レビューメディア「ジグソー」

「大ヒット」がない分、クボタらしい曲が多いベスト

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。「ベストアルバム」。一般的にはシングルカットされた曲を網羅し、それにアルバム収録曲を一部挟み込む...つまり、ヒットして「通り」のよい曲で「掴み」、あわよくば?オリジナルアルバムへ誘導するような選曲とする場合が多くなります。ただ、その場合アルバムの「カラー」は統一されずに、全体としての印象としては薄いものになりがちです。しかし、アルバムの曲を比較的多く入れ、新録の曲も加えて、カラーを統一したベストアルバムが編まれる場合もあります。日本にブラックミュージックを根付かせた人物の、そうしたベストアルバムをご紹介します。

 

久保田利伸。日本において、黒人系音楽を大衆に浸透させた先駆者。デビュー時点はブラックテイストのJ-POPという程度の「黒さ」だったが、覚えやすいメロディとセンスの良いアレンジ、そして圧倒的な歌唱力でヒットチャートを獲り、その後オリジナルアルバムの曲ではかなり「イロク」な曲もやり、ファンを黒い沼に沈めてきた。

 

“THE BADDEST III”は、クボタのベストアルバム“THE BADDEST”シリーズ

の3枚目(“THE BADDEST”の名前がつくアルバムとしては、これのリリース時点(2002年12月)で4枚目だが、先行した“THE BADDEST 〜Only for lovers in the mood”は、ラヴソングオンリーの企画盤で、シングルやライヴでの定番曲を中心にフラットな選曲で集めた「ベストアルバム」ではない)。

 

これが編まれたのは2002年。ただこのアルバム自体は、1994年リリースの13thシングル“夜に抱かれて -A Night in Afro Blue-”から、2001年の26thシングル“Candy Rain”までの曲から選択されている。

 

この頃のクボタは、1990年代初頭あたりの「年2回はシングルコンスタントにリリース」というペースよりは落ちていたが、年イチにはシングルリリースしていて、それらの多くがTVタイアップだったので、一般的な露出度がまだ高かった。ただ、アルバムでは結構自分の好きなことをやっていて、さらにToshi Kubota名義での米国での活動時期の前半とも重なっていて、本当に「黒い」のはそちらでやっていたということもあり、シングル表題曲のテイストとアルバムやシングルカップリング曲のテイストがやや違っている時期。そういうのもあって、この作品は、シングルで入った人が、クボタ沼に嵌まるには?良い選曲のベストとなっている。

 

この作品に収められた曲の中では、最も昔の曲の一つである「君は なにを 見てる」。7thアルバム“BUMPIN' VOYAGE”に収められた曲。バックトラックは、ほぼ盟友柿崎洋一郎の手になる打ち込みで、ジャズギタリストJeff Mironovのアルペジオを中心とする生ギターのプレイが入っているだけ。コーラスもほぼなく、クボタが独りで歌いきる形式の楽曲だが、それだけに彼の上手さが光る。

 

唯一の新曲「Never Turn Back (Featuring Pras)」は、PrasことラッパーのPras Michelとのコラボ曲で、複数の外国人(J.Cardwell、H.Peretti、L.Creatore、G.Weiss)との共作。他には日本人は入っておらず、単調なリズムマシンに黒人風コーラスが載って、そこにクボタの日本人離れしたセンスの旋律とprasのリズミカルなラップが載る曲。この曲は完全に日本離れしている。Toshi Kubotaテイスト。

 

最後の曲「Free your Soul (KC's BEE-MELLOW Remix)」は、10thアルバム“United Flow”に収められた曲のRemix。元曲はアルバム曲ながら、映画「アイノカラダ」のテーマ曲に選ばれたソコソコ明るい部分がある曲(「選ばれた」のではなく、クボタが映画のコンセプトに共鳴して提供したという記述もネットにはある)。それが、川口大輔のヴィヴラフォーン風のキーボードと、奥田健治の静かに刻むミュートギターとジャジィなコード弾きによって、とてつもなくジャジィになっている。時に楽曲のRemixは、ムダに薄めて間延びさせたようなものや、リミキサーの土俵に引きずり込むためか、元曲の核まで壊してしまっているものなど残念な出来の場合も少なくないが、これは元曲の良さを活かしつつも、味付けが全く別で「Remix」の良さが出ている。つか、はるかにRemixの方が良いな。リミキサーを確認すると、KCこと松尾潔。なるほどね。

 

いわゆる「大ヒット曲」は、ナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)とのコラボ曲「LA・LA・LA LOVE SONG」だけだが、この頃のシングル曲はいずれもスマッシュヒットで粒ぞろいだし、アルバム収録曲やこのベストにしか収録されていないものも合わせて、とてもアベレージが高い作品。

 

ヒット狙いの曲が少ないためか?、クボタの趣味が濃く出ていて...それでいて当時国外での活動も並行していたため、ある程度突き抜けてブラックなのはそちらに...ということで、ちょうど良い塩梅のクロさとキャッチーさ。

 

ひょっとすると、クボタの一番やりたいことのコアの部分が集まっている作品かも知れません。

初回盤なのでボックスケース入り(ⅠやⅡと違って添付品はなく、単なるケース)
初回盤なのでボックスケース入り(ⅠやⅡと違って、他に添付品はなく、単なるケース)

 

【収録曲】

1. LA・LA・LA LOVE SONG -16th Single/1996-
2. the Sound of Carnival (BRAND NEW MIX) -21th Single/1999-
3. Nice & EZ -1995-
4. Cymbals -19th Single/1997-
5. Candy Rain -26th Single/2001-
6. SOUL BANGIN' -22th Single/1999-
7. AHHHHH! (NORTHERN LIGHTS VERSION) -20th Single/1998-
8. What's The Wonder? -1996-
9. 君は なにを 見てる -1995-
10. Always Remain -25th Single/2000-
11. Summer Eyes -1996-
12. Never Turn Back (Featuring Pras)
13. Messengers' Rhyme 〜Rakushow, it's your Show!〜(THE BADDEST BOTTOM MIX)

   -23th Single/1999-
14. ポリ リズム -24th Single/2000-
15. 夜に抱かれて 〜A Night in Afro Blue〜 -13th Single/1994-
16. Free your Soul (KC's BEE-MELLOW Remix)

 

「Free your Soul (KC's BEE-MELLOW Remix)」

更新: 2023/04/04
必聴度

ベストだが、これにしか収められない曲がある

特に「Free your Soul (KC's BEE-MELLOW Remix)」は必聴。

  • 購入金額

    3,059円

  • 購入日

    2002年頃

  • 購入場所

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