本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
最初はジャケ(表紙)買いだったラノベ #君死に こと、「君死にたもう流星群」。
萌え絵絵師である珈琲貴族画伯の描く少女が、空を見つめるような感じの絵と、帯に書かれた「夢を諦めない、君に」のフレーズ、そのくせタイトルに「死」とつくアンバランスさ。
文字を読むのはかなり早いほうなので、長距離列車のお供として、比較的軽い気持ちで買ったのだが、列車を降りる頃にはすっかりその世界観に惹きつけられていた。
あらすじ...というかさらに枝葉をそぎ落とし...というか完全伐採して幹だけの「雑すじ」にしてしまうと、道具立てとしては「タイムリープモノのSF」で、「恋人を事故で亡くした男が、天才科学者だった恋人の遺したタイムマシンで、彼女を救うために過去に遡る」ということになるのだが、その幹の「芯」には、硬派なメッセージが込められている。
タイムリープした男(平野大地)が出逢ったのは、彼と親しくなる前の極度の人間不信の(一週目での)恋人(天野川星乃)であり、簡単には受け入れられてもらえない。しかし、彼女が事故死する「未来」を識る彼は、その彼女に待ち受けている終末を変えるべく行動していく。その行動の過程で、あるいはともに学園生活を送る級友たちとの関わりの中で、「夢とは」「生きる意味とは」という「前の人生」で深く考えなかったことの大切さに気づかされていく...という青春小説だった。
「前サビ」の曲のように大きなイベントが最初にある構成で、星乃が死んだ世界で自堕落に朽ちていく大地の描写から始まるが、その星乃の亡くなった事件=全人工衛星が墜落させられた同時多発テロについて語られ、その世界で時空を超えて届いた彼女の「ラストメッセージ」を聴いた大地が、可能性にかけて彼女の遺したタイムマシン=スペースライター(...といっても「自分の身体の物理移動」ではなく、ある時点に残された網膜パターンに自分を上書きする方式)で、過去に飛ぶ大イベントは1巻目の前半で語られる。その後、彼女が宇宙で事故死しない未来を創るべく、行動し始めた「二周目」の世界こそ、この話の中心。
未来を識る大地は、自動車事故で杖が手放せなくなる大けがを負うはずの級友、盛田伊万里を事故から救うことになり、元の世界(一周目)ではその伊万里のリハビリに励む姿に心打たれ、生活を正して医師を目指し、後に結婚することになる友人=山科涼介が高校をドロップアウトしそうになる間接的要因を作ってしまう。自分にとって望ましくない過去の改変が起きる上に、心を閉ざしていた星乃からの信頼はなかなか得られなかったが、彼女を付け狙う謎の存在の銃口から、身を挺してかばったことで、大地は星乃との障壁を越え始める(第1巻)。
事故に遭わなかったため、当初通り留学しようと活動を始める伊万里と、医師である父親とそりが合わず、学校を退学しようとしていた涼介。本来?結婚する二人の「未来」を「識っている」大地は、元ルートに戻そうと動くが、上手くいかず、逆に伊万里からは好意を寄せられる始末。一方、星乃に関しては、親密度は上がらず、一周目のような関係は築けていない。そんな中、星乃を狙う存在が浮かびうがってくる。星乃を害しようとする実行犯「エウロパ」とそれを扇動する人物。その対決の時飛び込んできて彼らを助けたのは....涼介。ドロップアウトしそうだった彼は医者を目指し始める(第2巻)。
大地は、級友で委員長の宇野宙海が実はアイドル志望で、カラオケでアイドルグループの曲を熱唱していることを識ってしまう。一周目ではアイドルどころか、芸能関係ですらなく、堅実な公務員となる宙海、その知識がある大地は不審に思う。彼女の家で、集めたアイドルグッズを見せられ、そのアイドルへの憧れを聞かされるが、彼女の母親が「教育ママ」であり、アイドルヲタクとしての活動は、母親には秘密であるという。それがばれたとき、アイドルグッズを捨てさせないでと、諦めかけていたオーディションを受けさせて欲しいと母親に言えるように宙海を後押ししたのは大地だった。そのオーディション会場で、爆弾を抱えたドローンを使って想いを叶えようとしたのは大地を兄のように慕っていた少女、惑井葉月だった。彼女は「一周目」から大地を追ってきたのだ。一周目でスペースライトした大地は意識が戻らず、それを看取った葉月は愛する大地を追って二周目に来た。大地との対峙ののち、叶わぬ恋を悟り、一周目に還った葉月、しかし星乃が遺したスペースライターが、他人に使われていることが認識される(第3巻)。
つづくこの第4巻では、宙海といつも一緒にいる寡黙な少女、「ブラックホール」こと黒井冥子の話が語られる。
急用が出来た宙海からの頼みで、冥子も出品している同人誌販売会に売り子として参加することになった大地。マニアックでダークな内容の冥子の作品は一冊も売れなかったが、終盤合流した宙海と片付けをして帰路につこうとする大地のスマホにメール着信があった。
【私は ー 小説家になるのが夢だった】
そんなとき、今までも様々な場面で現れて、ヒントらしきモノを大地に伝えていた謎のベレー帽の少女=イオから大地は告げられる。
「私は世界のバランスが崩れるときに現れ、均衡を保つために働いている」
「だから私はバランスを崩す者を『調整』しなければならない」
そして一周目の星乃が死んだテロ=大流星群の犯人の名を告げた。
「犯人の名は『ガニメデ』」と。
そのイオが大地を連れていこうとしたとき、「『それ』にかかわるな」と割って入ったのは意外な人物だった。
「ブラックホール・・・・・・・?」
イオと冥子は旧知のようだった。イオが去った後、いぶかしむ大地に冥子は告げる。
「西暦二〇四八年の未来から来た」
◆◆◆◆◆◆
彼女は2028年、出版社に小説を持ち込んだ時に編集者から盗作の疑いをかけられる。人気作家伽神春貴、彼の書いた作品は冥子(ペンネーム春風ポルカ)の書いた作品とそっくり同じだった。そればかりか、伽神の書いた過去作は全て冥子の構想ノートなどにあるプロット、あらすじに酷似していた。
しかし、発表は伽神の方がはやい。著作でも発明でも先行者が勝者だ。そればかりか伽神は冥子の小説、38巻の原稿をすでに出版社に渡していた。絶望した冥子は伽神がタイムトラベラーである可能性を示唆される。そしてこの2017年にやってきた。
様々な調査の結果、伽神が星乃の家担当の宅配業者であり、そこでスペースライターが働いてしまったことがわかった。
タイムマシンの存在を隠したまま、伽神の盗作の罪を問うことは困難だったが、冥子は小説賞へ39巻=盗られた小説の完結巻を投稿することにより、「作者であれば自明であるこの小説のテーマ」を明示することで、疑いを晴らした。
◆◆◆◆◆◆
伽神がどうやって未来から来たのか調査するために、伽神の住居から荷物を星乃のアパートに移した大地。そのことを冥子に告げると、「リスクが看過できない」と、その中にあったライター状のものを星乃から取り上げるように忠告を受ける。
それは、超光子(タキオン)バッテリー。スペースライターの電源。
「この時代の天野川星乃が<それ>に気づくには時間がかかると思うが、念のためだ」と。
星乃のアパートに急いだ大地だったが、そこで倒れている星乃を発見する。
彼女の右目からは血の涙が流れていた・・・(時間軸の分岐が行われたときの現象)
両親を求めて過去に飛んだ星乃。大地は星乃が「いなくなった」二周目に取り残されることになる。
今度は大地が一周目の葉月の気持ちを味わうことになる。ふたたび二人は逢えるのか...
そして高校の後輩にして、宇宙から飛来したと言われるバイナリデータの解読をしたという少女=犂紫苑(からすきしおん)が、星乃の両親の発明を狙う六星衛一と接触しようとする意図は?
そのとき六星が忌々しげに吐き捨てたセリフ「調子に乗るなよ-ガラメデ」の意味は?
前巻ではアイドル志望の宙海を引き立てるモブキャラかな、と思っていた冥子がこの巻では大活躍する。盗作犯を追い詰める執念、自分の得るはずだった地位も名声も、そして人生をも奪った伽神を論破し、編集長に本物だと認められたあとに伽神に掛ける言葉が.....意外にも、優しい。
「人生は、物語なんだ」
「『自分の物語(オリジナル)』を取り戻せ」
普段、激さない冥子が伽神に語る言葉は、クリエイターとしての心の叫び
この巻もアツイ。
いろいろと役者が揃ってきた感じで、大きく物語が動く予感。
大流星群を起こした犯人は?「二周目」の星乃を大地は救えるのか...?
登場人物が増え、それぞれの絡みとシカケが多くなってきて、どう「収まっていく」のか楽しみな作品です。
※本作、1~4巻が2020年5月8日12時まで、キミラノにて無料公開中(5/22~5/29にもアンコール公開予定)
冥子の、伽神を諭す言葉が、優しく、そしてアツイ。
見た目は高校生だが、中身はオバ..人生経験豊富だからなー...
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購入金額
712円
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購入日
2019年07月25日
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購入場所
メロンブックス
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