レビューメディア「ジグソー」

ビル・チャンプリン比率が高め

元シカゴにして、アメリカ西海岸のミュージシャンとしては重鎮ともいえる大物ビル・チャンプリン、TOTOの3代目ヴォーカリストにして、TOTO再結成後にもメインヴォーカリストとして活動しているジョセフ・ウィリアムス、そしてスウェーデンでは敏腕ギタリスト・プロデューサーとして名をはせるピーター・フリーステットの3人からなるCWFの第2作目となるアルバムです。デビュー作のレビューは以下でご覧いただけます。

 

 

 

 

 

 

作品としては今回が2作目ですが、ライナーノートに記載されているビル・チャンプリンの文章によると実はこの3人の交流は2000年代初頭から続いていたというのです。元々はどこからかビル・チャンプリンの電話番号を入手したピーター・フリーステットが突然連絡してきて、一緒に曲を書き、そのまますぐに録音に入ったことで始まった交流で、そこからビル・チャンプリンがジョセフ・ウィリアムスを紹介する形でこの3人による交流が始まったそうです。

 

ただ、今回はジョセフ・ウィリアムスがTOTOのツアーや、TOTOの中心人物スティーヴ・ルカサーのソロプロジェクトに時間を取られ、ほとんど共同作業が出来なかったということで、ヴォーカルやコーラスでの参加にとどまっていて、残る2人や日本でも曲提供などで活躍するランディ・グッドラム、ビルの妻でソロシンガーとしても実績を持つタマラ・チャンプリンが中心となって作り上げたものとなっていて、前作とは結構傾向が変わった印象があります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本盤はアートワークが専用のものとなり、ボーナス・トラックが3曲収録されています。ちなみに海外でリリースされた本作は、このようなジャケットデザインです。

 

 

 

 

 

 

 

海外盤では中身で勝負といわんばかりのアートワークですが、日本盤ではそこそこきちんとデザインされている感はありますね。

 

 

 

 

 

 

 

日本盤もディスク面のデザインは海外盤準拠ですが、色合いは日本盤に合わせた色使いとなっています。

 

実は本作は海外ではLPレコードでもリリースされていて、私も発売予告が出た時点で予約してあり、既に発送通知は来ているのですが現時点で手元に届いていません。日本盤CDはボーナス・トラックが充実していると聞いて、急遽注文したもので、結果的にこちらが先に届いてしまったのです。

更新: 2020/05/20
必聴度

前作より幅はあるが、どうしてもキラーチューンが無い

前作CWFのレビューで私が書いたのは「高水準だが、決定的なキラーチューンが無い」という内容でしたが、本作の印象も実はそれに近いものがあります。

 

今回はゲスト・ヴォーカリストとしてマイケル・マクドナルド夫妻が加わっていたりと、前作よりも話題性はありますが、今回も名刺代わりの一曲と呼べるような決定打はどうしても無いような気がします。取り敢えず、収録曲を紹介しておきましょう

 

 

01. Runaway Dancer
02. 10 Miles
03. Love In The World
04. Amanda’s Disguise
05. Between The Lines
06. Look Away (Live)
07. All That I Want
08. Restless Love
09. Price Of Love
10. Sometimes You Win
11. Love In The World (Album Version)
12. Letter To God (Unplugged)
13. Aria (Radio Edit)

 

 

11曲目以降は日本盤にのみ収録されるボーナストラックです。

 

3曲目と11曲目の「Love In The World」は同じ曲で、マイケル・マクドナルド夫妻の参加曲ですが、制作時点ではTOTOのツアー中で参加できなかったジョセフ・ウィリアムスのヴォーカルトラックが追加された完成版が11曲目となるということで、日本盤以外では完成版を聴くことが出来ません。

 

「All That I Want」は前作にも収録されていた曲ですが、前作ではほんのわずかにBPMが遅かったと悔いが残っていたということで、BPMを(ProToolsのプラグインを使って)理想に合わ、音作りもややソリッドに直したものを収録したとのことです。「Look Away」はシカゴの大ヒット曲のカバーですが、ビル自身のソロで演奏されるものともシカゴ時代とも異なるアレンジが施されています。ピーターの言葉によるとシカゴ版のテイストを残しつつ新しいものにしたとのことです。

 

 

元々ピーター・フリーステットはウエスト・コースト系のサウンドをリスペクトしていて、前作ではその要素がかなり強い仕上がりでしたが、本作はビル・チャンプリンがより深く関与することで幅広い音楽性を見せるようになった印象があります。全体を通して聴いてみると、前作同様に高水準のAOR作品と評して間違いはありません。

 

 

取り敢えず文章だけでは説得力がありませんので、ピーター・フリーステットの公式YouTubeチャンネルで公開されている収録曲を紹介しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「10 Miles」など普通に良い曲だとは思うのです。ただ、もう一息のインパクトがあればという惜しさが感じられてしまいます。

 

ビル・チャンプリンとジョセフ・ウィリアムスという大物2人による最新作ですから、この分野のファンが聴いて十分に納得できるだけの完成度はあると思います。ただ、個人的には前作同様ほんの少しだけのもどかしさと共に聴いてしまうのです。

  • 購入金額

    2,640円

  • 購入日

    2020年05月19日

  • 購入場所

    HMV

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