所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。歌が上手い人はジャンルを選びません。発声法の違い、呼吸法の差などで、得意なジャンルはあるかも知れませんし、声質によって合う曲/合わない曲はあるかも知れません。でも、技量のあるシンガーはそれを超え、どんなジャンルの歌でも「自分の世界」を創ってしまいます。アイドルグループ、ポップシンガー、ジャズシンガーとステップを踏んできたシンガーの「次の」ステージを表した作品をご紹介します。
島袋寛子。アイドルグループSPEEDの高域担当ヴォーカリスト。SPEEDの4人のメンバーとしては、中域担当ヴォーカリストの今井絵理子(elly)は国会議員活動の方が主軸、ダンサーの上原多香子も女優業メイン、元リーダーのHITOEこと新垣仁絵は現在芸能事務所と契約していないという中、未だにライヴを中心とした「音楽活動」をメインに据えている、一番歌に対してこだわりがあったメンバー。
彼女はSPEEDの在籍中から「hiro」の名でソロ活動をスタートさせていたが、SPEEDの一時解散(2000年)からそれを加速させ、アイドルっ気が全くないオトナの音楽
を演るまでに成長した。
ポップス系シンガーとしての活動と平行して彼女が手がけたのが「Coco d'Or」
と名乗ったジャズシンガー活動。こちらもかすかな色気漂う小悪魔的なカワイイジャズで、「アイドルの片手間」とは一線を画していた。
そして、それらが終わった後に彼女が立ったのが、故郷オキナワに縁のある楽曲のシンガーというフィールド。
それまでのhiroでもCocoでもなく、本名(出生名)の「島袋寛子」に戻して活動した。その活動の中でリリースした円盤作品としては、2020年2月現在最新のものが、アルバム“私のオキナワ”。
沖縄の民謡や沖縄にかかわりが深い人の楽曲のカバー、オリジナルも多くは沖縄にゆかりがある人に依頼して制作した「オキナワ色」濃い作品。
そこではリズム感が良く、高域に声が抜けるhiroでも、小悪魔的に囁くように歌うCocoでもない彼女がいた。
「島唄」。沖縄のポップスというと一番に頭に浮かぶ、THE BOOMの名曲。1992年リリースで、まだ四半世紀しか経っていないのに、もはや民謡レベルの定着度。カバーしているアーティストも多数いる。宮沢和史の歌う元曲は、少し小節(こぶし)?が回ったような独特の節回しで男っぽい歌唱なのだが、意外にも加藤登紀子や夏川りみ、May J.とポップス系女性シンガーのカバーも多い。寛子は出身を活かし「ウチナーグチ・ヴァージョン(沖縄方言の歌詞)」を歌うのかと思いきや、一番売れた「オリジナル・ヴァージョン」を歌う。ギターをバックに♪海よ/風よ/島よ/森よ..♪と歌われるブリッジ部分はモダンなアレンジだが、他は小節が細かく入った味のある歌い方。年齢(当時20歳代)を感じさせない味がある。
タイトルチューンの「私のオキナワ」は、そのTHE BOOMの宮沢和史の提供作品で、自身もコーラスと三線などで加わる。パーカッションが強い土着的?アレンジで、節回しもオリエンタル。この曲でも小節の回しが上手い。♪オキナワ/私の島/オキナワ/我がうまれ島/八重の波路に/夕陽がにじむ/肝かなさ/うるま島♪ラスサビの宮沢のハーモニカがもの悲しい。
シングルカットもされた「童神」は、夏川りみで有名な「ヤマトグチ(標準語)」ではなく、「ウチナーグチ(沖縄方言)」で歌う。♪太陽(てぃだ)ぬ光受きてぃ/ゆういりヨーや/ヘイヨー/ヘイヨー/勝(まさ)さあてぃ給(たぼ)り♪柔らかい耳障りのウチナーグチが心に届く。
DVDは「童神」と「ハロ」のMVとその撮影風景。「童神」のMVはこの手の曲ではわりにありがちな、画面に歌詞が映し出されるタイプだが、これがないとワカランかもね...結構「ウチナーグチ」ですワ。
アイドル⇒ポップス⇒ジャズと様々な分野を表現してきた寛子。そして最後はオキナワに根ざした歌に...
-歌わされる人から、歌う人へ-
そんな変化を感じる作品でした。
空色の紙は歌詞カードではなくて、この作品の制作・企画の逸話。
【収録曲】
<CD> [ ]内オリジナル曲提供者
1. 島唄 <THE BOOM カバー曲>
2. Nature Sound [YUKI "Jolly Roger"]
3. 私のオキナワ feat.宮沢和史 [宮沢和史]
4. 貝殻 [玉城千春]
5. てぃんさぐぬ花 (アルバムver.) <沖縄民謡>
6. 島人ぬ宝 <BEGIN カバー曲>
7. ミルクムナリ <日出克 カバー曲>
8. Stay With Me <アイランド カバー曲>
9. ハロ [NAOTO-delofamilia-]
10. 心の詩 ~愛するのが下手だから~ <我如古より子 カバー曲>
11. 童神 (ワラビガミ/ウチナーグチ/ピアノver.) <古謝美佐子 カバー曲>
12. 花 <喜納昌吉 カバー曲>
<DVD>
1. 童神(ワラビガミ/ピアノver.) -music clip-
2. ハロ -music clip-
3. 童神(ワラビガミ/ピアノver.) -music clip offshot-
4. ハロ -music clip offshot-
「童神(ワラビガミ/ピアノver.) -music clip-」
ポップスのhiroでも、ジャズのCocoでもない、寛子
さすがのヴォイスコントロール。
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購入金額
3,885円
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購入日
2013年頃
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購入場所
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