このNS-10Mや、3ウェイフロア型の定番モデルNS-1000Mといえば、日本でオーディオに親しんでいる多くのファンにとってお馴染みの名機ではないかと思います。実際に、今でも日本の多くのレコーディングスタジオには、このモデルをベースに作られているNS-10M PROなどが置かれていて、その音質を基準に音楽が制作されているほどです。ただ、私はこれらのスピーカーの音質を、それほど評価していません。
それほどの定番モデルでありながら、未だに私はこのスピーカーをメイン級のシステムで使ったことはないのです。というのも、このスピーカーの音は音楽を楽しく聴かせるというものではなく、オーディオ的に正確な音を追求しているように感じてしまうためです。音楽素材の音質調整に使うのなら良いのですが、ただ普通に音楽を聴いているだけでも何となくオーディオ的な分析をしてしまうような、妙な窮屈さを感じてしまうのです。
組み合わせるアンプの音質は割合素直に反映される傾向はあるのですが、その中にも常に「NS-10Mの音」といわざるを得ないような、この分析的なキャラクターが反映されてしまい、どのアンプと組み合わせても音楽観賞用に向く音質にはなりませんでした。
実はこのスピーカーはオーディオライクな傾向を持ちつつも、得意とする音楽ジャンルは録音音質にそれほどこだわっていないJ-POPだとえいます。前述の通りJ-POPの制作現場にこのスピーカーのシリーズモデルが導入されていることが多く、制作側の意図を忠実に再現してくれるためです。反面、同じようなサウンドであっても洋楽を聴くと妙に中高域がやかましい印象を受けてしまいますので、制作側の環境の違いがこの結果を生むのでしょう。
この製品は良くも悪くも日本のオーディオを象徴する存在ではないかと思います。性能的には優秀でも音楽の味を表現するのが苦手という、日本のオーディオ機器が持つ印象を体現したような音質ですので。もっとも、日本にも個性的で面白いオーディオ機器は、実際には沢山あったのですが…。
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購入金額
3,000円
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購入日
1992年頃
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購入場所
Yujiさん
2012/08/28
jive9821さん
2012/08/28
強いていえば、ちょっとしたアラがわかりやすく出てくるという印象がありますね。ただ、自分で音源をいじっていても、これで音合わせをすると妙にチマチマした音が出来上がってしまうんですよね。
情報量がそれほど多いわけではなくても、細かい部分に限って十分すぎるほどに表現してしまうのが、いわゆる「モニターの音」だと思われているのではないかと考えています。
ちなみに個人的には同じYAMAHAのスピーカーでも、NS-1 classic辺りの音質はきらいではありません。ただ、NS-1000MにしてもNS-10Mにしても、なぜこれが業界の定番といわれるほど評価されているのかは、正直未だに理解できていません。
Yujiさん
2012/08/28
同感です。ホント不思議ですね。