ヒューレット・パッカードから発売されていた関数電卓です。Advanced Scientific Calculator と銘打たれています。
Clamshellシリーズ
この機種は折り畳み式の電卓で、Clamshell シリーズというそのままの名前で呼ばれています(28S自体のコードネームはOrlando)。Clamshell シリーズはこの 28S のほか、前バージョンである 28C、金融電卓の 18C/19B/19BIIがあります。
電池ボックスの構造に難あり
Clamshell シリーズでよく言われる欠陥として、電池ボックスが挙げられます。単5電池を3本使用するのですが(これ自体は別に欠陥ではないが、コンビニでは大抵扱っていないので少し不便。私の場合はヨドバシカメラで買った)、電池ボックスのバネが強すぎるので蓋を閉めるのに苦労します。そして、その蓋の引っ掛かりの部分が薄く折れやすいため電池の交換は注意して行わなければなりません。
なお、19BⅡの後期ロットでは裏蓋を開ける仕組みになっているようですが、なぜ最初からそうしなかった。
ポケットに入らなくはないが大きい
閉じた状態では、高さ、幅、厚さともにPioneerシリーズ(42Sなど)よりも一回り大きくなっています。この状態でポケットに入らなくはないですがきついです。専用のソフトケース(別途入手しました)に入れた状態では(ワイシャツの)ポケットに入りませんでした。上着のポケットには入るのですが……
この機種は360度折り返して使うことができますが、幅が広いため片手で持って使うと少し負担になります(手の大きいアメリカ人ならそうでもないのかもしれませんが)。
クラムシェル仕様はやっぱり特殊
ボタンを押した感触はねっとりしています。後のHP 20b 程ではありませんが、押したときの「クリック感」に乏しい気がします(但し、なくはない)。
Clamshell シリーズは右半分が一般的な関数電卓のようになっており、左半分が英字入力用のキーボードになっています。折り返して使うこともできなくはないのですが、メニューによっては左のキーボードで呼び出すものがあるため折り返した状態ではできることが限られてきます。見開きのまま持って使うのもやりづらいので机に置いて使うことになるのではないでしょうか。
ベクトルや複素行列もできる
Advanced Scientific Calculator と名乗るだけあって、機能が多いです。複素数は当然サポートしていますし、ベクトル、行列もサポートされています。複素行列もできます。
RPL言語
HP 28Sには、RPLという言語が搭載されています。これは HP 28C で導入されたもので、Forthのようなスタックベースな言語です。プログラムは、« » でくくってオブジェクトとして扱うことができます。
また、HPの関数電卓は4段スタックが普通であるところ、RPL電卓はスタックの段数に制限が(メモリ容量以外に)なく、複雑な計算でもスタックからはみ出して消えるという心配をしなくて済みます。
RPLは複素数を前提としているため、複素数オブジェクトが用意され、ベクトルや行列に入れることもできます。
HP 28S を「関数電卓」ではなく「ポケコン」と呼び、APL処理系のシミュレーションができると主張する論文もあるようです。ポケコンといえばBASIC言語をイメージしますが、それと同等以上のことができます。
角度の単位
角度の単位は、度とラジアンが使えます。切り替えは MODE メニューか、直接(DEG または RAD)入力で行います。ラジアンに設定しているときは、インジケーター (2π) が表示されます(15C や 42S を含む多くの関数電卓では RAD と表示される)。
一方で、多くの関数電卓で使用できるグラード(ゴン、グラジアン、ノイグラート)は搭載されていません。これはメートル法とともに提案されましたが(フランス革命のときに万国共通の単位を作ることとなり、その結果がメートル法)、ほとんど使われていない(一応フランスの地形図では使われているらしい)ので無くても困らないと思います。
統計演算機能
統計演算機能は STAT メニューから使えます。HP 15C などと同様に Σ+ で要素を追加できますが、要素は ΣDAT に行列として保存されます。2変数の統計を計算するには、2成分のベクトルを Σ+ する必要があります。この場合、ΣDAT は2列の行列になります。1変数の統計では1列の行列です。もちろん、総和や平均、分散といった計算がメニューに用意されています。
メモリに余裕があるためか、15Cと違って RCLΣ を実行することで後から要素を見返すことができます。
グラフ電卓
HP 28S はグラフ電卓です。式を入力して STEQ→DRAW でグラフを表示できます。昔の機種なので正弦曲線を表示するのに11~12秒かかります。
ただ、グラフ電卓にしては画面が横長です。137×32ドットなので、アスペクト比は137:32(これで既約)です。わかりやすいように短辺を1とすると、4.28125:1 です。
あまり複雑なプログラムでなければ十分
HP-28S は1988年に発売されました。前年に発売された 28C の改良版で、クロック周波数が640kHzから1MHzに上がり(ちなみにZ80のオリジナルは2.5MHzだが)、メモリも2KBから32KBに増えているそうです。あまり複雑なプログラムを組まない限りはメモリが足りなくなるようなことは無いと思いますが、外部入力がないためデータのバックアップはできません(赤外線プリンタは使える)。
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購入金額
12,500円
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購入日
2021年01月03日
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購入場所
ヤフオク
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