「芋づる式洲崎綾 Part6」。Webラジオのキャラクターの面白さと天使の歌声のギャップ萌えですっかりファンになった洲崎綾(あやちゃん/ぺっちゃん/あやっぺ)関連。12月といえばあやちゃんのバースデイということで、それに向けてこの1年で増えてきた彼女の参加した作品や楽曲、Webラジオのイベントやそれらの関連商品まで、幅広く芋づる式にご紹介するシリーズレビューの6回目。
あやちゃんの仕事は声優。声の仕事としては、王道のTVアニメ、最近比率が大きいゲームキャラクターのボイスに、ラジオ、朗読劇、ナレーション、外国のTVの吹替など様々あるが、「映画の声」というのは、かけられたコストからいうと花形?
その映画への声当てだが、今年(2018年)はアニメ版「GODZILLA(第2~3章)」の主人公ハルオ・サカキの幼少期を担当しただけだったが、2017年に演じたものには「GODZILLA(第1章)」や「トリニティセブン」のほかに、「BLAME!」の「タエ」がある。
アニメ制作会社ポリゴン・ピクチュアズとあやちゃんをつなぐことになった「シドニアの騎士」。
そこでの演技が気に入られたのか、その後同社が制作した「亜人」や、「GODZILLA」にも採用されることになるのだが、2017年に作られたポリゴン・ピクチュアズ作品「BLAME!」にも参加した。この作品は弐瓶勉の原作によるアニメ作品で、ポリゴン・ピクチュアズ+弐瓶勉ということでは「シドニアの騎士」直系ともいえる作品だが、シドニアに比べよりハード。もともと弐瓶の初の長編連載作品であり、難解なストーリーのSF漫画ながら、その世界観に魅せられたファンが世界各国にいる彼の出世作。
遠い未来、高度に発展したネット社会。ネット上には「ネットスフィア」と呼ばれる仮想社会があり、人々はそこにアクセスして「暮らして」いた。そのアクセスには「ネット端末遺伝子」というものが必要だった。しかし「厄災」により機能不全に陥ったネットスフィアは暴走し、感染症によってネット端末遺伝子を失った人類を排除し始める。都市は制御を失い際限なく増殖、階層化し、それを護る「セーフガード」によってネットに接続できない人類は狩られる対象となる。いまでは人類は都市の片隅で、セーフガードや珪素生物におびえながら、細々と生きている。
そんな階層都市を旅する男が霧亥(キリイ)。彼はいつをも知れぬ過去からネットスフィアに正規アクセスできるネット端末遺伝子を持つ人間を探して、果てしない旅を続けている。この旅の中でセーフガードや珪素生物との闘い、世界の謎の解明などがされていく...というストーリー。原作漫画は一応完結したことにはなっているが、ラストはかなり難解で、いわゆる「決着」はついていないし、「大団円」でもない。
ただ未来都市の描写が圧倒的で、二瓶のスクリーントーンをほとんど使わない墨絵のような温度感のない冷たい感じの絵とマッチして、独特の世界観を醸し出している。この世界観に打たれたクリエイターは数多いが、ポリゴン・ピクチュアズの瀬下寛之や吉平 tady 直弘もまたそうであり、「BLAME!」の映像化は彼らの悲願でもあったという。
原作漫画はカルトな人気を誇っているので、何度か映画化・映像化が試みられたがうまくいかなかった。しかしシドニアの成功などを受けて、ポリゴン・ピクチュアズによって2017年、満を持して作られたのが、劇場版「BLAME!」。実は「シドニアの騎士」第2期では、白羽衣つむぎや緑川纈がTVで「BLAME! 端末遺構都市」という番組を観るシーンがあるが、そこでの作りこみがたかだか1分ソコソコの映像としては気合入りすぎで、ポリゴン・ピクチュアズのBLAME!愛や弐瓶愛が感じられる内容となっていた。
なお、原作はかなりの長編であり難解でもあるので、映画化されたのは漫画の設定と一部の登場人物を使ったオリジナルストーリーとなっている。
電基漁師の村の娘づる(CV雨宮天)は、食料が尽きかけている村を救うため、危険区域まで狩りに出る。
そこで、「駆除系」と呼ばれるセーフガードに見つかってしまうが、それを救ったのがハンドガン形状ながら複数体の駆除系とともに都市の構造物まで消滅させる強大な武器「重力子放射線射出装置」を持つ男、霧亥(CV櫻井孝宏)。
彼は「ネット端末遺伝子」を探しているという。
霧亥はづる達がネット端末遺伝子を持つかどうか調べる(瞳孔スキャン)ために装備を外させる
...俺は...ネット端末遺伝子を持つ人間を探している....
彼を村に連れ帰るづるたち。電基漁師のリーダー格のおやっさん(CV山路和弘)を交えてネット端末遺伝子の話をした霧亥はおやっさんの古い記憶を呼び起こす。村の下にある禁区、「腐れ祠」でその名を聞いたことを。そこに向かった霧亥たちは朽ち果てたサイボーグを見つける。彼女は科学者シボ(CV花澤香菜)。
発見時のシボ。上半身しかなく、霧亥の背中に括り付けられている
大きく3形態あったシボの姿のうち、一番まともなもの(SSは電脳界での姿)
シボはネット端末遺伝子を偽装する装置を作れるという。彼女の案内で自動工場に向かい、偽装端末を作成することにした霧亥と電基漁師たち。シボは自動工場をハッキングし、食料や偽装端末を生産するが、途中でハッキングが遮断され、逆に駆除系が大量生産されることとなってしまう。命からがら村に逃げ帰った彼ら。村はシボが作った結界で守られており、セーフガードら統治局側からは隠されていたはずだったが、村の中に現れた上位セーフガード、サナカン(CV早見沙織)がそれを破壊し、大量の駆除系がなだれ込んでくることになる。果たして霧亥は、電基漁師たちは生き延びることができるのか..というようなストーリー。
あやちゃんが演じた役は「タエ」。原作にはないオリジナルキャラで、づるの親友。
タエはづるが霧亥と出会った時の狩りにも参加したが、自動工場への潜入にも同行する。その時づるとは別の班で行動中に襲われ、づるが駆け付けた時には他の班員は死亡、タエも負傷していた。しかし、実はこの時点でタエはサナカンに殺され外見を複写された後であり、彼女が「腐れ祠」にあった結界を張る装置を村の内側から破壊し、駆除系を招き入れることになる。そのあとサナカンへと姿も変え、霧亥との闘いに入っていく。
あやちゃんの担当はサナカンに変貌する前のタエの部分のみだったので、途中で死んじゃう役。なんか監督の瀬下さんに言わせると「洲崎さんは不幸な役が似合う」ってww。確かにポリゴン・ピクチュアズ系だと、敵に食われて死亡したのち異形になるシドニアの星白⇒つむぎとか、亜人では主人公の亜人永井圭を「クズ」と呼ぶ病弱な妹慧理子など、何かとまっすぐには幸せになれない役が当てられているが、この「BLAME!」が一番かわいそうかも。タエは敵(サナカン)を村に招き入れるための依り代として使われ、途中で死んでしまうし、サナカンの正体を現した後は声も早見沙織に代わるので出番ないし。シドニアでの紅天蛾での好演から考えると、サナカンもあやちゃんに演らせてもよかったかも。
映画自体は決着がつく形ではなく、電基漁師たちと別れた霧亥の旅はまだまだ続く...みたいな終わり方だったが、Blade RunnerやAKIRA、攻殻機動隊系の「バラ色でない未来都市像」の空気感がよく表現されている独特の浮遊感のある映像で、「BLAME!」の世界感(「観」ではなく)はよく表現されていたかも。
今回入手したのはBDの初回限定盤で、制作陣のインタビューやラフスケ、イメージボードなどを収めた特典ディスク、映画の後の世界を描いた描き下ろしコミックス、5つの彩色済み1/35スケールフィギュア、縮刷パンフレットが入っている。
映画の後の世界(後日譚ではない)を描いた「珪素生物の砦」を同梱
そして前売り券にランダムに添付されたフィギュア5種が彩色版で添付
インタビューが特にBLAME!愛が語られていてよかったかな。
音響監督の岩浪美和が自ら音響チューニングした映画館を表す証書と東亜重音上映ポスター
原作はまだ読み切っていないのだが、すべて読んでみたいと思わせる作品との出会いだった。
「劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告① BLAME! The Movie Trailer①」
「劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告② BLAME! The Movie Trailer②」
前半は楽しめる
づるの親友で病気の妹を抱えているタエ。妹のためにも飢餓状態にある村を何とかしたく、づるたちが霧亥と出会った食料探索にも同行する。邂逅時から最初の村の日常風景のあたりは、少しどんくさくて、足を滑らせてバッテリーを落としてしまったり、づると並んで更衣室で会話したりと、非現実性が高い「BLAME!」の世界で「日常」代表のような立ち位置。それが自動工場での戦闘時にサナカンに殺され、外見を奪われるわけだが、その時のタエの葛藤や抵抗などはなく、あっけなく「終わる」。戦闘の非情さやサナカンの圧倒的強さの描写の演出とはいえるが、そのあとは出番ないし...なので「推し的観点」では....
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購入金額
6,600円
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購入日
2018年01月02日
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購入場所
駿河屋
kaerkiさん
2021/01/06
確かプレカリアート真面目明さんがBLAMEの事を日記に書いていて、
それで知った覚えがあります。
BLAME文字ってあるんですね、ぼくは東亜重工フォントが欲しい・・・
cybercatさん
2021/01/06
独特の感触を持った作品ですよね、原作も、映画も。
深い虚無の世界に揺蕩う諦観と、それでも生きている人間の活力と...
2001年宇宙の旅に通じる雰囲気があります。