1974年から1997年までの23年間の長きに渡り、
30センチウーファを擁する3ウェイ密閉型スピーカーの雄として日本国内市場に君臨しました。
またスウェーデン国営放送やフィンランド国営放送でモニタースピーカーとして採用されるなど、
その活躍舞台は世界にも広がっています。
当時の販売価格は一本108,000円。 後に119,000円に値上がり。
うろ覚えですが、値上げ後の商品は、ウーファ−のフランジにある4つのネジ穴の両サイドに、
ちいさな窪みがあったと思います。
私が購入したのは、1978年。
今は少なくなってしまったオーディオ専売店で入手しましたが、
10%以上の値引きはきつく禁じられていたと聞いています。
今も中古ショップでピカピカの良品が並んでいるのをよく見かけます。
2本セットで、概ね15万円前後のタグが付いているようです。
定価216,000円のスピーカーが、30年以上経過して、3割引きなんて! 高すぎる!
そう思われるのは、ごく当たり前の事だと思うのですが、 そうでも無いんです。
いやいや、このご時世だからこそ、定価で売られていても「お買い得」かもしれませんよ。
何故なら 「2つ下の「逸品」に続きます。
現存するNS-1000Mの中で おそらく最も稼働時間が長い個体
ZIGSOWさんでは現在
レビューの視点に「ガチレトロ指数」が使われたレビューを募集しています。
「親の世代のモノだが思い入れが強くて捨てられない」
「子どもの頃から捨てずに保管している」
「子どもの頃に憧れていたグッズを大人になって集め始めた」
「“昭和・平成レトロ”なもの持ってます!!」など、
レビューの視点「ガチレトロ指数」に関連するレビューを応募した上で
ZIGSOWラウンジの1コーナー「今週のコレクション」6枠に採用されると、
1人2,000円分のAmazonギフト券がもらえるチャンスです!
締切は7月21日の日付が替わるまで。
手持ちのガチレトロ製品の中で
最も実用的に愛用しているのが このYAMAHAの名モニター・スピーカーNS-1000Mです。
購入後3年間ほどは家庭用として1日に数時間単位で鳴らしていましたが
1980年に喫茶店を開いて以来、1日に12時間以上、45年近くの間
ずっと鳴り続けております。
タバコのヤニと、室内の空気に乗って飛んでくる食用油の微粒子が、
本来なら「玉虫色」に輝いているベリリウム振動板を、シルクドームのそれと見紛うような
有り様に変容させてしまいましたが
中高域の独特の輝きは堅持していると思ってます。
幸いなことにウーファーユニットのエッジはゴム系が採用されていますので
ウレタンのそれと違い、加水分解反応とは無縁です。
購入後、俗に言う「鳴らし込み」に悪戦苦闘した記憶は残りますが
各ユニット、裏バッフルに備わる端子板を留めるネジの増し締め以外はノーメンテナンスです。
外観の状態が良くても、長期間、通電していない個体の場合、ネットワーク基板上の
コンデンサーに不具合が出ている可能性があると想像しますが
鳴らし続けている個体なら、たとえ半世紀前の1000Mでも
安心して中古購入をオススメできると考えます。
私の1000Mは、現存する仲間のウチで
最も稼働時間が長く、良い音を奏でている個体のヒトツだと自負してます。
製造完了から四半世紀を過ぎて 販売時の定価を越えた中古品が流通しています
本文から こちらに続きます
製造完了から四半世紀を過ぎて 販売時の定価を越えた中古品が流通しています。
かつての銘機としてのネームバリューもあるでしょう。
今もアニメの音楽室などで目にすることができるキャッチーな見た目もあるでしょう。
でも ホントに逸品としての値打ちがあると思うんです。
クルマはどんどん進化してます。
燃費もどんどん良くなっていますし、快適装備も 特に安全装置の進化はスゴイ。
デザインや雰囲気はともかく、性能そのものに価値基準をおけば かつての銘機に値打ちを見つける
ことは難しいかもしれません。
でもオーディオ機器 特にスピーカーという分野においては
クルマほどの差は無いとおもうんです。
それどころか、マーケットの縮小という問題がありますので、NS-1000Mと同等の新品を買い求める
には 当時の価格の5〜10倍の予算が必要となると言われております。
その意味でも 中古のNS-1000Mには 逸品としての値打ちがあると思うんです。
その構造・使用素材が、このスピーカーに永遠の命を与えている
前面バッフル24mm、背面板25mm、側板、天板、底板には20mmのパーティクルボードで
構成された密閉箱は、5面をピアノブラックラッカー仕上げです。
素っ気ない仕上げ故に、リペイントも簡単です。
サランネットは使われず、各ユニットにはスチール製のメッシュネットが使われています。
多くの場合、多少の凹みがあったとしても、破れ・染みとは無縁です。
この時代に売られていたスピーカーの多くは、大型、小型を問わず
振動板を支えるエッジにウレタン系素材が使われています。
西海岸等、湿度の低い地域で使われる個体ならいざ知らず、
高温多湿な梅雨〜夏季を含む四季を持つ日本では、そのウレタンエッジは加水分解を起こします。
多くは10年を待たずにエッジ破れが生じます。
しかし、この1000Mのエッジは違いました。
重たい紙製コーンを受け持つウーファエッジは、
熱硬化性樹脂と共振抑えの粘弾性樹脂を2重コーティングした布が用いられています。
私の愛用機を含め、これまで1000Mのウーファエッジの破れは知りません。
中高音部を受け持つスコーカーとツィーターは、共に今は珍しいベリリウム合金の振動板を採用。
人体に対して有毒なベリリウムは、余り使われなくなった素材ですが、錆や破れの心配も無く、
構造上直接触れる事も出来ません。
そして振動板を支えるエッジには、
粘弾性樹脂と熱硬化性樹脂を含浸させた2重コーティングの
タンジェンシャルエッジが採用されており、
こちらも加水分解を含めて破れの心配とは無縁です。
この種のスピーカーが日本の各家庭に普及した80年代から10〜20年を経た頃、
よくウーファーのエッジが破れて「ガサガサ」云うのだが、、。という相談を受けました。
1000Mなら、その種の心配とは無縁です。 安心して中古を探して下さい。
今、1000Mを造ったら、定価1本30万はくだらないと聞きました
現在は、家庭で床専有面積が大きなスピーカーが求められません。
しかし、音楽のスケール感、パースペクティブを余さず表現しようと思う時、
やはりそれなりの大きさのウーファーが必要となります。
そこで、トールボーイ型エンクロージャに、複数のウーファーユニットを縦に並べたり、
サイドに大径ユニットを配したりの工夫で、面積を稼ごうとしている商品が多いのだと思われます。
今、30センチウーファーを持つブックシェルフ型スピーカーは余り見かけません。
フロア型に置いても、エレクトロボイス社のプロ用商品は別とすれば、
あっても1本数十万円のプライスタグがつくようです。
事実、現在ヤマハ自身が販売を計画している1000Mの後継機があります。
NS-5000 と呼ばれる予定のそれは、大きさは1000Mとほぼ同じ。
構成も30センチウーファーを持つ3ウェイで、重量は35キロと、1000Mの1割増し。
で、価格は、1本75万円ですと! 7倍!
もちろん、最新技術で構成された5000番が1000番を凌駕していることは想像に難くないのですが、
そこまでの予算を用意出来る方は多くないと思います。
ただ、1000Mが販売されていた80年当時のオーディオマーケットは、
現在のそれに比べると10〜100倍あったと思われます。
その時に計画されていたであろう生産計画で5000番を企画すれば75万円にはならなかったはず。
おそらく高くても2倍に納まったのではないでしょうか?
もし、貴方に1000Mを設置するスペースがあり、
今は入手しづらい大型ブックシェルフ型スピーカーに興味を持たれているとしたら、
中古のそれは、とても良い時間を提供してくれると信じます。
その意味で、とても実用的であり、コストパフォーマンスに優れていると思います。
駆動アンプは、当時のものより電源がしっかりとしたものを選びたい オススメはプロケーブル社のダウントランスを使うこと
最初に1000Mに組み合わせたプリメインアンプは、
Technicsの80Aと云う当時流行していたDCアンプでした。
72W+72W の左右独立電源。
次に同じTechnicsのセパレートアンプを導入。
SU-A6 SE-A5 エントリークラスの製品でしたが、やはり左右独立電源で120W+120W。
どちらも透明感のある美麗サウンドでしたが、とりあえず力強い低音とは無縁でした。
1000M発売当時から、低音を鳴らすのが難しいと書かれていたので、半ば諦めていました。
Technicsで30年近く鳴らしていた1000Mでしたが、新しい友と出会うことになります。
その名はオーディオアナログのプッチーニ。
トロイダルトランスひとつを電源に持つ、薄くて小さなイタリア製プリメインアンプです。
その質量は僅か7キロ! 出力も40W+40Wに過ぎません。
でも、それまでのTechnicsとは次元の異なるサウンドを響かせてくれるようになりました。
分解能が高くて、左右にステージが広がります。
左右独立電源って、いったい何だったのだろう?
室内照明におけるワッテージと、アンプのそれとは意味が違うのだと再確認しました。
それでも低音不足感は否めません。
また、高音の伸びもアッテネーターをプラス方向に回すことで
なんとか満足に近づけるというレベルでした。
これは長年飲食店内に設置している為に中高音振動板に付着した「ヤニや油、埃」が
振動板の特性を変えてしまっているのだと、勝手に解釈していました。
でも、それが一気に覆る日が来ます。
大阪日本橋のプロケーブル社から購入した200〜100Vダウントランスの導入です。
電源ケーブル回りからロジウムメッキプラグを追放し、スピーカーと壁の設置金具に、
やはりプロケーブル社から買ったソルボセインゴムを配しました。
ケーブルはベルデンの安価なものに交換。
高音の伸びは素晴らしく、アッテネーターレベルはプラス3から一気にマイナス2に。
それでも以前より明らかに伸びる高音。 イヤホンで聞いているような分解能が楽しめます。
低音の伸びは、これまでの35年余りはいったい何だったのだろうと、
なかば怒りも感じるほどの差です。
決して密閉型ブックシェルフからは出ないだろうと思っていた、地を這う重低音が楽しめます。
念の為に書き添えますが、
使用アンプであるプッチーニにはトーンコントロールの類は装備されていません。
セレクターとボリュームのみなんです。
中高音域にひずみ感が無いので、今までよりボリューム位置が高くなっていました。
前は9時頃を指している状態がベストでしたが、
今は10時30分あたりが適度な響きだと感じます。
1000Mには以前より大きなエネルギーが注がれていたんですね。
でも、決して煩くは感じません。
ただ、ただ良い音。 少なくとも私の環境下では、過去最高の響きです。
スピーカーのレビューなのか、トランスのレビューなのか 判らなくなっていますが、
ここを省いたのでは1000Mをオススメ出来ません。
できれば、1000Mを既にお使いの方も、新しく中古でお求めの方も、
ぜひトランスを導入して使っていただきたい。
そうすることで、
40年前に魂を込めて作られたこのスピーカーが真の実力を発揮できるのだと思うんです。
プロ用です 家具感はありません
イギリス製のスピーカーにPMCというものがありますが、その中のプロ用ブックシェルフ製品にも
1000Mと同じブラックラッカー仕上げのものがありました。
ほんとに良い音が楽しめる製品ですが、そのサイズもあって、ぱっと見た目に一本2万円。
1000Mの姉妹機に690番があります。 あちらは木目仕上げサランネット付き。
ヤマハの音叉マークも格好良く。 デザインでは、より低価格のあちらに軍配が上がります。
ま、この素っ気なさが良いという考えもありまして、35年前に今のカフェを造ったのですが
その内装デザインの芯となったのが このスピーカーでした。
黒と銀のCOOLな配色が好きだったんです。
リア配置のターミナルは、ミニコンポ仕様 ワンタッチ端子ですでも そのまま使ってます
方式 3ウェイ・3スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型 使用ユニット
低域用:30cmコーン型(JA-3058A)
中域用:8.8cmドーム型(JA-0801)
高域用:3.0cmドーム型(JA-0513)
再生周波数帯域 40Hz~20kHz
クロスオーバー周波数 500Hz、6kHz、12dB/oct
最低共振周波数 40Hz
インピーダンス 8Ω
出力音圧レベル 90dB/W/m 定格入力(JIS連続)
50W 最大許容入力 100W
レベルコントローラー 中・高音、連続可変型
外形寸法 幅375×高さ675×奥行326mm
重量 31kg
ブックシェルフの意味は本棚設置 開店当初は台に載せていましたが、現在は天井近く壁に直付け タッピングビスで固定して逆オルソン配置 ホントならツィーターは耳の高さに合わせたいが、、
分厚い米松突板の壁の内側には空洞はありません。
ドアの左右は30度程度の角度で外側に広がる凹みがあります。
その部分に鉄製L字アングルを利用して設置しております。
アングルとスピーカーとの結合はタッピングビス。
内側壁との結合は大きめのヒンジを利用して、やはりタッピングビスで固定。
アングルや壁との隙間にはソルボセインゴムを適時配置してます。
ホントならツィーターは耳の高さに合わせたいのですが、店内の動線やお客様の安全を優先して
現在の配置になりました。
スピーカーの真ん中に座って聞いても、定位感は良くありませんが、
そのかわり逆オルソン配置が効いて、
店内どの位置に座ってもステレオ感(広がり感)は十分です。
捨てればゴミ 正しく使えば人を幸せにする力が残ってますもう手に入らない銘器を永く使ってほしい 愛してくださる方に買っていただきたい
お手持ちのゴージャスなアキュフェーズやラックスマンと組み合わせて、
オールドファッションなシステムを構築なさって満足されている方には、
ちょっと高めのケーブルを買う予算で入手できる
プロケーブル社のダウントランスを組み合わせていただきたい。
低予算なら、1万円以下のデジタルアンプキットを組み合わせて見るのも一興だと思います。
最新の技術で拵えられた小口径ウーファー2ウェイの正確なサウンドも素晴らしいと思いますが
30センチウーファー3ウェイ・90dB能率・大型ブックシェルフのサウンドも
また良いと思うんです。
上手に良品を見つけて、あの頃のように足を突っ込んでみませんか?
マイルスも、ロリンズも。 イーグルスもピンクフロイドも。
カーペンターズもエルトンも。 達郎も拓郎も。 クルセイダーズもメセニーも。
きっと今までと違う音で鳴り出すと思うんです。
-
購入金額
108,000円
-
購入日
1978年頃
-
購入場所
今はなき寺町ヒエン堂
げるねおさん
2015/10/17
それも、ベリリウムという素材の優秀性もさることながら物量投入の賜物ですね。セラミックケースに銅板シールドを施した巨大なアッテネーター、直流抵抗値を極力下げるためにパラ数を増やした贅沢なネットワーク。とてもこの価格で出来るとは思えない凄まじさです。
フェレンギさん
2015/10/18
発売当初の雑誌批評で、「低音が出づらい」と書かれているのをよく読みました。
上記の記事と重複しますが、高域への伸長の悪さは振動板に付着した油汚れのせい。
低音の貧弱さはアンプの駆動力のせい にずっとしてたんですが、。
の導入で、一気に変貌を遂げました。
やはり中広域の「品」は、1000Mとオーディオアナログアンプが本来持っているモノを越えることは無いとかんじていますが、とりあえずハイハットもベースの量感、音程の確かさは、これまでの30数年を呪いたくなるほどでした。
一度、ツィーターの位置を下げるために、かなり小型のPMCに変更しようかと思った時期があるのですが、現在はとても満足している次第です。
それが、カフェでも本屋でも、もちろんオーディオショップでも、小音量で流れているBGMが一定のレベルを越えていると、私達オーディオファンは嬉しくなるでしょ?
それを目指してます。
mr_osaminさん
2016/02/11
今は現役から退いていますが、いつでも鳴らせる環境に置いています。
喫茶店の店主さんですね。
さりげなく音楽が流れるお店も少なくなった気がします。
これからもぜひ、続けてくださいませ。
フェレンギさん
2016/02/11
嬉しいコメントを頂戴しました。 ありがとうございます。
お客様に「自分も持ってるよ」「欲しかったSPです」と言っていただくこともあります。
機械に興味がお有りでなくても「良い音してるね」 と言っていただくことがあります。
同系統の音が楽しめるPMCや小型のQUADに替えようかと思ったこともあるのですが、
一昨年導入した
が眠っていた1000Mの力を呼び覚ましてくれたようです。
密閉型だからと諦めていた低域への伸び、
ベリリウム振動板に付着したヤニと埃のせいにしていた高域の切れ
購入後四〇年近くを経て、今がイチバン良い音で鳴っていると自惚れております。
まだまだお店は開けておきますので、お近くへお立ち寄りの際は ぜひ。