所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アニメのテーマソング。その作品の世界観を表現しながら、歌う（演奏する）アーティストとしても自分の色を合わせこみ、練り上げる曲であり、アーティストの解釈も重要なポイントとなります。自身も出演する作品を、自身の詞と歌で表現した作品をご紹介します。

南條愛乃。ナンジョルノ、ジョルノとも。声優としても一線級だが、声優業界に疎い人にはむしろ音楽活動の方が有名かもしれない。先行して始めたアニソン界隈のビッグネーム、fripSideの2代目ヴォーカリストしての活動が印象が強いが、個人名義でも結構作品を出している。2020年6月現在、およそ7年半の活動歴で10枚のシングルと4枚のオリジナルアルバムをリリース。

シングルは全てアニメ（TVアニメとOVA）のテーマソングだが、アルバムはシングル比率も高くなく、コンセプトも強く押し出して結構アーティスティック。キャッチーなシングルとは違う世界が広がる。一方、シングルは「テーマソング」なので、叙情的で切ない曲だったり

デジタルでカッコ良かったり

と作品に寄り添っている。

そんな彼女の8thシングル、“君のとなり わたしの場所”。自身もバイプレイヤーとして出演するTVアニメ、「同居人はひざ、時々、頭のうえ。」のテーマソング。「同居人はひざ、時々、頭のうえ。」は、原作みなつき、作画二ツ家あすによるマンガのアニメ化作品で、人付き合いが苦手な小説家と元ノラの猫（♀）が、つまり互いに言葉の通じない人と猫が、勘違いとすれ違いをしながらも、居場所を見つけていく．．．という作品（2020年6月現在既刊6巻。まだ未完なので未レビューだが、完結したらレビュー予定）。特徴として、1つのエピソードを人間側の視点と猫側の視点で描いているのが面白い。ヒトはある考えをもって行動したのに、猫はそれを猫なりの解釈をして“ニンゲンは不可思議な行動するなー”と思っている、とか...

そんなほのぼのとしたマンガのアニメ化のテーマソングなので、ジョルノも癒やしの声で表現する。

表題曲「君のとなり わたしの場所」は、ジョルノの歌詞にシンガーソングライターの奥華子が曲をつけたもの。編曲も奥で、ハープシコード調の音のバッキングで始まり、途中で小編制のストリングスが入るようなかわいらしい仕上がり。ジョルノもfripSideの時のパーンと前にでる声ではなく、微ハスキーな丸めの声で攻める。同じ事象を人間の視点と猫の視点で描く「同居人はひざ、時々、頭のうえ。」のほのぼのした感じが良く出ていてステキ。♪君のひざの上は／ポカポカして／お陽さまみたい／かなしいときはよんで／すぐに行くわ／笑顔みせて／たよりない君だから／そばにいてあげる／やさしい君のとなり／ずっとそばにいる♪詞はジョルノ自身だが、完全に「読んで」ますな。完璧にお姉さん猫のハルの視点。

カップリングの「わガまま♡ブれいん」は一転、ビートが立ったハイスピードな曲。曲の提供は「とある」のテーマや「つよきす Cool×Sweet」のテーマ、ジョルノにも「東京レイヴンズ」のエンディングで彼女の1stシングルとなった「君が笑む夕暮れ」を提供した井内舞子。詞もその「君が笑む夕暮れ」を書いたKOTOKOなので、要するに1stシングル制作陣。ギターのリフで始まり、ブラスで盛り上がる曲ではあるが、fripSideのようなサイバーハードな方向性ではなく、「アニメのオープニング風」の曲。Aメロはあまりコードチェンジがなく、ちょっとロックンロール風というか、ややノスタルジックな感じで、Bメロはお約束な半速、サビは所々に印象的なコード進行を入れながら盛り上げ、間奏はすぐソロに入るのではなく、ギターのリフ⇒オルガンのブリッジを挟んで短く印象的なギターソロにいく、そしてラスサビの前には定番のブレイク．．．という、まさにアニメオープニングの方程式に合致した曲。ジョルノも楽しそうに歌う。ひょっとしてなにかの作品のテーマ候補だったのかな？カップリング曲としてはかなり贅沢な使い方。

添付のDVDは「君のとなり わたしの場所」のMVとそのメイキング、15秒SPOT数種。MVは半分ほどは「猫の視点」で撮られているので、ジョルノに可愛がってもらえる？？メイキングではこたつの中にカメラ突っ込んだりするシーンもあって、猫視点の撮影風景が綴られる。SPOTは何種か収められるが、ジョルノによるナレーションが「南條愛乃、ニャーシングル、君のとなり わたしの場所」となっている。この「ニューシングル」を「ニャーシングル」とするところは、YouTubeのNBCUniversal Anime/Musicチャンネルの公式SPOT（↓）でもそうなのだが、．．．ラストテイクだけ「ニャン條愛乃、ニャーシングル、君のとニャり わたしの場所」となっていて楽しい。ちょっとジョルノも笑いかけになってしまっているこのテイクって、実際のコマーシャルに使われたのかしら？

布団の上で一緒に寝ている猫の視点で始まる

寄ってくるジョルノを見上げる猫の視点

こたつの中にカメラを突っ込んだ撮影も．．．．

ジョルノというと、fripSide系のビートの強い曲の対局として、切々と自身の感情を載せて歌い上げる系統の曲があるが、それとも少し違ったほのぼの系。こういった柔らかめの肌触りの曲ってあまりなかったな、と。

MVに出てくる猫と一緒

癒しのジョルノの声を感じたいときに....

【収録曲】

<CD>

1. 君のとなり わたしの場所
2. わガまま♡ブれいん
3. 君のとなり わたしの場所＜instrumental＞
4. わガまま♡ブれいん＜instrumental＞

<DVD>

・「君のとなり わたしの場所」MV
・MV making
・SPOT

「君のとなり わたしの場所」