを弾く梶原順の、超絶キレッッッキレのカッティングで盛り上げる中、♪It's My Life!!/アタシはアタシよ/Complexに負けない/理想のBody*/未来のSTEADY/Let's Go! Go! Heaven/夢に向かってWake Me Up!White Love/昨日の私から/my graduation/そして・・・/21 Centuryへ成長していこう/人生毎日が目にもとまらぬSPEEDだね♪と、歴代シングル曲名グループ名をちりばめた歌詞を歌う。梶原のプレイはディストーショントーンのギターソロでもキレッッッキレ!

*:Bodyは1stシングルの「Body & Soul」からだと。

 

Wake Me Up!(RISE Mix)」は、静かに始まっていたシングル版から比べると、最初っからファンキィ。ワウのかかったカッティングギターはやはり梶原。夏の日差しを感じる音造りに、ちょっと乗り切っていない幼い感じの声が、むしろ危うさを感じて「刹那感」が高い。当時のキャッチーな曲のサックスと言えば、のJake H. Conceptionのエロいサックスや、名手故青木智仁による腰に来る粘っこくダンシングなベースラインといった、ノリッノリのプレイが光るオケに上手く載せている。

 

今の季節には...の「my graduation(Album Version)」。これは曲の造りが上手いなー。出だしは、♪あなたと出逢えてよかった/今ひとり瞳を閉じる/心のアルバムめくれば/きらめく想い出たちよ♪とピアノ+ストリングスに載せて静かにAメロが来るので、このまま想い出を歌った、おとなしい曲かな~と思わせておいて、サビ前で♪変わってく/街も人も愛もみんな♪とちょっと不穏に。サビはいきなりリズムも強く入って、ハードに、切なくなり、♪ずっと忘れない/離れてもくじけない/生きていく/今日から/やさしさと/勇気をくれたよね/愛が芽生えたJuly/最初のKiss/ふたりの合図/仲直りした夜/本当に愛してた♪と全員でパワフルに感情をぶつけて歌ったあと、寛子が張りのある高域で♪いつかまためぐり逢う/終わらない今日は私の♪と独唱し、最後に♪my graduation♪とみんなで抜き気味に歌って落とし、コードは長調(明るい和音)解決。想い出はいつも美しく、でもその渦中では苦しくて、切なくて...それも卒業だと思えばそれも昇華されていく...というのが、曲と、詞と、歌い方と、季節と、彼女たちの年齢とが奇跡的に合わさって生まれた名曲かも。多分この1年前の彼女たちでは歌えなかったし、1年後では夏⇒クリスマスと紡いできたストーリーが途切れていた。「今しかない!」という、刹那感が最高の曲。

 

SPEEDは、最初から「期間限定活動」が念頭にあったみたいだけれど、この再結成前の初期SPEEDは、季節に合わせて、彼女たちの成長に合わせて、曲を紡いでいる感じ。

 

世代は違えど、「同時に歩んでいた感」がとても強い作品です。

三方背BOXにミニ写真集、ピクチャーレーベルにアルバムロゴが入れられた内ケースと金がかかっている装丁
三方背BOXにミニ写真集、ピクチャーレーベルにロゴが入り内ケースと金がかかっている装丁

 

みんな若い!
みんな若い!

 

【収録曲】

1. RISE
2. Sophisticated Girl
3. Another Sweet Field
4. Wake Me Up!(RISE Mix)
5. White Love
6. Reset 99 to 00
7. Brand-New Weekend(Varick Street Mix
8. 熱帯夜
10. Too Young
11. my graduation(Album Version)
12. I'll be all right
13. Street Life

 

「my graduation」-Single Version-

更新: 2022/03/09
必聴度

これはその時、その状況にあった人たちには刺さったと思う

余りに「刹那感」が大きいので、違う時間帯(時代・季節)に、違う立場(年齢・性別)にある人が聴いても、ダイレクトには刺さらない...かも...

  • 購入金額

    3,059円

  • 購入日

    1998年頃

  • 購入場所

14人がこのレビューをCOOLしました!

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