所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ライヴ映像。そのアーティストの生演奏を捕らえたもので、会場に行けなくてもその雰囲気を味わうことができたり、本番に参加できたときにはそれを想い出すよすがになったりします。しかし、多くのライヴ映像は、そのアーティストにフォーカスがあたっており、バックバンドのメンバー、サポートミュージシャンに興味がある場合でも、ほとんど映し出されないのが常です。しかし、元はそのバックミュージシャンにスポットライトを当てた作品をベースにしているため、アーティストの通常のライヴ映像の他に、そのプレイヤーに「寄った」アングルも用意された作品をご紹介します。
森広隆。もうすぐ芸歴20年を迎えるベテランシンガーソングライター。影響を受けたアーティストとして、海外勢ではJamiroquaiやStevie Wonder、日本人ではCharなどの名前が挙がっており、スガシカオとの共演やFLYING KIDSの浜崎貴司とも親交があるなど、まさにファンク系J-POPの濃いところにいる人物。
2001年にメジャーデビューしたあと、シングル4枚、アルバムとミニアルバム1枚ずつを残し、その後はインディーズに居を移し、今でも活動中。決してポップな側面がないわけではないし、売れることを避けているわけではないとは思うが、その道の突き詰め方が、若干玄人向けというか、ツウ向けというか、ミュージシャンズミュージシャンという側面も持つかも。
その分、業界人からの信頼は厚く、名の通った多忙なプレイヤーも彼の表現を支えるために力を貸すのを惜しまない。
ベースは、名手紺野光広や種子田健、高水健司が、キーボードも一番よく組んでいる河内肇の他にもMISIAのサウンドプレーン重実徹など、名だたるプレイヤーが森の音楽を支えているが、ドラムスも凄腕プレイヤーが集う。デビュー付近はジャズを基調にしたプレイの巧手波多江健、その後J-popからアイドル曲まで幅広く対応する佐野康夫、重さとテクニックを両立する山木秀夫、“日本一忙しいドラマー”沼澤尚といった、望んでもなかなか応じてもらえないような凄腕ドラマーが森を支えたが、その中に日本屈指のハイバードラマー、村石雅行もいる。
村石は、東京藝大卒業直後からプログレバンドKENSO
で活動し、平行してKRYZLER & KOMPANY
へのサポートや、松任谷由実や椎名林檎のツアーメンバーも務めた。さらに、中島美嘉の「雪の華」やスキマスイッチの「全力少年」、椎名林檎の「本能」、モーニング娘。 の「ここにいるぜぇ!」といった印象的な曲のレコーディングに参加するなど、記録・記憶に残る曲達のサポートを続けてきた超一流ドラマー。
そんな村石のドキュメンタリー映像作品「クローズアップ村石雅行 プロの現場 密着365日」の収録過程で収められたのが、森のライヴとそこでの彼のプレイ。
その映像作品では、村石の仕事の進め方や打ち合わせも含めたレコーディング風景、ライヴでのリハーサル方法など、「ドラマーという仕事」に焦点を当てていて、その一場面として、ももいろクローバーZの野外コンサートでのバックバンドを務める風景や、冨田ラボのレコーディング風景などともに、森のライヴの一部とそのリハーサルが収められていた。
前述のDVDでは編集されていた森のライヴは、実際にはフルサイズで収録していたらしく、その部分を1枚のDVDにしてリリースしたものが本作。
村石雅行がサポートした森広隆のライヴ映像なんて、なんという俺得
なので、タイトルも「森広隆『LIVE ON PLANET EARTH』featuring 村石雅行」ではなく、「村石雅行 meets 森広隆『LIVE ON PLANET EARTH』」で、村石が主。ライヴ映像も、森を中心に、バンドメンバーを比較的均等に撮した「通常ライブアングル」の他に、「村石雅行アングル」として村石の至近距離で撮影した映像のみのアングルも収められている。
ドラマーフォーカスアングルが収められ、その対象が村石雅行とは、なんという俺得
この「村石雅行アングル」、正面から村石の顔を延々撮しているような映像ではなく、4カメラで彼のプレイや手元、他プレイヤーとの合図の交換を追っているマニアックさ。
①ドラマーの左にあるハイハット横から水平に中央のスネアを狙った固定カメラ(メイン)
②左肩越しに後方上からドラムセット全体を俯瞰するように撮した固定カメラ
③右側のフロアタムとトップシンバルの間からステージ中央を伺う固定カメラ
④主に右肩越しに後方からプレイを撮した手持ちカメラ
一番比率として多いのは、ハイハット横からのこの構図(①カメラ)
①はドラムセットの中で一番叩く楽器であるハイハットとスネアのプレイがよくわかるし、②はタム回しなど腕の移動や(このときはドラムスの位置がステージ中央でなく下手側-向かって左-なので)メンバーに村石が送る視線がよくわかる。逆に、③はステージ上から見て一番右(つまりステージの下手)にいる村石からの視界に近いので、他メンバーから送られる目線や合図がわかる。④は手持ちなので一定の構図ではないが、立ち位置的には①では追い切れないトップシンバルの奏法がよくわかる。撮影位置的には、通常ローディーか付き人、ドラムテクニシャンしか立てない位置で、至近距離で村石のプレイが満喫できる。
このときの配置は下手側(向かって左)から、村石⇒紺野⇒森クン⇒河野の順
そんな教則系ビデオに登場するほどの名手が支える白熱のライヴ、本編の方も観応えがある。
メンツは、森と村石の他は、ベース紺野とキーボード河内という、森と一番よく組んでいるメンバーであり、広すぎないライヴハウス(下北沢GARDEN)での阿吽の呼吸のライヴパフォーマンスが味わえる。
最初は、ギターをかき鳴らしながら歌う森と村石+紺野のリズム隊だけの3ピース構成の「Freaky Boogie」。シンプルな構成、シンプルな音数なので、ライヴならではの遊びのアレンジやオリジナル
との違いがよくわかる。村石の左手ハイハットもキレッキレ!
左手ハイハットとオープン/クローズのシンクロが素晴らしく、キレ味抜群(②カメラ)
途中からキーボードの河内が加わり、静かめな曲も演り始めるが、その中では1stメジャーシングル
のカップリングのみにしか収められなかった「密室」が、ライヴハウスの雰囲気と相まっていい味出してる。森クンの、コード弾きを多用したジャジィかつブルージィなギターソロもセンスが良いし。
モチロン「通常ライブアングル」では、ライヴの主役たる森クンも大写しになる
森クンのカッティングのキレと、細かい刻みで曲に前進力を与える紺野のベースが聴き所の「エレンディラ」は、オリジナル
のオルガンの名手エマーソン北村に負けない河内のプレイにも注目(注耳?)。いやいやなにより、ラストの村石の長~~~いオンビートソロに圧倒される!
村石フォーカスのドキュメント映像が「元ネタ」なので、アングル1の「通常ライブアングル」でも村石の映像比重が高く、ドラマーのcybercatはそれだけでもジュルジュルものだが、アングル2の「村石雅行アングル」は細かいところまで観察できて、超超大満足。
ただ唯一の欠点は、ドラムプレイ映像で大切な足技のショットが「村石雅行アングル」にはないこと。回数が多いわけではないが、「通常ライブアングル」では右後方下からバスドラ側のペダルプレイを撮したショットもある。長くは映らないので固定か否かは断言できないが、位置的に④と同一のカメラのような気がするため、手持ちで足元を狙ったものだと思われる。そのため全編通してではないだろうが、いくつかのショットは撮影されていたはず。ドラムプレイ主体の「村石雅行アングル」でもそのアングルを採用して欲しかったかな(本音言うと、足技は固定カメラで、画面分割で常に観たかったが)。
森クンのファンにも、村石雅行のファンにも、そして他パートでもバンド活動をしている人たちはプロ阿吽の呼吸を感じるべく観て/聴いて欲しい作品です。
【収録曲】
1. Freaky Boogie
2. 悪魔の提言
3. 退屈病
4. PEBAMA
5. 密室
6. エレンディラ
7. 黒い実
8. Funk Redemption
9. ゼロ地点
10. Rainbow Seeker
11. コーラナッツウイルス
※アングル1:通常ライブアングル、アングル2:村石雅行アングル
収録:下北沢GARDEN
「村石雅行 meets 森広隆『LIVE ON PLANET EARTH』マルチアングルライブ【ダイジェスト】」
アルファノート:村石雅行 meets 森広隆『LIVE ON PLANET EARTH』マルチアングルライブ
ヘンに気負いがないプレイが良い
メンバーも気心が知れた仲で、狭いステージの目を見交わした状態で、互いのプレイに触発されたアドリブもあってライヴ感が強い。
...森クン、ちょっと歌詞忘れてるところあるけどw
あと、DVD1枚にフルサイズのライヴ映像を2アングル入れているため、音声は多少コンプレスされているらしく、そういう意味でも必聴<必見。
日本のトップドラマー、村石雅行のテクニックが間近に!
特に掌が視られるくらい近い「村石雅行アングル(アングル2)」は、2つ打ちの時にスティックが掌の中で撥ねるのがわかり、1つ打ちと2つ打ちの差が映像的にもよくわかる。
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購入金額
5,500円
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購入日
2020年07月20日
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購入場所
Amazon
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