所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。「原点」。長く活動するアーティストの中には、世に出た頃とは似ても似つかない作品へと変わっていく人もいます。それは進化なのか劣化なのか、向上なのか変節なのか．．．デビュー以来一貫して、「ファンクとポップスの融合」を追い求めるアーティストにとっても「今」とは違う「デビューの頃」がありました。そんなアーティストの「原点」の頃のベストをご紹介します。

スガシカオ。世の一般的知名度としては、SMAPの「夜空ノムコウ」の作詞や嵐の「アオゾラペダル」の作詞作曲者としてが一番かもしれないが、J-POPシーンの観点としては、ファンクとポップスの融合者として重要だ。 ただその曲調はある振幅をもって揺れている。

そんなスガのデビュー15周年を記念して製作された、レーベル横断ベストアルバム。“BEST HIT!! SUGA SHIKAO”と題され、同時に2枚組のベストアルバムが、異なるレーベルよりリリースされた。これはそのうちの前半、“BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997-2002”。

デビューからしばらくは、「フォークファンク」とでもいえるような、生ギターのカッティングが大きく入った曲調。当時でも、時代はすでに打ち込み・エレクトロニクスで、言ってしまえば「古い」アレンジだが、このアルバムに収められている初期の曲では、スガのルーツと、古いフォーマットで新しいものを表現する独自性が見える。

「バクダン・ジュース（original）」。E♭とA♭のツーコードで曲の9割が終わる、ある意味難しいファンク。アコギとエレギのカッティングの対比がCOOL。エレキで演ってしまえば、もっとキレが出ただろうが、あえてアコギをフィーチャリングすることによって、泥臭さと粘りが出た。スガの以前のバックバンドのバンマス森俊之（キーボード）と、今のバンマス坂本竜太（ベース）の共演が聴かれる珍しい曲。この曲は村上春樹の小説にも登場する。

2ndシングルにして初期の名曲「黄金の月」。2020年の弾き語りライヴ“Hitori Sugar Tour 2020”でも取り上げられた代表曲のひとつ。特徴的なベースやファンキィなギターなど、キーボードとパーカッションを除くほとんどの楽器がスガによるもので、「スガわぁるど」が堪能できる。詞もかなり深い内容♪君の願いと／ぼくのウソをあわせて／６月の夜／永遠をちかうキスをしよう／そして夜空に／黄金の月をえがこう／ぼくにできるだけの／光をあつめて♪

「あまい果実」は、新時代ファンク。無機質なリズムマシンと、ヘヴィなギターの対比、病的な歌詞でとても心に刻まれる作品。彼女の電話の先の物音を勘ぐる男の想いは...♪あまい果実みたいに／ぼくの中で／くさってしまうよ／君へのこんなにも深い／この想いはかわってしまうんだ♪シングルとしては非常に重く、また尖っている作品。

どの曲も、「古くて新しいファンキィな楽曲」と「独自の毒を持った世界観」が表現されていて、唯一無二。

この初期盤（1997～2002）は、キティ（現ユニバーサル）時代の音源

スガワールドにはまってきたあたりで、是非遡ってもらいたい初期ベスト盤です。

【収録曲】

<DISC1>
1. In My Life
2. 正義の味方
3. かわりになってよ
4. 性的敗北

5. 夕立ち
6. Happy Birthday
7. バクダン・ジュース（original）
8. いいなり
9. 黄金の月
10. たとえば朝のバス停で
11. グッド・バイ
12. 坂の途中
13. 青空
14. イジメテミタイ
15. ストーリー
16. ぼくたちの日々
<DISC2>
1. サービス・クーポン
2. アシンメトリー
3. 夜明けまえ
4. 愛について
5. ぬれた靴
6. ひとりごと
7. これから むかえにいくよ
8. ヒットチャートをかけぬけろ（Album Version）
9. 夜空ノムコウ
10. 波光
11. あまい果実
12. SWEET BABY（Full Size）
13. ドキドキしちゃう
14. SPIRIT
15. このところ ちょっと
16. お別れにむけて

「黄金の月」