レビューメディア「ジグソー」

日々のバスタブ掃除を「努力」から「儀式」へと変える

 

カインズで見つけた「汚れがつきにくい長持ち浴槽コーティング」という商品。ディスプレイ陳列されていて目立っていたこともあり、思わず手に取ってしまいました。

カーコーティング技術を住宅設備に応用したという、非常に興味深いプロダクトです。

 

 

 

ウチは浴槽が黒く、黒いパネル、御影石、大型ワイドミラー、強化ガラスドアという、とにかく掃除が面倒くさいグレードのラインナップで、水垢がめちゃくちゃ目立つ仕様になっています。そんなに広いわけではないというところが唯一の救い。

 

最近、水滴を拭き取れば綺麗を維持できると気付いて、週末の掃除負担が減ってはいたのですが、なんか神にもすがる気持ちがあったのかもしれません。 

 

 

 

 この商品は、カーコーティングで有名なプロ向けコーティング商品「KeePer」ブランドとの共同開発品のようです。

車をピカピカにする技術を浴槽に持ち込むことで、コーティングの膜により汚れをはじいてつきにくくし、その汚れも落ちやすくするという商品のようです。

確かに、車のように雨や泥に晒されるもの用のコーティング剤を使うなら、すごく強力なイメージがします。プロ向けというところも心強く、購買意欲がマシマシです。

 

ただ、KeePer 自体は高級ブランドではなく、高性能コーティング専門店と比較すると大衆向けのサービスだと個人的に思います。どちらかというとプロ技術を一般名に買い求めし易い価格に落とし込んだサービスを提供する、そんな企業努力のブランドだと思っています。

 

 

 

裏面の説明書を読むと、浴槽の他にトイレや深紅で、人工大理石などで使うことができ、ガラスや天然大理石は使用不可のようです。御影石も駄目でしょうね。

 

 主成分として、以下の記述がありました。  

  • ハイドロカーボン:溶剤として機能し、塗布性と乾燥性を調整
  • シリコーン化合物:撥水性・滑水性・柔軟性を付与する主機能成分
  • 硬化触媒:シリコーンの架橋反応を促進し、膜の定着と耐久性を向上
  • メタノール:揮発性溶媒として均一な塗布を補助 

 

コーティング剤はフッ素系やシリコン系などと成分から技術的な特徴を考えると、それで考えると

常温硬化型シリコン系と分類されると思います。

 

 

浴槽表面に数 μm 程度のシリコーンの薄膜を形成することで、膜が皮脂汚れや湯アカの付着を防ぎ、素材の質感を損なわずに防汚性を付与するという設計。施工性を高めるために、空気中の水分と反応して硬化する縮合型架橋反応を採用していると思います。

 

 

 

付属ツールとして、マイクロファイバークロスとスポンジが付いてきます。 

 

 

 

クロスとスポンジの素材はプロが選定されたものが同梱されており、均一なコーティング膜の形成作業と施工ミス防止のための提案がされています。

 

この製品は、「プロ仕様の技術を家庭で再現可能にする」という設計思想が明確で、KeePer のコア技術を生活空間に展開する試みとして非常に面白いなと思いました。 

 

 

 

スポンジも色分けされており、どちらの表面を使用するのか分かるようになっています。

こちらは正直一般的な市販品と変わらないものですが、同梱されたものだと安心感がありますね。

 

 

 

コーティング剤は小さな瓶に入っています。

ウチの浴槽は足を伸ばせるので一般より大きめだと思うのですが、一応、液体の量は足りました。

プロの技術を家庭用としても使えるようにするというコンセプトのため、手作業でもムラなく塗布できるよう、粘度と乾燥速度が調整されているものだと思っています。

 

 

 

 品質表示に書かれた成分、ハイドロカーボン(Hydrocarbon)、シリコーン化合物(Silicone Compounds)、硬化触媒(Curing Catalyst)について、もう少し詳しく。

 

ハイドロカーボンは溶剤・キャリア成分で、コーティング剤の粘度や揮発性を調整し、施工時の「塗り広げやすさ」や「乾燥速度」を制御するものです。揮発後に残る成分(シリコーンや硬化触媒)を均一に分散させる媒体として機能、撥油性にも寄与し、汚れの付着を防ぎます。

シリコーン化合物は撥水性・滑水性・柔軟性の機能付与をするもの。表面に低表面エネルギーの膜を形成し、水滴が球状になって転がる「撥水挙動」を実現します。柔軟性のある膜を形成することで、微細な凹凸にも密着し、均一な光沢と防汚性を確保、耐紫外線性や耐熱性にも優れ、長期的な性能維持に貢献します。

 

硬化触媒は間接的に化学反応の促進するもの。シリコーン化合物や他の成分を化学的に架橋させ、膜の強度と耐久性を向上させます。空気中の水分や温度に反応して硬化が進むタイプが多く、施工後の「定着性」や「耐摩耗性」を担保、カーコーティング剤では「犠牲層」の構造を形成しているのではないかと思っています。

 

塗りやすく、仕上がりが美しく、長持ちするというプロダクトを実現するため統合的にデザインされたものだと考えます。

 

 

 

 マニュアル。箱の裏側に書いてあるものとほとんど同じ。

 施工の仕方ですが、以下の3ステップで説明されています。

 

  1. 塗り広げる
  2. 1枚目のクロスで吹き上げる
  3. 2枚目のクロスでムラを消すように仕上げる

前日の夜にめちゃくちゃ頑張って掃除をして、一晩乾かして施工に臨みました。 

 

 

 

 説明書では四方の1面ずつの作業で4回に分けて作業するやり方をおすすめされています。

たぶんすぐ乾いてしまうので、変なコーティングにならないように片面ずつ仕上げていくということになるのだと思います。

 

作業自体は掃除と変わらず、薬剤を塗布し、雑巾で伸ばし、さらにもう1枚で拭くというだけの単純な作業です。コーティングに失敗するかな? という懸念はあんまり必要ないかと思います。

作業自体は30分もかからないと思います。まぁ拭くだけなので。

 

作業してみた結果ですが、黒い浴槽なので表面が光らず正直よく分からない……という感じです。

元々コーティングがしっかりされているような浴槽なこともあって、その性能がさらに飛躍するというものでもありませんでした。1か月わざと掃除をサボってみましたが、汚れが付きにくくなる? という実感もありませんでした。元々付きにくいからだと思うのですが差がよく分からないです。

 

水滴を拭かずに残した場所も、当たり前ですがちゃんと水垢が残ってしまいます。

汚れは分からないですが、水垢が残らないというのは無いです。
白いバスタブはひょっとしたら目立たないのかもしれないです。

 

 

コーティングされていないバスタブなどには効果があるのかもしれないですが、最近のバスタブに使用することでそれ以上の効果を生む、というのは少なくともないかと思います。

更新: 2025/09/01

シリコン系の架橋反応メカニズム

常温硬化型シリコン系コーティング剤であり、その膜形成は主に縮合型架橋反応によって進行すると考えています。シリコン系の有利な点ですが、シロキサン(Si-O)骨格による柔軟性と撥水性、空気中の水分や温度で硬化しやすく、施工性に優れるということ、耐久性と光沢性のバランスが良く、一般ユーザー向けにも展開しやすい、というところだと思います。

 

シリコン系の架橋反応は、「柔軟性・密着性・施工性」を重視した構造設計です。

特に付加型は、副生成物が出ない=寸法安定性が高いため、精密部品や医療用途にも使われます。
一方、縮合型は空気中の水分で硬化するため、施工現場での使いやすさが際立ちます。これは、KeePer ブランドのような「誰でも施工できる」設計思想にも通じます。 

 

この製品に含まれるシリコーン化合物は、主にシロキサン(Si-O)骨格を持つポリマーで構成されており、空気中の水分と反応して架橋を形成します。

 

(代表的な反応式:≡Si−OH+≡Si−OR⟶≡Si−O−Si≡+ROH)

  • Si-OH:シラノール基(親水性)
  • Si-OR:アルコキシ基(反応性)
  • ROH:副生成物(アルコール)

この反応により、三次元ネットワーク構造が浴槽表面に形成され、撥水性・耐久性・防汚性を持つ膜が生成されます。

 

製品には「硬化触媒」が含まれており、膜の均一性と耐久性を両立させ気泡やムラの発生を防ぐ役割を補っています。触媒には一般的にスズ系(DBTL)やチタン系が用いられ、空気中の湿度と温度に応じて反応速度が調整され、施工後1〜2時間で硬化が完了するよう設計されています。

 

この架橋反応により、3つの利点が与えられていると考えられます。 

  • 施工性:拭き掃除レベルの作業で膜形成が可能
  • 膜性能:撥水性・防汚性・滑水性を180日間維持
  • 素材適合性:FRPやホーローなど多様な浴槽素材に対応

 

高分子化学と生活設計の融合によって、「掃除がラクになる」という感性価値が技術的に支えられているという理由になっています。

更新: 2025/07/12
デザイン性と機能美

使う人の手間を減らし、時間と負担を最小限にする設計の美学

化学反応そのものが美しさを生み出すデザインです。

撥水膜は余分を削ぎ落とし、ただ必要な機能だけが残ることで、静けさと清潔感を感じさせる。

美しさが性能に宿る、それがこのプロダクトの本質です。

 

日常の清掃負担を減らす機能性と、生活空間に溶け込む触感・仕上がりの美しさを融合させた、機能美の設計と考えます。化学構造そのものが、ユーザー体験という「デザイン」に昇華されている点が秀逸です。

 

性能や技術が表面的な装飾に頼らず、そのまま美しさへと昇華された状態で、見た目の美ではなく、「合理性が生む美」。無駄のない構造、触感に宿る意味、使いやすさの中にある美しさ、美術ではなく設計が語る美です。

 

 

更新: 2025/07/12
メンテナンス性

生活を設計で整える静かな革新

撥水膜が汚れの固着を防ぎ、定期的な掃除を「拭くだけ」に変える。

その膜は半年以上持続し、再施工も簡便。

 

つまりこの製品は、「掃除しないことが掃除になる」という点で素晴らしい。

更新: 2025/07/12
コストパフォーマンス

布一枚で仕上げられるその手軽さは、時間の節約を超えて暮らしの余白を生む設計

手頃な価格で約半年の防汚効果を実現し、複数の場所に使える汎用性も兼ね備える。その価格以上に、「手間の削減」「衛生の維持」「空間の美観」をまとめて手に入れられる点で、高い価値を持つ生活道具だと言えます。

  • 購入金額

    3,980円

  • 購入日

    2025年07月12日

  • 購入場所

    カインズ

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