レビューメディア「ジグソー」

わずか半年の奇跡のバランス

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。デビュー直後から自分(たち)のやりたい音楽が定まっており、それが制作側の意向とも合致し、初端から売れるというアーティストは多くはありません。ほとんどのアーティストは、何作か作品を創っていく中で、自分たちの表現法・表現力と、良い楽曲と、さらに的確な制作側のスタンスとが上手くバランスを取って、世にアピールするようになります。そのスイートスポットは多くのアーティストでそんなに広くはありません。そんな奇跡のようなバランスが上手く成立した時期の、女性デュオの作品をご紹介します。

 

double。その名の通り、二人の女性ヴォーカリストからなるユニットだった。主に作詞を手がける姉のSACHIKOと、曲を書く妹のTAKAKOの姉妹が組んだR&Bデュオで、デビュー直後はあまり注目されなかったが、本作品で火がつき始め、次の“Shake”で方向性が定まった。

 

1stと2ndは筒美京平プロデュースで、ポップス~歌謡曲系のJ-POPだったが、この作品からMISIA、宇多田ヒカル、EXILE、平井堅あたりのR&B系J-POPの仕掛け人である松尾潔のプロデュースになって一気にクロさが増し、ちょうどMISIAやヒカルのデビューによってその後訪れる「SOUL DIVA」のブームもあって、立ち位置が決まった感じの作品。

 

表題曲の「BED <ORIGINAL>」。さすが姉妹。ハモリの声質の相性が良すぎる。♪ベッドの真ん中が一番淋しい/二人で抱き合えば/なにもいらなかったはず♪~♪からだで教えて/傷つけても/言葉ごまかして/(恋は)つづくから♪と、打ち込みのブラコン調トラックに乗せて、ちょっとえちぃ歌詞を歌う二人の声が絡む。ややポップスに媚びた感じはあるが、R&Bテイストが濃く、二人の歌声も十分クロめでイイ感じだ。

 

つづく「BED <DOUBLES>」は「DOUBLES」がポイント。歌を歌っているのは、doubleのSACHIKO&TAKAKO姉妹だが、ラップを入れているMummy-DとKohei(KOHEI JAPAN)は、実の兄弟。つまり平澤姉妹と坂間兄弟のコラボ。♪この部屋のすみでも/ずっと黙ったままでも/そばにいれば/わかりあえるから♪とコーラス部分がdoubleの二人で歌われると、続けてMummy-DとKoheiによるラップ。ひとしきりラップが終わったあとは曲に戻るが、トラックはワンコード風の調が明確でないバッキングに換えられ、二人の歌声もソリッドであまり残響がない感じのミックスとなって、ラップとバランスを取っている。トラックメイクにもMummy-DとKoheiが深く関わっているらしく、hip hop色が強くなっている。

 

MY SISTA」はアルバム未収録だが、シンベの圧が大きいミドルテンポチューンで、姉妹愛が歌われる。♪まだ何も知らなかった頃/My Sista Sista Sista/いたずらと意地悪で困らせた/その仕返しに宝物かくして泣かせた/泣きじゃくり/逃げ込んだベッドルーム♪と子供の頃のケンカを歌ってはいるが、♪だからごめんね/威張ってばかりで/ありがとう/いつもそばで♪、♪だからごめんね/あまえてばかりで/ありがとう/いつもそばで♪どちらかがメインヴォーカルと言うことはなく、二人の声が寄り添い歌う。そして、すでに引退したDJだがDJ TonkのトラックメイクがCOOL。

 

この3rdから時流に乗った曲調・アレンジで、CDショップでの露出もあり、doubleは上昇気流に乗り始める。そして次のシングル“Shake”がスマッシュヒットとなり、そのプロモーションツアーを進めていたさなか...姉のSACHIKOの急逝....

 

本当に惜しいタイミング。

 

その後姉の遺志を継いだTAKAKOは、2010年頃までソロで精力的に活動する。でも活動名はTAKAKOとするのではなく、「double」のまま残したのは、SACHIKOへの、My Sistaへの想いだったのかな。

 

その後は活動のペースが落ちているが、2018年には既発売のベストアルバムをリニューアルしたり、SILVAやSUGARSOULと言った往年のSOUL DIVAたちとのコラボを企画したりと、まだ活動継続中。

 

ただdoubleがソロプロジェクトになってからは、本格派の方向に重心を移したので、この二人時代のキャッチーさが若干薄れたのは事実。そういう意味ではこの3rd~4thシングルの間の半年間は「奇跡のバランス」だったんだなと。

「確実な明日」なんてない、一期一会のバランス。
「確実な明日」なんてない、一期一会のバランス。

 

SACHIKOとTAKAKOの二人が顔を寄せ合うジャケットを観ながら、そんなことを感じた夜でした。

 

【収録曲】

1. BED <ORIGINAL>

2. BED <DOUBLES>

  featuring Mummy-D from RHYMESTER and Kohei from MELLOW YELLOW

3. MY SISTA featuring DJ Tonk from NAKED ARTZ

4. BED <ORIGINAL INSTRUMENTAL>

 

「BED」

更新: 2020/08/23
必聴度

二人時代のdoubleのブレイクの予兆

最終的にはブレイクしきる前に、二人⇒一人になってしまったけれど....

  • 購入金額

    1,223円

  • 購入日

    1998年頃

  • 購入場所

    TOWER RECORDS

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