いつだって切なくて、いつだって色っぽい恋心で終わるのが宮本輝。
病気というハンデを背負いながらも女性としての希望を捨てず、おそらく彼女にとっての初恋を実らせる、読者にとって明瞭な視界を得られる下巻。
この下巻でも魅力的な脇役が存在感を示す。いい加減な克也の親友、尾辻だ。ラガーマンだった尾辻は真面目で実直、大きな心の持ち主で、志穂子と克也の絵葉書の件でめぐりあう。
結核で18年間入院していたヒロイン志穂子の病巣は確実に肺を蝕んでおり、通常の生活には未だ困難がつきまとう。そして悲しいことに誠実な尾辻に結婚を申し込まれても悩んでしまう理由があった。
結婚後に出産できるかどうか、尾辻と一緒に海外へ移住出来るかどうか。そしてどうしてもひっかかる克也の存在だった。
克也はいい加減な男ではあるが、過去に付き合っていた元彼女のために奔走する、そんな真面目さもある。嫌いになれないだけでなく、魅力的で、克也に惹かれてしまう志穂子。反対する母親と黙って見送る父親をあとにして、二人で越前岬へ旅することになった。
マイナスだったヒロインの人生の再スタートを、希望を持てる色っぽいラストで飾る宮本輝。いつだってたくさんの希望と可能性で締めくくってくれるのが嬉しい。過激なだけで中身のない作品が多い昨今、激プッシュおすすめできるのはやっぱりこの人です。
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購入金額
500円
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購入日
2019年01月25日
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購入場所
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