今年は所謂福袋の類を殆ど買わなかったのですが、全く何も買わないのも話のネタが無いと思い、PC関連やオーディオの代理店業務を展開するアユートのイヤフォン福袋を買ってみることにしました。
私が買ったのは大半がMaestraudio MA910Sで、ごく一部の当たりにqdc Dmagic Soloが用意されているという8千円の福袋です。
結論から言えば予定通りのMaestraudio MA910Sが届きました。ただアユートの福袋を買うと毎回思うのですが、大きい箱の中にメインの品物がぽつんと入っていて、後は本当に緩衝材だけというのも味気ない感じがします。それこそ余ったノベルティとか、イヤフォン関連であれば余っているイヤーピースを入れるとか、何らかの福袋的な要素で楽しませる工夫があっても良いのではと思うのですが…。
福袋として取り上げる価値は全くありませんでしたので、ここからは素直にMaestraudio MA910Sのレビューとして記述することにします。
まず、Maestraudioというブランドですが、これは比較的低価格帯で人気のイヤフォンを手がけるintimeブランドを展開する、オーツェイドの新ブランドとなります。intimeブランドが主に4桁価格のイヤフォンを展開する(最近は5桁価格の製品も投入するようになってきています)のに対して、Maestraudioではもう少し上のクラスを展開する形となっていて、Maestraudioのみアユートが代理店として付いています。
MA910SはMaestraudioの第一弾製品となっていて、価格は11,000円でリケーブル不可というなかなか思い切った構造となっています。実は先日のポタフェスでMA910Sベースの試作品が参考出品されていて、MA910Sをリケーブル対応にしたものと、MA910Sをケーブル着脱不可ながら4.4mm5極バランス端子対応としたものとが用意されていました。これは両方聴かせていただいたのですが、4.4mm5極バランスの方は「なかなか良いじゃん」と素直に思ったのに対して、接点が増えるリケーブル対応版は予想以上に音が劣化してしまっていました。MA910Sがケーブル着脱不可だったのも、これを聴いてしまうと正しい判断だったとしか思えません。
intimeのイヤフォンはセラミック型ツィーターを利用するという特徴があるのですが、Maestraudioでもその特徴は引き継がれていて、MA910Sは12mmのグラフェン振動板DDドライバーに、HDSSと呼ばれる音響補正デバイスとパッシブ型セラミックツィーターを組み合わせるという構造になっています。一般的にセラミックツィーターは音の質の部分で難がある場合が多いのですが、オーツェイドではセラミックツィーターの特性を理解し尽くしたことで質の悪さを克服しているとのことです。
それでは、MA910Sの方に話を移しましょう。
普段割合ゴツいイヤフォンばかり使っているせいか、MA910Sの箱の軽さにまず驚きました。付属品がシンプルというのも勿論あるのですが、イヤフォンそのものもかなり軽量です。
耳かけ用のイヤーハンガーが付属していて、所謂SHURE掛けにも対応しますし、ケーブルをそのまま下に垂らす装着も可能です。個人的にはSHURE掛けしない方がフィット感は良好でした。
DDドライバーの表面を覆うような形で、セラミックツィーターが搭載されています。パッシブ型のツィーターであり、DDドライバーからの振動を直接受ける必要があるためにこの配置となっているようです。
一見カナル型イヤフォンでは当たり前に存在するノズル内のフィルターが存在していないように見えてしまいますが、よくみるとノズルのかなり奥まった位置に薄いフィルターが存在しているようです。本当に最低限異物の混入を防ぐためのもので、音を極力阻害しないようにこうしているのではないかと思います。
広がりはあるが密度感は乏しい
それでは実際に試聴してみましょう。DAPはCayin N6ii/R01を組み合わせています。
適当に選曲して出てきた「Across the Universe / The Beatles」「First Time / David Paich」「Praeludium Op. 97d/1(Composed By Dmitri Shostakovich, Violin Itzhak Perlman) / David Garrett」辺りを聴いてみましたが、「Across the Universe」はなかなか好印象でした。あまりオーディオ的に高度な音では無い楽曲のためか、ヴォーカル帯域や空間表現がきちんとしていればそれでそこそこ成立してしまうからでしょう。低域~中低域の密度感は乏しいのですが、音場はまるでシングルBAのようにふわりと広く展開されます。ただ、BAほどシビアな定位にはなりません。
「First Time」は中低域の密度が表現されないと途端に安っぽい音に感じられてしまう楽曲で、MA910Sの傾向ではやや不利でした。David Paichのヴォーカルも妙に細身で人工的な音に感じられてしまいました。
そしてさすがに価格なりの限界かと思ったのはDavid Garrettのヴァイオリンです。どうしてもヴァイオリンの音色の芳醇さが全く出てきません。まあ、最初からこの類の音楽を聴くことは想定されていないと思いますが…。
今時のJ-Popの音はどうかと「怪物 -from CrosSing / 鬼頭明里」のハイレゾFLACも聴いてみましたが、どうしても低域の絶対量や力感の不足は気になりますが、鬼頭明里のヴォーカルは意外と良好です。ただ、セラミックツィーターの限界もここでちょっと見えてきます。やはりハイハットがちょっとセラミック臭く感じられます。高域がそこそこ高い周波数まで聞こえていなければ気にならない程度かも知れませんが…。
DAPが低域方向に充実していて濃厚な音を持つCayin N6ii/R01でこの傾向ですから、基本的には軽くふわりと広がる音で、音楽をBGM的に聴くのが正しいイヤフォンなのではないかと思います。発売時の各メディアではそこそこ高評価を受けていた製品ですが、個人的にはこの価格帯であれば気の利いた中国製品の方がやはり一枚上手かなと感じました。
-
購入金額
8,000円
-
購入日
2023年01月19日
-
購入場所
アキハバラe市場
harmankardonさん
2023/01/20
ゾネホンのガチャをやりたかったです.
jive9821さん
2023/01/20
今年のアユートは金額的に半端でどれも魅力はなかった
と思っています。ULTRASONEはSignature Master辺り
が出ないと即下取り行きになってしまいそうで、賭けに
出るほどの魅力がなく…。