本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
自分にとって、最近よくある、なろうやカクヨムで見つけた作品が面白かったので、現物を買うパターン。
ただ、このWeb小説⇒現物化という過程で....
・補完や改稿が行われ、明確に、よりよく、深くなり、商品価値が増すパターン
・新たに番外編や外伝などが追加され、人物や背景が深掘りされ、世界観が強化されるパターン
・挿絵などがつくだけで、本編にはほとんど手が加わっていないパターン
などいろいろな書籍化パターンがある。
ま、元から完成度が高ければ、追記することもないし、挿絵くらいしか加わったものがなくても、充分商品として価値があるものもあるので、手が加わっていないものがだめなわけではないが、手が加わって作品としてグレードが上がったものの方が、現物を購入する意味は大きいか。
今回の作品は、若干の加筆はあるものの、主に番外編の追加でエピソードの裏や後日談を描く事で、サブキャラを立たせる感じにしただけで、本編は「なろう」と大差ない。
ただ、スピード感あるストーリーは、手元に置いておいても良いかな、と、考え入手。
それが、テレビアニメ「RErideD-刻越えのデリダ-」のノベライズなどで識られる瀬尾つかさが、別名義の横塚司で書いた「ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける」。
高校一年生の賀谷和久(かやかずひさ)は、落とし穴を掘っていた。それは、自分をいじめた佐宗芝(さそうしば)を落とすため。全寮制の学校で、芝本人や彼のグループから酷いイジメにあい、学校全体を牛耳った芝の影響力で周りにだれも味方がいなかった和久は、芝を落とし穴に落とし、殺すつもりだった。そのため、深い穴だけではなく、底には先を尖らせた竹を上向きに敷き詰め、焼くための灯油も用意し、手には手製の槍を持っていた。
芝を穴に落として、燃やし、槍で突いて殺そうとまで思い詰めた和久、もうすぐ呼び出した芝が来る時間...その直前に地震のような大きな揺れが起こる。
地震が来て、近くまで来ていた芝は帰ってしまった。が、芝が戻ってくるかもと待ちつつづけた和久に、なにかが穴に落ちた音が聞こえた!夢中で竹槍で突き刺し、動くなくなった穴に落ちた「もの」を確認すると、それは芝ではなく、豚に似た二足歩行の怪物だった。
その怪物が、最期の息をすると、徐々に消えていき...和久の耳にファンファーレが鳴り響いた!
「あなたはレベルアップしました!」
そして和久は教室ぐらいの大きさの白い部屋にいた。
その部屋には、一つの机と一つの椅子が置いてあり、ノートPCが置かれていた。
状況が把握できない和久。
取りあえずPCを見てみると、和久の名前とレベルとスキルが書かれていた。まるでコンピューターゲームのようだ。
この部屋は和久一人のようで、他には誰もいない。
ただPCにはこう表示されていた。
▶質問をどうぞ
PCに思いつく限りの質問をして、和久は様々なことを把握する。
・この世界は現実であること
・この世界ではレベルというものがあり、レベルアップこどにスキルポイントが得られる
・スキルポイントを割り振って能力(スキル)を伸ばす
・スキルには武器攻撃スキルと魔法スキル、さらに肉体、運動、偵察、音楽スキルがある
・武器攻撃スキルは、素手戦闘、剣術、槍術、根術、射撃、投擲の6種類
・魔法スキルは、地魔法、水魔法、火魔法、風魔法、付与魔法、召喚魔法、治療魔法の7種
・レベルアップには敵を倒して経験値を稼げば良い
・この白い部屋にはレベルアップ時に来られる
・白い部屋の中では時間が経過しない
・スキルポイントの割り振り(もしくは温存)を決定すると、現実界に戻る
と、まるでゲームのようなシステム。
だが
・死んだら蘇生する方法はない
と、そこは現実。
どうやら和久(たち)は学校がある山ごと異世界に飛ばされたらしい。教師など頼れる人が生き残っているかどうかも不明。つまり生き残るためには、怪物を斃して、レベルを上げ、スキルを磨いて、自分を強くしていかなければならないようだ。
色々と考えた末、体力や武術などに自信がない和久は、自分の代わりに動くことが出来る召喚獣を使役できる召喚魔法と、召喚獣も含んだ他人に加え、自分の能力も強化する事も出来る付与魔法を選択し、現実界に戻った。
あの豚人間(白い部屋のPCによるとオーク、と言うらしい)を倒して、さらにレベルアップしなければ、と、落とし穴にオークを誘い出す和久。ただ、次の1匹を倒しただけでは、レベルアップしなかった。どうやら、ゲームによくあるように、レベルが高くなると、より多くの経験値(怪物の数)が必要なようだ。
白い部屋のPCに追加の質問もしたかったため、さらにオークを探しているときに和久は、オークが少女を組み伏せようとしているのを見つける。そのオークは武器を放り出して、少女の股を開かせようとしているようだ。
少女を助ける...というよりは自分の経験値稼ぎのため、オークの背後にまわり、オークを襲おうとした和久だが、落とし穴を使わない初の直接戦闘に緊張する。その時、和久と目が合った少女が自らオークの気を惹いて、和久がオークを襲うのを有利にしてくれた。
無事オークを倒してレベルアップし、白い部屋に来た和久。ここで和久は、さきほどオークの注意を逸らしてくれた少女のことを考えた。自分の戦闘能力に関しては、少女を助ける際に、丸腰のオークを背後から襲って戦ったのでさえ苦戦したので、期待はできない。彼女と共闘できれば、生存確率は上がる。ただ自分の力はベースとなる体力はからきしだし、主体的な攻撃魔法や、ましてや肉体系スキルも持たない。もし、スキルをとった彼女が裏切ったら...?
いままで、芝を中心とするグループにいじめられてきて、人間不信の和久だったが、もう一度彼女を、他人を信じてみることにする。
現実界に戻った和久はオークに襲われていた中学三年の少女=下園亜理栖(しもぞのありす)に、自分が白い部屋のPCから得た情報や、その情報から考えたことを伝える。
亜理栖は蹂躙されるだけなのはイヤだと、オークを斃し、スキルを取ることを選択する。和久が作った落とし穴を使って、オークを斃す亜理栖。彼女もまた、あの白い部屋に行き、和久の話が本当であることを識る。
和久を信頼して共闘することにした亜理栖、彼女は槍術と治療魔法のスキルをとって、前衛としてチーム(パーティ)を組むことになった(なおパーティを組むと、怪物を倒して得た経験値は人数割りになるが、パーティメンバーの誰かがレベルアップしたときに、「白い部屋」に同時に行くことが出来る)。
亜理栖には助けに行きたい友がいた。
いつも仲が良かった竜輝珠樹(りゅうきたまき)。外聞を気にする、子の無い義両親に、慈善行為気味に施設から引き取られ、その後放置されてきた珠樹。彼女も心に傷は負っているが、亜理栖にとって、たいせつな友人だった。中等部の別館に籠城している珠樹を救出に行く最中、ふたりは女生徒を弄ぶオークたちを見つける。
オークを殲滅するも、女生徒たちは、ほとんどが首が変な方向に曲がるなど、死体であることが明らかな状態だった。しかし、そのなかに息がある女生徒を発見する。それは和久のクラスメイトで副級長の志木縁子(しきゆかりこ)。今はオークに弄ばれ心と体に傷を負った彼女だが、和久にとっては、自分が芝にいじめられていたときに見て見ぬ振りをしていた同じクラスの人物でもある。わだかまりなく縁子を受け入れられずにいた和久だが、そうこうしているうちに、複数のオークとオークの隊長=エリートオークが現れる。
縁子に隠れているように言い、位置的に離れてしまった亜理栖に「オーク等怪物と戦えるのは、スキルを取った自分たちだけだから、再起を期そう」と言い聞かせ、戦線離脱するよう指示をした和久だが、別ルートで逃げていた途中、本来敵を倒さなければ呼ばれないはずの「白い部屋」に呼ばれ、レベルアップしたことを悟る。これは和久の知人らしい縁子のことを心配した亜理栖が、和久の指示を破って、オークたちと戦ったから。レベルアップ直前の亜理栖は、エリートオークに迫られ、劣勢の状態。傷も負っており、戦闘系のスキルのない和久が救援に行っても、なすすべはない。そんな中、白い部屋で起死回生の一発勝負の作戦を編みだした和久は亜理栖にそれを伝え、からくもエリートオークに勝利する。
晴れてエリートオークを斃した和久と亜理栖は、吊り橋効果もあり?白い部屋の中で結ばれ、恋人関係になる。
その後、籠城していた珠樹を、一緒にいた数人の中学生女生徒(中学生が立て籠もっていた建物が家庭科の施設であったため、女生徒ばかりというご都合設定事らしい)を含めて助け、さらに縁子とも行動を共にすることになる和久たち。和久からこの世界のレベルアップの仕組みを訊いた女生徒たちは、レベルアップしてスキルを取り、怪物に立ち向かう力を得ることを決心する。その中で、高等部に兄がいるという中学一年生田上宮観阿(たがみやみあ)が、和久のパーティに加わることを志願する。
これで和久のパーティは、槍術と治療魔法を伸ばす亜理栖と、剣術と肉体スキルを取った珠樹からなる前衛と、付与魔法と召喚魔法を使う和久と、地魔法と風魔法を選んだ観阿の後衛で構成されることになった。この和久たちのパーティが、後に「精鋭パーティ」と呼ばれるようになり、怪物たちとの戦いの主力となる。和久と同じく最年長の縁子は、女生徒ばかりの中学生たちを率いるため、偵察と投擲のスキルをとり、グループの参謀的な役割を担っていくことになる....
と言うような、異世界とゲームのレベルアップのような仕組みを上手く組み合わせたストーリー。
このあと、高等部の生き残り=つまり「いじめられっ子の和久を識る人」たちとの確執と和解、観阿の兄である田上宮結城(たがみやゆうき)との共闘、因縁の芝との対決とその決着...と物語は進んで行く。
このあたりまでは、異世界スリップによって先にスキルをとることになり、「俺TUEEE」状態になった男のハーレム物語...という感じなのだが、ラスボス設定かと思っていた芝との対決は途中経過に過ぎず、その後和久たちは世界の存続を巡る戦いに巻き込まれていく。
芝グループとは別に生き残っていた田上宮先輩がまとめた高校生グループとの共闘。この世界を支える「世界樹」を護る部族の存在。その世界樹を含む、この世界を支える要素を狙う魔王軍。魔王と、それを支える四天王との世界を賭けた決戦、予期せぬ地球への帰還...など、様々な戦いが繰り広げられていくが、和久たちはそれを、あるときは奇手を使って、あるときは異世界人の協力を得て、あるときは犠牲を強いられつつ勝ち抜いていく...というストーリー。
特に、最後のどんでん返しはよく考えられており、前半~中盤は、どちらかと言えば単純に、スキルという異能を手に入れることになった高校生が、オンナノコ侍らせて無双する...というだけの話という感じだったのが、最後の方で、異世界との多重構造を絡め、タイムパラドックスも含んだ展開になる部分は、真のSF好きでも結構読み応えがあるものになっている。
ただ、基本「俺TUEEE」系の爽快ラノベムーブなのは確かで(なお、和久が群を抜いて強いのは確かだが、苦戦はする面も多いので、正統派「俺TUEEE」ではないかも)、結構ご都合主義的部分が目立つし、展開がメチャ速いのも、スピード感あると言えばそうだが(なにせタイムパラドックスの部分を除けば、全9巻の時間経過は4~5日ほど)、実際はここまで連戦連勝は体力・知力的に無理筋、と言う感じもする。
また、恋人亜理栖の予告なき離脱で人間不信に陥った和久を正気づけるため亜理栖の親友珠樹と、地球に飛ばされたとき、四天王の一人と戦う力を得るため観阿と...と田上宮結城先輩以外のw主要キャラは全員女性というハーレム状態で順調に?オンナノコを....主人公が美味しく?いただいてしまうあたり、やはり青少年向けラノベという感じ。
あとなぜか、女性陣の戦闘服は、体操服で下はブルマだしw
付与魔法で強化しているとは言え、ブルマだし(大事なこと?なので2回...)
そういうツッコミどころは、ありとあらゆるところにあるのだけれど、最後のこの世界の成立の謎などを含むどんでん返しの部分は結構考えられているし、主人公が前線で「俺TUEEE」するのではなく、付与魔法と召喚魔法という、どちらかと言えば補助系の魔法で自分の周りを強くしていく、というコンセプトは話として結構面白かった。また、ゲームでは当たり前の事ながら、得られた経験値を「自分で」割り振っていくことによって強くなっていく、というのを、小説に正面から取り入れたのは新しいかな⇒だから題名に「天秤にかける」と入っている。
なろうでは、番外編以外ほとんど小説と同じ形で読めるので、興味がわけば是非。
あと元々8年前から刊行開始~5年前(2017年)完結と結構前の作品なのに、昨年(2021年)からコミカライズも開始された(絵はツカモリシュウジで結構エ○い、ちなみに文庫の挿絵はマニャ子)。そういう意味では、けっこう人気もあったのかな。でも中古で入手するとき、最終2巻だけ結構入手難だった(新品含めても市場に出物がなかった)ので、最後は失速したのか...?タイムパラドックスが絡む面白い部分は、実は「ソコ」なんだけど。
サクッと読め、いつでも中断できるという点では、ラノベらしいラノベかも知れないなー。
※Amazonは第1巻に繋いでいますが、購入価は9巻分です
ちょっとインフレがすごすぎる。あと和久の趣味(性癖)は...ww
アニメや特撮のヒーローものやロボットものでも、話が進むにつれて、以前の敵よりさらに強い敵が出てきて、最後にラスボスが...という感じで主人公側も成長したり、新兵器の追加があったりするが、この作品はインフレ率がものすごい。いや、小説にもそう書いてあるので、まさに意識してそう描写しているわけだが、すごすぎる。数日前に竹槍で一匹のオークをへっぴり腰で斃していた和久(チーム)が、ハイパーインフレの結果、地球で軍用機も苦もなく落とす魔界の四天王を、剣と槍と魔法で斃すほど無双するのは、ご都合主義と取られても...
あと、和久の性癖は...ムニャムニャ
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購入金額
3,192円
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購入日
2022年頃
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購入場所
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