乾燥対策で飴玉を舐めているのですが、のど飴じゃなくても、唾液の分泌が促され、のどや口腔内の粘膜を潤す効果が期待できれば同じ結果が得られると気づいて、いろんな種類の飴玉を楽しみ始めました。いろいろ食べた中で、飛びぬけて美味しいと思ったのは、このマツヤの「みぞれ玉」です。

この飴は奇抜な原料や味覚のものではないので、味や気品のコンテストなどでは評価されないかもしれないですが、このお菓子には文化的な側面と工学と芸術が融合したような設計思想が息づいているように思います。個人的な感想でいえば、デザインが素晴らしいということです。

まず目を引くのは表面のザラメ。湿度を吸収しながらも飴本体をべたつかせない構造は、物質移動と表面工学の知恵が凝縮された仕掛けです。保存性を高めつつ、手に取った瞬間の清潔感を守る――まさに「機能美」と呼ぶべき設計です。

次に一粒の大きさ。口の中でゆっくりと溶けていく過程は、熱伝達と流体力学が織りなす時間設計の妙。長持ちすることで味わう人に「余韻」を与え、単なる甘味を超えた体験を提供します。さらに、飴の結晶構造は高い破砕強度を持ち、簡単には割れません。これが「長持ちする」体験を支えると同時に、咀嚼時のカリッとした快感を演出します。

色ごとのフレーバーも見逃せません。唾液中で分子が拡散し、異なる香りが次々と広がる仕組みは、化学的多様性と感覚的持続性の調和です。飽きさせない工夫が科学的に裏付けられた楽しさを生み出しています。

そして視覚的な美しさ。光を透過し、レトロな輝きを放つ姿は光学的な芸術作品そのもの。色の違いは単なる味の区別にとどまらず、光の透過や散乱によって懐かしい美しさを演出し、味覚体験をさらに豊かにしています。

「みぞれ玉」は、湿度制御、溶解速度、味の拡散、材料強度、光学美といった複数の物理現象を組み合わせ、科学の総合芸術として結晶した飴です。懐かしさの中に設計者の知恵と美意識が光る――それこそが、このレトロな一粒の真価でしょう。

ただ、一般的な飴よりカロリーがやや高めです。1粒あたり約39kcal・糖質9.7gで、通常の飴のほぼ2倍のサイズに相当します。とはいってもおにぎりの10分の一程度。適量を守れば、むしろダイエット中のおやつとしても活用できます。

松屋製菓株式会社（マツヤ）は三重県伊勢市に本社を置く、飴を中心とした伝統的な菓子メーカーです。駄菓子から贈答用まで幅広い商品を展開し、看板商品「みぞれ玉」は1986年発売以来のロングセラーとして同社のブランドを象徴しています。

「みぞれ玉」は駄菓子屋やスーパーで広く販売され、昭和・平成の懐かしさを現代に伝える存在。大粒で長持ちする設計は、子どもから大人まで楽しめる「時間を味わう飴」として定着しています。
また、伊勢神宮への飴の奉納でも知られ、地域文化と結びついたブランドイメージを持っています。これは大手メーカーにはない「地域性 × 伝統性」の強みです。

全国規模の大手菓子メーカー（森永、カンロなど）と比べると規模は小さいですが、「飴専門の老舗」として独自のポジションを確立。特に「昔ながらの味」「直火焚き製法」といったこだわりで差別化しています。全国菓子大博覧会で農林水産大臣賞や会長賞を受賞した商品もあり、品質面での評価も高いのも特徴です。

全国菓子大博覧会とは、1911年から続く「お菓子のオリンピック」とも呼ばれる国内最大級の菓子イベント。この「会長賞」受賞は、決して最高位ではありませんが、全国から集まる数千点規模の出品菓子の中で選ばれるため、かなり価値のある栄誉です。名誉総裁賞や大臣賞に比べると受賞数は多めですが、全国から集まる膨大な出品の中で選ばれるため簡単には取れない賞。レア度としては「名誉総裁賞」「農林水産大臣賞」などのトップ賞に次ぐ中堅クラスの受賞であり、菓子業界では十分に誇れる実績です。業界内で「品質保証の証」として十分に評価され、品質と独自性を認められた証です。駄菓子として長年愛される中で、この受賞歴は「ただ懐かしいだけでなく、業界に認められた飴」であることを示しています。

松屋製菓は、大手の大量生産型とは異なる「伝統と工夫の飴づくり」に特化した中堅メーカー。駄菓子文化を守りつつ、直火焚き製法や地域性を活かした商品で独自の存在感を放っています。業界全体ではニッチなポジションですが、「みぞれ玉」のようなロングセラー商品がブランドの核となり、懐かしさと安心感を提供する企業として支持されています。