所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。最近の1曲のみダウンロードしたり、サブスクでセ単発で切り取って鑑賞するパターンでは廃れてきましたが、物理CDやアナログレコードが音楽供給の中心だった時代は、シングルというのは、そのアーティストにとって「名刺」のようなものでした。そのため、カップリング曲にはかなり気を使い、表題曲の方向性を押し進めたような曲でより深みに入ってもらったり、違う面を魅せて広がりを把握してもらったり、ライヴ音源をカップリングして、生のアーティストを感じてもらったりするような工夫がされていました。表題曲とは全く違う方向性の2曲を同梱して、アーティストのいろいろな面を魅せるようにした作品をご紹介します。
スガシカオ。デビュー後30年を超える芸歴を持つベテランシンガーソングライター。永い芸歴の中で、方向性・ジャンルが若干軌道修正されたり、広がりを見せたりしているが、根にファンクを据えた曲に、鋭く心情や風景を切り取った詞を載せて歌う、他に似たアーティストがいない孤高の詩人。
そんなスガの7枚目のシングルが“夜明けまえ”。作詞作曲編曲すべてスガ名義になっているが、スガの前期のサウンドブレーン森俊之カラーが色濃く出た作品。収められた3曲のテイスト(4曲目は1曲目の単なるオフヴォーカルなので)の方向性が、まったく違っていて楽しめる。
まず表題曲の「夜明けまえ」は、打ち込みのリズムにアコギのファンキィなカッティングが絡む曲で、長調と短調の切り替えが頻繁で、単調なリズムなのにシカケが多い曲。暗くファンク臭が強いAメロと、脳天気とまで言えそうなあっけらかーんとしたサビの対比が劇的。その割には♪今/夜のヤミにむけ/うちはなつ/ぼくらの銃声は/みえないそのカベを/一瞬で/突き破ろうとして/街にただ/ひびいただけ♪と詞の内容は虚無。一応ドラムスとして山木秀夫、ベースは中村キタローとあまり組まないメンツがクレジットされているが、スガのクレジットや打ち込みとパートが被っており、おそらくスガと森でほとんどベーシックトラックを完成させた世界なのだと思われる曲。
続く「ココニイルコト」は、一転、フォーキィで小粋な曲。名手間宮工のアコギと森のオルガン、フィンガースナップとパーカッションを中心に進む。途中でさりげなく加わった坂本竜太のベースが、ブリッジの部分で複数弦弾きなどをしつつキラリと光るプレイを聴かせる。
ライヴバージョンの「SWEET BABY」は、ヘヴィなファンク。Aメロはワンコード、シャウトするサビ、中間部は楽器ソロではなくユニゾンリフで粘っこい。森を中心とする初代バックバンドThe Family Sugarのプレイが熱い。ドラムスの沼澤尚と、2代目バックバンド以降はバンマスとなり、スガと永く行動を共にすることになるベースの坂本の、ヘヴィでかつハネるという難しいリズムに乗せて、「SWEET BABY」というには、昏い欲望にまみれた歌を歌う。♪ぼくの精神状態は/教科書のように健全だ/君との愛の問題について/四六時中考えている/だからそんな無神経に/軽蔑の目を向けないで欲しい/ぼくは本気だ/今度こそ君と/快楽の底に落ちていきたい♪←1st Chorusの詞はアブなくて書けないのでw、2nd Chorusから。
ファンキィ、フォーキィ、ヘヴィと3つのスガの世界に触れることができる。さらに、最後の「SWEET BABY」は武道館でのライヴで、会場の熱気込みで味わえる。
スガを深く識らない人にとっても、良い「名刺」となりうるシングルです。
【収録曲】
1. 夜明けまえ
2. ココニイルコト
3. SWEET BABY 〜Live performance in BUDOKAN〜
4. 夜明けまえ(Backing Track)
「夜明けまえ」(リンク切れのように見えるが、扉絵がないだけで、動画は生きてます)
初期フォークファンクの熱気が味わえる
スガは途中で大きくエレクトロファンクを取り入れた時期があったが、一番根っこに持つのはフォークファンク。
そのテイストが濃い表題曲の他に、熱いライヴの雰囲気も1枚で味わえる。
その同じアーティストが歌う小粋な楽曲(2曲目)で、スガの幅と深さに気づかされる。
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購入金額
400円
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購入日
2010年12月01日
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購入場所
yahooオークション
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