レビューメディア「ジグソー」

炯眼の人

「維新の頃には、妻子までもおれには不平だったヨ。
広い天下におれに賛成するものは一人もなかった・・・。」

「今の人間はどうだ。・・・今の事は今知れて、今の人に賞められなくては、承知しないといふ尻の穴(ケツノアナ)の小さい奴ばかりだらう。」

「西郷の*この一言で、江戸百万の生霊も、その生命と財産とを保つことが出来、また徳川氏もその滅亡を免れたのだ。」
*江戸城無血開城に向けての談判時の西郷の言葉
「いろいろむつかしい議論もありませうが、私が一身にかけて御引受けします」

薩摩人の黒田清隆らに向かって
「薩摩の人は政治の技倆がない。言葉を変へて言へばあまり利口ではないよ。」

幕末と維新を駆け抜け、維新後30年生きた男、勝海舟の言行録。
自分を斬りに来た坂本竜馬を啓蒙し、人斬り以蔵がボディガードを務めたエピソードなど、子母澤寛や司馬遼太郎の世界で描かれている情景が、本人の江戸っ子特有の言葉で語られており、ぐいぐい読ませてしまう。

「時勢は人を造る。」
「外交の極意は誠心誠意。」
「日清戦争には大反対。」
「調子に乗って中国や朝鮮を軽蔑するな。」

平成の今にも響きそうな言葉の数々。
岩波文庫贔屓で「海舟座談」も読んでおりますが、氷川清話を読むならこの講談社学術文庫がとても熱い。編集者の魂を感じる。
海舟の声が語りかけてくる。
是非、高校生の日本史必須図書にしてもらいたいくらい。

人物評論では木戸孝允は「非常に小さい」、藤田東湖は「軽率で困る」、「国を思うという赤心なし」と、歯に衣着せぬ物言いとはこの事。
政治の今昔談から、明治政府を辛辣に批判する時局論や中国観。
第8章の維新後30年が非常に感慨深く面白い。

疎ましく思いながら海舟を重用せざるを得なかった、徳川慶喜を明治31年に明治天皇に引き会わせ、翌年の死に際の言葉は「コレデオシマイ」。
こんな人だから、ここまで言えたのであろう。
  • 購入金額

    1,050円

  • 購入日

    2008年頃

  • 購入場所

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