所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストにとって「シングル」に求められるモノ。それは、広く大衆にアピールし、自分の世界を識ってもらう「名刺」でもある一方、ファンに対して現在の活動を届ける「現在活動のダイジェスト」でもあります。そのアーティスト「らしさ」と、「焼き直しでないなにか」が同時に求められますが、その塩梅は意外に難しいモノです。アーティストらしさは十分堪能できるものの、約10年ぶりのシングルとしては、新しい動きがあまり感じられなかった作品をご紹介します。
ギタリストChar。デビュー当時は、アイドル系の売り方をされ、苦労したようだが、その後自分のやりたかったギター本流に進路変更し、実力派として特にクロウト筋から高い評価を受ける。今でこそポップスにブルーステイストやファンクテイストが感じられる楽曲も多いが、それらを日本ポップス界に持ち込んだ先駆者の一人でもある。さらに、まだインターネットなどなかった時代に、大手レコードレーベルとの契約を切って、電話による通販専用レーベルを立ち上げたりした、音楽の「売り方」としても「一歩先」を行っていた彼。
そんな彼の、通販専用レーベルから大手レーベル(Polydor)への復帰シングル。
今はほとんど見なくなった8cmCDの形態で、でも、外装は12cmマキシシングルの装丁で売り出された珍しい形状のシングル。
キャッチーかつポップながら、Charのプレイも堪能できる仕上がりとなっている。
まず表題曲の「TODAY」。盟友、故Jim Copleyのドライヴィンなドラムで始まり、Charのキレのあるカッティングがリズムを創る。構成も二人のほかは、ベースとキーボード(2音色のピアノとオルガン)のみとシンプルだが、複数弦弾きも多用する饒舌なベーシスト澤田浩史と、ヴォイシングの妙で「薄く聴かせない」キーボーディスト小島良喜のおかげで、音数自体は多くないものの、ザクっと切り込んでくる説得力の高い「音」になっている。中間部のソロはさすがのCharで、テクニックひけらかしではないのに「味」が素晴らしい。
カップリングの「DAN DAN DANG」は、ちょっとレゲエ調のテイストもある、のんびりとした楽曲。面白いのは歌詞に「ひらがな」を使っていないこと。アルファベットと漢字、カタカナだけで書かれた詞が、どことなくの異国情緒を醸し出している。♪今貴方ハ何処デ/何ヲ感ジテイルノ/I woner♪♪恋ト愛ノ違イナンテ/誰ニモワカル筈ハ無イヨ♪この曲は全てCharによる多重録音だが、ラストのパーカッションを、なかなか叩きやめないのが、お茶目。
最後には「TODAY(Instrumental)」として、ヴォーカルトラックレスのミックスが収められるが、カッティングの小技が光りますなー..
このシングル、どちらの曲もCharらしい。さすが大手レーベル、「Charに期待されること」がわかっている。
ただ、いずれの曲も「今までのCharの曲のどれかにありそう」という感じで、新規性はあまりない。期待されているものを期待されている通りに出した...という感じ。Charを識らないヒトには「これが“Char”です」というイントロデュースにはなるけれど、今までのファンとしてはインディーズ時代の延長で、わざわざメジャーに戻って出した復帰初シングルとしてはちょっと肩透かし。
そのせいで、次のシングルは久しぶりに外部発注になったのかも知れないが。
-それはそれで「LET IT BLOW」という名曲だったので、結果オーライだけれど-
期待されているモノを大きく裏切らずに、購買欲を起こさせるほどの新規性は併せ持つ、そんな塩梅の難しさを感じた作品でした。
【収録曲】
1. TODAY
2. DAN DAN DANG
3. TODAY(Instrumental)
「TODAY」
カッティングのキレと相まって、Charらしいサビが聴けるが...
「どこかで聴いたような気がする」のが、ちょっと新鮮さに欠ける?
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購入金額
1,020円
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購入日
1998年頃
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購入場所
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