所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ネットが発達した現在では、それまでの地域に縛られた活動なら見つけることが難しいような芸術作品に距離と時を超えて接することができます。偶然から発見したすでに活動を休止した九州のインディーズバンドの、およそ10年前の自主製作盤を6年の時を超えて入手しましたのでご紹介します。

Torry Konny DOG。かつて活動していた福岡拠点のインディーズバンド。ジャンルとしてはオルタナティヴ系ロックで、時期によって多少違うようだが、ギター＆ヴォーカルのしょーご（旭正悟）を中心とした、3～4ピース構成のバンド。何度かメンバーチェンジをしており（mixiにその痕跡が残っている）、最終形としては、しょーごに加えて、ベースがYUKI（ユキ）、ドラムスがシモ（しも）の3ピースバンドだった。

このときのメンツは、しょーご＋YUKI（ユキ）＋シモ

自分は複数の若手ベーシストによる共演プロジェクト（PROJECT B.）に、ベースのYUKIが参加していたことから、その参加ベーシストの普段の活動を探っている中でTorry Konny DOGに出逢った。

＊これと同じパターンで、同様にその共演プロジェクトに参加していた小林修己からLowland Jazz

にも手を出している。

Torry Konny DOGは、本作を合わせて3枚CDを製作したようだが、彼らの「集大成」となったのが、この1st Album“互感性アンソロジー”。

3ピースならではのソリッドさによるアピールパワーが高く、楽曲としてもリズム的「シカケ」が面白い曲が並ぶ。

雨音のSEで始まる「T.K.D.～笑顔の作り方～」は、短いテクニカル系インストソングで、まさにオープニングと言う構成。それを露払いに実質的な一曲目である「Natural Killer」が始まる。ラウド系ロック！という感じで、ドラムのスネアが頭打ちで、キックが16分音符の裏に入るフレーズが連続するハイスピードで疾走感がある曲。3ピースバンドながらオ－バーダビングもしているようで、右chから聴こえるモジュレーションがかかったシンセのような、ギターのアルペジオの音が面白い。

自分とってTorry Konny DOGの曲の中で一番最初に聴いた曲であり、彼らの音楽に魅せられるきっかけとなったのが、「plastic smile」。元々YUKIはスラップベースで注目したプレイヤーなので、タイトでリズム的引っ掛けも多いこの曲で一気に引き込まれたわけ。Aメロはヴォーカルに寄り添うように指弾きで、Bメロの部分に入るとスラップ入れて静動ダイナミックに弾き分け、サビに入ると喰った譜割りで前進感を出す。サビ終わりのブリッジ部分は、少ない楽器音でタイトにリズム的なキメを披露し、凝ったアレンジを破綻なく聴かせている。

MVでは雨音のSEで始まる「五月雨ノクターン」は、CDでは直接始まり、CDを〆る。やはりYouTubeの音より、CD⇒FLAC化してDAPで真剣に聴くと、はるかに良い。どっしりと下が充実していて、YUKIのベースラインがしっかりと聴こえる。ドラムスのキックはアタックはあるが音圧は控えめで、低域はベースが支配する音造り。それがキャッチーなこの曲を前進させる。

この作品、2012年のリリースなのだが、彼らのことを識ったのが2014年で、いろいろ調べてSNSなどでつながりもできて、YUKIやしょーごに連絡とっては見たものの、しょーごが手元に置いていた最後の数枚が売れた直後だった。またその時点では、YUKIが九州を離れたのもあってバンド自体も休眠しており、再プレスの予定はないとのことだった。

最近は何でもオクやフリマサイトで手に入るが、さすがにインディーズバンドのライヴ会場と通販でしか売られなかったCD-Rは出品がなく、あらゆるオク、フリマサイトに、出品アラートを仕掛けて監視すること実に6年。ついに出物があり、ゲットできた。

自分はTorry Konny DOGリアタイ世代ではないので、それまでは現在でも動画サイトに残っている数曲しか識らなかったが、残りの曲も結構よかった。

フリマサイトの「何でも手に入る（可能性がある）」利便性と、諦めなければいつか手に入る、という長期ウォッチングの重要さを実感した出来事でした。

3人のサインが入っているのが、仕様なのか、この盤だけなのかは不明

【収録曲】

1. T.K.D.～笑顔の作り方～
2. Natural Killer
3. bug
4. plastic smile
5. かくれんぼ
6. 五月雨ノクターン

「plastic smile」（曲に入るまで30秒ほどあります）