前提情報
レビューというより「これいいぞ」的な紹介
主要なネタバレはないけど序盤の内容やあらすじはあり
自分はここ最近数年位Web小説、同人誌小説を読んでいるが元々殆ど小説を読まずに育った人間
シリアス苦手、ギャグコメディ好き
ゲームやアニメ・マンガの嗜好も「少し変わってるね」と言われるタイプ
購入したのはKindle版電子書籍
現在の最新5巻まで読破済み(WEB版は3巻相当までで4巻以降は書籍のみ)
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悪役令嬢レベル99は、小説家になろうに掲載(今でも読める)、書籍版は現在5巻まで発売、コミカライズ版もWeb連載&単行本2巻目が発売している作品。
自分は2020年頭にWebマンガを漁っていた時にちょうど掲載され出したコミカライズ版のプロローグを見つけ、設定が好みだったのでWeb版を読み、気に入ったので書籍版(Kindle版)を購入した。
その名の通り近年多い「乙女ゲーム(女性向け恋愛シム)」の中に元プレイヤーが転生してしまったが転生先が敵役の悪役令嬢だった!ジャンルの一つ。ただ本作は乙女ゲーム要素は薄め。
1巻では「本来のゲームエンディング」までキリ良くストーリーが進む。
主人公は普通の日本人女性(普通?普通かなあ...?)から転生した地方貴族の令嬢ユミエラ・ドルクネス。表紙の黒髪の少女。とにかくこのユミエラの設定と動きが個人的にツボったのが気に入った最大要素。
舞台になる転生先のゲームは、中世風で魔法があるテンプレート的なファンタジー世界かつRPG戦闘要素があり魔物・ダンジョン・レベルの概念が一般的に普及している世界。「騎士団長のレベルは60という実力者だ」的な言い回しが日常的に行われる感じ。
本来のユミエラはストーリー上では(ゲームの)主人公にちょっかいを出してくる悪役令嬢だが、クリア後にラスボスよりも強いやり込み要素用のボスとして登場するシステム的な裏ボス。
スターオーシャンのイセリア・クイーン的な。でもイセリアは別にストーリー上出てこないか。
ユミエラは不吉の象徴とされる黒髪・黒眼だった為両親はユミエラを放置して別居、屋敷の使用人からも恐れられていると中々ハードだが、転生したユミエラ完全な「やりこみゲーマー思考」の為悲壮感はなく、裏ボスとして魔法も物理も最強になる素質をもっているキャラなら最強まで持っていきたくなり、幼少期からレベルを上げる。
何故か裏ボスになってから使い出す筈の闇魔法も最初から使えてしまったので(何故かの理由も作中で言及される)半ばゲームをやり込む感覚のまま回復魔法もあるので死を恐れず、ひたすら効率重視の魔物狩りとダンジョン周回に邁進し、ゲームの舞台になる学園入学時にはレベルがカンストのLv99になってしまい正真正銘の化け物になっていた。
はいここまでプロローグ。そう、ゲーム開始時に世界が破滅しても死なないような強さになっているので悪役令嬢モノで定番の破滅エンド回避のような「ゲームの世界に抗う」という感じではない。ゲーマーなので1巻においてはゲームの枠内をあまり逸脱しないように動く。そしてあんまりに強いせいで作中での戦闘描写もタイトルの割には多くない。
戦術兵器級の戦力になってしまったが故に巻き込まれる事象に対してうまいこと立ち回って行き、国に迫る脅威…舞台となるゲームのラスボスに関する問題を解決していくという流れ。
そのユミエラ自身は「考え方はおかしいが頭は回る」的に描かれており、ダウナー寄りな思考でありながら作中で中々立ち回りが上手い。しかしレベル上げの話になると急に饒舌になりドン引きされる等要所要所で笑いを提供してくれる。
そしてトチ狂った強さ。ゲーム中でラスボスと裏ボスのみが使える闇魔法のバランスブレイカー的な威力に加え、レベルの高さが肉体の頑丈さ・異常な反射神経・筋力の強さとして表現されている。闇と筋力に全振りした女。ゲームでやり込みプレイした結果こうなりそうだよねって感じ。
戦闘スタイルは力押し。武器無し素手でも化け物。ナノマシンな上院議員か。
しかも更に強くなりたいらしく、しっかりと訓練された剣術を持つキャラクターや、集団戦闘に優れた魔法の使い方に関心し(例えレベル差のせいで全く効かなくとも)それら技術に敬意を持ち習得しようとする描写もある。一方周囲からはその異常な強さと不吉な容姿から、基本的に「恐怖」や「敵意」、「利用」といった負の視線を向けられる。
「理不尽に強いチート級最強キャラ」でありながら嫌味な感じがしないのはそれらハードな境遇と、とにかく強くなりたいというコミカルな要素でバランスをとっているおかげか。
当初は「レベル上げをするゲーマーで周囲に対してはダウナー」だったのが人数こそ少ないものの強力な理解者を得ていき「その世界に住む人として、愛着も出ていく」に変化していくのが1巻の魅力。規格外の強さでありながらあくまでゲーム世界の秩序の中にいる。
最大の理解者となる同級生パトリックとの恋愛要素もあるが1巻時点では無自覚なユミエラにパトリックが只管振り回されるコメディ寄り展開。
もちろん1巻終盤にはゲームのラスボスもからんでいきシリアス展開もある。
2巻以降はゲームのストーリーも終わり、ユミエラとして世界に馴染んだ結果奇行(ギャグ要員化)に拍車がかかるのだが、1巻において「不吉の象徴の塊のような容姿に戦術兵器級の強さという化け物だが、上手く立ち回りこの世界での居場所を作った」結果なので、他の巻を読んだあとにふと読み返したくなるのがこの1巻。
個人的にはだいまんぞく
個人的にはユミエラのキャラ付けは大変ツボったのでお気に入りの作品。どの作品にも言える事だが主人公が自分にとって好みかどうかというのはポイント。
ユミエラは転生前も後も女性だが、主に続刊では転生前に触れていたという形でパロディネタに言及することがある。それが特撮だったりFPSゲーだったりと、戦闘モノ寄り。腐女子というよりオタクだった感じのキャラ付け。やりこみゲーマー思考寄りな人なら共感しやすいかも。
尚一番気に入っているキャラは当然ユミエラなのだが、次に好きなキャラというと実は2巻に出てくる悪役貴族のヒルローズ公爵だったりする。2巻の内容になるのでここでは詳しく書かないが。
Web版でも書籍版相当の内容が読め、大まかな展開は変わらないので買う前に雰囲気を掴みたいならそちらでOK。書籍版は展開が異なったり、他キャラ視点からのストーリーも追加されているのでWeb版を読んだ後でも楽しめた。
自分は3巻相当まではWEB版→書籍版と読んでいたのだが、4巻以降はしょっぱなから書籍を読んでいるのでWEB版は未読。
尚1巻部分についてはWeb版が一番キツめな内容になっていて(他の作品でもあるが当初はここで完結だったパターン)、ある人物が死んで後味ビター気味だったりするのだが、書籍版ではマイルドな展開になり、コミカルな描写も多くなっている。「極力既存秩序の枠を壊さないようにしつつ※、力づくでなんとかする」ユミエラはこのご時世頼もしい。
※但し結果的に結構壊す
ちなみにコミカライズ版はまだ小説1巻の中盤といったところだが、書籍版より更にマイルドになり、ユミエラがミステリアス美少女してる(とはいえ基本的には奇行傾向)なのと、特にゲーム主人公アリシアの立ち回りやスタンスが変わっているので今後どういう展開になるか楽しみ。
99です。
なんだこの視点欄。
参考リンク
WEB版
小説家になろう 悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~
コミカライズ版
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購入金額
654円
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購入日
2020年02月頃
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購入場所
Amazon (Kindle)
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