実は結構読書家で、学生時代を中心に相当数乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中から、新旧織り交ぜて、トピックをご紹介していきます。
先日紹介した、2018年本屋大賞を受賞した辻村深月のベストセラー小説「かがみの孤城」。
もともと一冊のハードカバーでリリースされたが、それを導入(もしくは保管)しやすく文庫化
したもの(ハードカバー税込み1,980円を、文庫版上下で同1,716円)と、武富智がマンガ化
したものを持っているが、さらに買い増した。
これは「児童文庫」と呼ばれるカテゴリーのシリーズ。
バラでも売っているが、これは上下巻セット販売のものでケース付き
「ポプラキミノベル」は、ポプラ社が発行する「キミとつながる、エンタメノベル文庫」シリーズ。小学校高学年~中学生あたりをターゲットに、モーリス・ルブランのルパンや、コナン・ドイルのホームズといった名作や、マンガ「魔入りました!入間くん」の小説版、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」やアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」のノベライズ、さらにオリジナルのライトノベルなどを、挿絵多め(場合によっては挿絵の一部はマンガ)で、漢字には全ルビ打ちをして読みやすくしたシリーズ。
さらに、キミノベル専用サイトが設けられていて、そこでは新刊の案内やシリーズ商品紹介など出版社サイトとして一般的な情報公開のみならず、感想投稿ページや本のキャラクターのイラスト投稿ページ、読者交流ページなどがあり、このシリーズを通して本好きの小中学生の集まる場を醸成しようとしている感じ。
このキミノベル(シリーズ)と「かがみの孤城」の相性はとても良いと思う。
「かがみの孤城」の時代はほぼ現代だが、道具立ては「かがみの向こうに別の世界がある」というファンタジー形式で、途中からミステリー要素やSFちっくな描写が入っていてとっつきやすい。それでいて芯を貫いているのは、イジメで不登校になってしまったこころの再起だったり、イケメンの男の子リオン(理音)との恋以前の淡い想いだったり、孤城に集う(つまり不登校などの問題を抱えた)7人それぞれの問題の解決に向かう道筋の形成だったりと、描かれているのは「成長小説」・「青春小説」。
大人が昔を懐かしみつつ読むのもそれはそれで良いが、これは是非中学生あたりに「リアタイで」出逢って欲しい作品。
そんなキミノベル版「かがみの孤城」、一般向けのものとどれほど変わっているのか、いないのか興味があって、キャンペーン(後述)というきっかけもあったので入手してみた。
比較してみると、一般書籍(文庫版)の「かがみの孤城」との差は、豊富な挿絵と全漢字ルビ打ちという二点のみ。文庫版は、ほぼ挿絵がなく、表紙には鏡を見ているこころと、鏡の向こうから覗いているオオカミさま、上巻の目次に孤城に集う7人とオオカミさまの上半身が、下巻の目次に孤城の中にいるオオカミさまの見開きの絵があるだけで、本文には一切の挿絵がなく、読者の想像に任せるタイプ。
一方キミノベル版は、上下巻の表紙に7人とオオカミさまの全身像、目次前には人物紹介、目次の次にはお城の見取り図があり、さらに1巻につき30枚ほどの挿絵が描かれており、それがマンガタッチなのもあって、とても読みやすい(挿絵はポケモンカードのイラストレーターも務める村山竜大 師)。
小説には、アキが義理の父から性的虐待をされかかるような描写もあり、「児童向け」に改編されるのかとも思ったが、そこもそのままで、変に媚びていないところも良かった。
で、一番違うのは実は「あとがき」。
文庫版にはあとがきがなく、本編のみで終わるのだが、このキミノベル版では、作者の辻村本人から読者へ向けてのあとがきがある。このあとがきがものすごく良い。「かがみの孤城」を書いたときの想いや、不登校について、さらに古典異世界ものの紹介による読書への誘い、今(小中学生)の時間と大人の時間は繋がっている...など、示唆と応援に溢れる「メッセージ」で、辻村はここを書きたかったために、キミノベル版収録に同意したのかも、と思われるくらい。
ハードカバー版や文庫版を持っている人が、わざわざ買う必要はないかも知れないけれど、子供と一緒に読みたい/子供に手に取ってもらいたい...というならこれが一番とっつきやすい形態かも知れません。本文に関しては、一切の省略などもないので、大人も十分楽しめます。
※自分がこのキミノベル版「かがみの孤城」を入手したのは、全国書店とコラボレーションしたイベント「ねがいの叶う鍵探し」キャンペーンで、購入により一冊につき一枚のミラーカードがもらえたから。自分は上下巻がセットになった「セット売り」のものを購入したので、書店によっては「1販売単位」とカウントして1枚しか添付されなかった書店もあったし、ビニールで特定のカードとシュリンクされていて3種あったミラーカードと本の組み合わせが固定されている書店、完全ランダム渡しで自分では選べないようになっている書店もあったが、購入店はひと組だが2冊とカウントしてもらえ、自分の好みのをもらうことが出来たので、文庫本とハードカバー表紙の2枚をゲット(あと1種は、キミノベル版のセット売りケースにあるように、ピンクの地にオオカミさまのシルエットがミラーになっているタイプ)。
文庫版の上巻(左)とハードカバー(右)の絵の一部を使ったプラスチックのミラーカード
【目次】
《上巻》
第一部◇様子見の一学期
五月
六月
七月
八月
第二部◇気づきの二学期
九月
十月
十一月
十二月
《下巻》
第三部◇おわかれの三学期
一月
二月
三月
閉城
エピローグ
あとがき
この小説、子供の頃に読みたかったなぁ...
夢のあるファンタジーであり、かがみの孤城に集められた7人の選抜理由を探るミステリーであり、7人の微妙に異なる記憶の理由を解き明かすSFであり、不登校でも今の道は未来に繋がる...という青春小説でもある。
とくにのキミノベル版での語りかけるようなあとがきには、勇気づけられた子達もいると思う。
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購入金額
1,606円
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購入日
2022年11月19日
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購入場所
きくざわ書店
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