人の欲望とは果てしない。買ったその時から妥協して買うものもあるかもしないが、それがその時点で惚れ込んで買ったものでも使っていくうちに不満は出てくる。それは一部は嗜好(志向)の変化もあるだろうが、基本的には「ないものねだり」。もちろん購入当時には到達しえなかったレベルに技術の進歩などで到達した新製品が出てそれに食指が動くということもあるだろう。
でも「音」の分野、特にどうしてもアナログ方式にならざるを得ない出口系のアイテムは、現在持っているものの欠点・アラ・不足分を補う方向の製品が魅力的に映るものだ。
そしてそれは自分の耳型を取って作るフルオーダーメイドのイヤホン=カスタムインイヤーモニター(カスタムIEM)であってさえも、また。
それまでcybercatの造ってきたCIEMは、まだCIEMが世の認知を受けていない時期に作った最初の一品、今では須山補聴器(FitEar)とともに日本のCIEM界を引っ張るcanal worksがまだ社長の林さんが脱サラ⇒起業して家内制手工業?をとっていたころに作成した同社のCIEM初号機=CW-L11
を皮切りに、2ウェイ3ドライバーのCW-L11では弱く感じた低域の量と熱さを補うべく、低域にダイナミック型ドライバーを仕込んだハイブリッド型CIEM=Unique Melody MERLIN、
その二つで不足を感じた静寂度(耳への密着度)を求めてフルシリコン製のCIEM=Custom Art Harmony 8 Pro
と、その時点で持っていた機種の欠点を補う形で買い増してきた。
そしてHarmony 8 Proがその材質から来るものか、密閉度はよいものの柔らかめの音で上下伸び切っていないキャラクターであったために、4機目のCIEMとしては片耳10ドライバーの怪物=HEIR AUDIO Heir 10.A
を入手した。
このHeir 10.Aは上から下まで濃密に音が溢れ、特に低域はダイナミック型を採用したMerlinよりも「濃い」ほどで、迫力満点。またアクリル製ながら非常に遮音性が高くみっちりと耳道に密着するため、それまでHarmony 8 Proでしか得られなかったレベルの静寂性が得られることもあり、冬の乾燥する時期でもこれでいけるということで、それまでの3つのCIEMのイマイチポイントをすべてつぶした感じで、今でも大変好きなCIEMとなっている。
でもしかし。
そんなオキニのHeir 10.Aですら万能ではないのだ。
Heir 10.Aの一番の特徴はその出音の濃さ。片耳10個のバランスドアーマチュア(BA)方式のドライバーから繰り出される音の奔流は非常に濃厚な味わい。特に低域はCIEM黎明期にかつて世界で名を馳せた“低音番長”CIEM=Heir 8.Aの血を受け継ぎ超濃密。10ドラならではの出音の多さもあって、サウンドステージに隙間がないほど音が飛び出してくる。
ただその分スピード感には欠ける。そして「間の美学」というようなニュアンスは皆無のゴーインさ。その味わいはあまりに濃すぎて、時々手持ちの中では一番薄味のCW-L11に逃げたりしていたのだが...一度濃いのを知ってしまうとCW-L11の清冽さがチョット物足りない。
「もう少し上下がありながら、スピード感がある反応性が高いCIEMはないものか」
そんなことを考えていたときにコイツはやってきた。
cybercatが二つ目に作ったCIEM、MERLIN。この時はCW-L11の低域不足を改善すべく選んだため、低域にダイナミックドライバーを採用したハイブリッドタイプを選択した。高音域と中音域にバランスドアーマチュアドライバー(BA)をそれぞれデュアルで搭載し、低域をダイナミックドライバー(D)一発で担う設計。CIEMではその搭載スペースの問題などからほとんどの機種がBA型ドライバーを選択するが、MERLINは低域に音圧が稼げるD型ドライバーを採用することで熱さや迫力を表現したモデル。その音色はまさにハイブリッドというもので、繊細な高音と音量を上げれば上げるほど熱さを増す低域というまさに良いとこどりのCIEM。
そして今回選んだのは同じUnique Melodyのしかもハイブリッドタイプの5ドラのCIEM。会社もドライバ数も形式も同じCIEMだが、音的には全然異なる。
以前MERLINに求めた音は、端正なCW-L11にない「熱さ」だったり「粗さ」だったりしたけれど、今回目指した方向性は濃くて音数は多くて濃厚なHeir 10.Aのウォームさや「立ち」の緩さとは違う「スピード感」あるタイプを欲していた。
それなのにハイブリッドタイプ??
一般にD型ドライバーは音圧が稼げて迫力はあるが、BA型に比べてスピードは遅い。
それでもこのMAVERICKを選んだのはその設計思想にある。
このMAVERICKはハイブリッドタイプのほとんど全てが採用する中高域BA型+低域D型という帯域配分では「ない」。低域がBA型とD型のデュアルなのだ。それも単純に同じ帯域をBA型とD型で分け合うのではなく、クロスオーバーは4ウェイ。つまり低域を担当する二つのドライバーは異なる帯域を任されている設計。そして出音のチューニング的にはBA型>D型とBA型優勢という設定となっているという。
D型の押し出しや熱さというものをあえて抑えた、でもハイブリッドタイプというMAVERICK。
果たしてどういう音なのだろうか。
実はこのMAVERICKはまず3Dプリンターで作成したユニバーサルモデルで展開された。
本来は、大音量が鳴り響くステージ上で演奏するプレイヤーの耳を護りながら音をモニターするには一般的なイヤホンでは遮音性が低いため、耳栓的役割をもったイヤホンということでCIEMというものが生まれた。当然ながらそれには耳型を採る手間もあれば、自分に合わせたフルオーダーであるため他者の耳には合わず、中古品としての価値があまりないという問題もあった。一方でCIEMのハウジングの大きさによる搭載ドライバ数の自由度や、多くのCIEMが対応しているリケーブルによる音のチューニングなどは一般的リスニングにも求められる要素なので、カスタムIEMを基としながら、一般的イヤーチップが装着可能なユニバーサルIEMという機種が最近出てきた。
*以前からあるユニバーサルIEM、たとえばSE215 Special Edition
などと最終的な立ち位置は似通っているが、汎用イヤホンが出発点か、CIEMが出発点かで180°進化の方向が異なる。
メーカーにとってもCIEMで得られたノウハウが応用できてより多い購入者が見込め、購入者側としてもカスタムと違って試聴機の音が完成品と異なると言うことはないし、中古市場としても成立するユニバーサルIEMは双方利があるので、最近大きな勢力になっている。
そんな市場に向けてUnique Melodyが2014年に投入したのがMAVERICK(ユニバーサル版)。これは同社にとって(同時発売の「MASON」とともに)初めてのユニバーサルIEMで、BA型×4+D型×1の片耳5ドラを奢りながら売価約10万とCIEMに比べるとリーズナブルな価格で高い人気を博した。
それはMERLINというCIEMの初期に存在感を放った代表的なハイブリッドタイプのノウハウが注ぎ込まれていたり、同時発売の片耳12ドライバーのMASONに比べると手が出しやすい価格でリリースされた事だったりもその要因だったかもしれないが、このMAVERICKが(MASONも)日本の市場をよく研究したモデルでもあったためだろう。
このMAVERICK(とMASON)はUnique MelodyのGlobalサイトにはその名がない。
実はこの機種は日本企画。Unique Melodyは各地の正規代理店と組んで、「その地に求められているもの」をリリースしていくという商品展開を行っている。日本では正規輸入代理店のミックスウェーブと組んで初のユニバーサルIEMをリリースしたというわけだ。
しかしこのユニバーサル版MAVERICKの出来が良く、CIEMにも同様な音を求める強い要望があり、ユニバーサル版からカスタム版を起こす形でMAVERICK custom、通称「マベカス」が2015年にリリースされた。
もちろんユニバーサル版からカスタム化するにあたってはそこはメーカー、単にリシェル(中古CIEMや市販イヤホンのハウジングを壊し、自分の耳型で作ったカスタムハウジングにドライバーを組み込む作業)するのではなく、カスタムでユニバーサルと同方向性かつ同等以上の音が得られるよういくつかの改良やチューニングを施したらしく、カスタムでしか得られない音作りになっているという。
今回2016年5月29日に名古屋は栄のナディアパークで行われた「ポタフェス2016 in 名古屋」で購入を決めたのだが、ポイントはその試聴対応をしてくださったのが、ミックスウェーブの宮永賢一さんだったこと。
この人こそUnique Melodyの日本独自仕様のユニバーサルIEM、MAVERICKとMASONの企画者であり、マベカスの音決めをしたそのひと。当初単にユニバーサル版MAVERICKをリシェルしてカスタム化したところ元の音とは全く違う音になったらしく、半年以上かけてドライバー構成の変更まで含む仕様の模索とチューニングを行い、製品化したとのこと。
その会場での試聴でお話を伺うと、学生時代ご自身でドラムスを演奏されていたことやMAVERICKの設計ではヘヴィメタのバスドラ連打がきちんと分離されることや一枚一枚異なるシンバルの音を描き出せる事を重視したモニター寄りの設計を行ったということを話していただけた。
たしかにこのマベカス、ドラムスが気持ちよい。その気持ちよさは腹にズンとくるバスドラムの音圧やスパーンと空に抜けるスネアの一発というような「判り易い気持ちよさ」というよりは、ドラムプレイの細かい表情が「解る」モニター系の気持ちよさ。ハイブリッドタイプとしてイメージする低音の厚さやモリモリ感は皆無で、ともすればドーーーーーーーーーーッ!と切れ目なく聴こえたりする打ち込みのバスドラ連打でもアタック強めでドッドッドッドッドッドッドッドッとキレよく聴こえる。迫力より分離の良さ、スパンっと切れるキレの良さでリズムを感じる心地よさ。ベースはアタック中心でいわゆる低域の「量」はないがグルーヴはきちんと感じられる。中域もドラムスが生きる音造りだが、ゲートがかかったスネアが面で埋め尽くすようなイメージはまるでなく、ノリの前後もよくわかるタイトなもので一番秀でているのはクローズドリムショットとハイハット。そして高域が美しい。いわゆる虚空に抜けそうな...というほどの抜けはなくて「超」高域はソコソコなれど、中高域あたりが素晴らしい。宮永さんが目指したというシンバルの音の違いがよくわかり、ほとんど同じ位置にあるシンバル2枚を連打するようなフレーズでもどちらを叩いているのかがよくわかる。また女性ヴォーカルが明瞭。ただこの「明瞭さ」は生真面目なクリアさで、「色気」とか「艶」はあまりない清純さ。
全体的にスピード感にあふれるモニター系の音色で、Heir 10.Aの濃密でコク深くこってり系の音色とは違う「和」の領域。でもそれは障子を通した光や墨絵のような鈍いフォーカスのぼんやりとしたものではなく、スパッと切れる日本刀の世界。
まさに「Heir 10.Aにないもの」が揃っていた上に、価格的にもポタフェス協賛企画の「大」特価販売を行っていたので、両側で2万弱となるウッドフェイスプレートを奢ることにしてもさらに標準価格より安価だったこともあり、注文することにした。
納期3ヵ月とも聞かされていたが、実際には40日程度のスピード作成で、以前のMERLIN作成時には旧正月がらみで結構納期がかかったのとは対照的。そして付属品関係の質が大幅に上がっている。
MERLINのときは比較的大きめの紙箱に、指輪かカフスボタンなどを収めるようなカパッと開くクラムシェル型の?容器に入ったCIEMとUnique Melodyの社名が入ったアクリル製オブジェ、金色のユーザーズカードと清掃用ブラシにフランジチップ(たぶん他者へ試聴用に貸し出す時に使うもの)が並んだ中華的センスの外観だったが、今度はスクリューキャップの円筒形金属ケースにコンパクトに収められ、とても質感が高い。
付属品は掃除用ブラシ、クリーニングクロス、航空機用プラグアダプター、3.5mm⇒6.3mm変換プラグに上記ケースと言う形で余分なものは付いていない。
外観的にはシェルの造りは美しい。フェイスプレートに使ったDalbergia(ヒルギカズラ)は色見本より若干黄色かったのがイメージと違ったが(一般的にDalbergiaはもう少し紅い)、今まで持っていなかったウッドプレートはすっと通った杢目が美しい。
一方ハウジングをライトスモークとしてカナルカラーを左を透明に抜き、右を赤く色づけて左右を判り易くしようと思った色指定は、特に右の透ける赤(Rose Red)が薄すぎてパッとしない感じに。もう少しガッツリ赤入れた方が効果があったかも。
耳型採取も慣れてきたので、こちらも耳型が大きくなるような口の位置で採取してもらったし、「ややきつめに作成を」とお願いしていたが、整形自体はHeir 10.Aより若干ゆるく(小さく)、特に外耳寄りの部分がすこし余裕がある造りなので、密着性、遮音性という意味ではHeir 10.AやHarmony 8 Proに譲る。MERLINも耳道奥のカナル部分はきつかったが外耳部分は少し緩かったので、このハウジング側が緩め傾向というのはUnique Melodyのイヤモニ作成時のクセなのかもしれない。それでもMERLINやCW-L11よりは密着度が高いので、耳型採取時のコツの把握やきつめ作成指示が活かされているのだろう。
来るなり試聴してみたが、当初はダイナミックドライバーが全く動いていない感じで、音も硬かったので約1週間、ミクDAP
に繋いで袋に入れて段ボール中で朝から晩まで鳴らして⇒バッテリー切れ⇒充電⇒鳴らし込み再開を繰り返して熟成させた。
その後聞いてみるとスピード感あふれる音にふくよかさを増した低域と硬さが取れた高音域をもつCIEMになっていた。しかし、ダイナミックドライバーはあまり主張しておらず、「いわゆるハイブリッドタイプ」らしくない音。
このハイブリッドでありながらラシくない、マベカスことMAVERICK customはどんな音楽に合うのだろうか。
いつも通りハイレゾ系楽曲ということで「音の良さ」を探るcybercat的リファレンス楽曲、吉田賢一ピアノトリオの「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」(PCM24bit/96kHz)。
この曲はジャズトリオならではの「音源の近さ」と「空間の間」でリアリティが感じられるか否かと演奏者の熱やプレイの阿吽の呼吸を感じられるかがポイントだが、モニターライクなMAVERICKでは後者は最低限の空気の流れしか感じられない。一方、リアリティはものすごく、特にハイハットの音とリムショットがめちゃリアル。どういう角度でスティックのチップがハイハットのどの位置に当たっているのかというのが想像できそうなタッチによる微妙な音の差や、クローズドリムショットで鳴るスネアサイド(裏側)のヘッドの音まで感じられる「実物感」。ドラマーならば目の前にセットが描き出せそうな音。
ヴォーカルのリアリティやベースのグルーヴを感じる楽曲、ハイレゾの“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”(PCM24bit/96kHz)から宇多田ヒカルの「First Love」。
Heir 10.Aではステージ中央下にドンと居座るベース音に当時16歳のヒカルの震える声が乗っていたが、MAVERICKではベースのグルーヴに身を任せるというよりは、ヒカルの声を中心に他の楽器が寄り添う感じの音場構成。この曲でもリムショットが入っているが、このリムショットの音もめちゃくちゃよい。ただ「Never Let Me Go」ほど支配的ではなく、あくまでヒカルの声が中心。ベースはボディの音というよりはアタック中心になるので若干グルーヴは硬くなる。
一転して音飽和系の打ち込みバスドラ連打型楽曲で結構美味しくいただくのが難しいアイマス曲は、ヴィーナ洲崎こと洲崎綾の「ヴィーナスシンドローム」。
なんにせよこの曲はドカドカ鳴り続ける飽和気味のバスドラの音のいなし方と、シュワショワ入っている刺激的なSEがハイハットを喰わないかがポイントで、あやちゃんの声が沈むようだと乗れないのだが、ともすればそうなりがちな難しい曲。それがMAVERICKで聴くと低域の端正さが圧を弱め、バスドラも分離よく過剰ではない。ムチのようにしなる感じのハイハットは優勢で前に進めるグルーヴを形成しているが、あやちゃんの声は良く聞こえるので、ぶつかってはいない。
おなじくあやちゃんが、透き通る声で押す沁みる曲、「空」は写真集(ファンブック)
付属CDから。この曲もあやちゃんの声が真芯にいて、その周りに楽器が配される音場。ただここまでエモーショナルな曲だと、声に色がつかないのが少し物足りない。ベースも若干引っ込むのでうねりのようなグルーヴが薄れ、没入感は薄い。ヒカルの「First Love」と近似方向の楽曲だが、さすがに当時ヒット街道驀進中だったヒカルの楽曲とは金のかけ方がが違うのか、バックが「薄く」感じてしまう。このCIEMがモニターライクな造りというのがマイナスに働いた感じ。
曲をそのまま聴くのもノレるが、細かいテクニックを堪能するのも楽しいテクニカル系フュージョンは、JINOこと日野賢二をゲストに招いた「RADIO STAR」をT-SQUAREのセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”
から。この曲はかなり分析的に聴くことになってしまう。本来JINOのベース&ラップフィーチャリングの曲だが、ベースはモニターはできるがアタック中心で薄いので聴くべきはドラムスの坂東慧の足技とのタイトな絡み。一方左右に広がるシンバルは爽快で、生シンバルならではの音色の多彩さは、打ち込みものでのシンバル音色が限られていることによる「造りモノ感」とは無縁の気持ちよさ。
古典ロックの金字塔Eaglesの「Hotel California」はEaglesの同名アルバム
から。このピラミッド型のロック王道の音場形成、下に肉がついていないマベカスでどうかと思ったが、驚くほどよい。もともとRandy Meisnerのベースラインが高めの音を使ったラインで、下がやや薄くてもさほどに印象が変わらないのと、制作時期的に超高域もない音構成なので、全体的には破たんがない。それでいてティンバレスの音のリアルさは際立っており、さすがドラム中心チューニングCIEM!
「ど」クラシックではないが、シンフォニー系楽曲として交響アクティブNEETsの“艦隊フィルハーモニー交響楽団”
から勇壮な「鉄底海峡の死闘」。低域はやはり薄く、地を這うような低域担当弦やティンパニの迫力は他に譲るが、ここまで楽器が多いとモニター系らしく分離よく聞こえるのが有利に働いて、中低域~高域の各楽器の存在感が強く、押し出しが弱いということはない。盛り上げたところでのシンバルの一閃は空間を切り裂き迫ってくる感じが強い。クラシックでチューニングを行ったという迫力のHeir 10.Aとは違う方向性だが、これはこれでアリ。
一言でいうと現在持っているCIEMの中では性格は最もモニター寄り(モニター寄り/リスニング寄りというのはいくつかの切り口があって、同じ機種のレビューでもレビューアーによって「モニター寄り」と言われたり「リスニング寄り」と評価されたりとブレがあるが、cybercat的区別としては、そのCIEMやイヤホンが「積極的に味付けしてでもメーカーの考える‘よい音’に聴かせる」のがリスニング向けで、「虚飾・脚色を取り去って、優れたソースはその良さをダイレクトに伝え、それなりのソースは飾らず現実を伝える」のがモニター向けと判断している)。
そして最大の特徴はスピード感。反応が早いため「キレが良い」し「分離が良い」し「色付けが少ない」。
【5CIEMの主観的比較】
CIEMは最初に造ったCW-L11以外はすべて(低域側の増強にスポットをあてたためもあって)ウォーム系のキャラクターだったけれど、それらとは全く方向性が違う切れ味。ただ、曲の細部までわかるので、いままで隠されてきたものまであぶりだすことになり、アラがあるとわかってしまうところはある。
音楽に浸るというよりは音に対峙するCIEM。このCIEMで音楽を「楽しもう」とすると、ソースにも高いレベルを要求する...そういう意味でもMAVERICK=異端者/一匹狼なCIEMです。
【cybercat所持CIEM比較】
【仕様】
型番:UM MAVERICK (custom)
商品名:4way/5driver Custom In-Ear Monitor
ドライバー:Low x 2(Dynamic x 1 + BA x 1), Mid(BA) x 1, High(BA) x 2
インピーダンス:51Ω
再生周波数:10Hz~19,000Hz
感度:111dB @ 1mW
【代金】総額157,980円
請求総額:163,380円
※ポタフェス名古屋開催記念特価
オプション:
・Faceplates(W2:Dalbergia/18,080円)
・Colored Canals (L=Clear,R=Rose Red/0円)
インプレッション採取代金:5400円
【今回購入時のタイムチャート】
2016/5/29 e☆イヤホン名古屋大須店で契約、その場でインプレッション採取
2016/7/9 製品到着連絡
2016/7/10 製品受領
【緊急取材!】Unique Melody Maverickカスタム開発秘話を”アノ方”に取材してみた!
伸びがさほどにあるわけではないが、音色の描き分けが上手い。
超高域に消えゆくほどの伸びは感じられないが、シンバルの一枚一枚の音の差が良くわかる。そのため、小編成のジャズコンポなどでは、スティックの当たり方の差まで描き出すが、打ち込み楽曲でクラッシュシンバル音が左右一音色ずつしかない場合、それも如実にわかってしまう。
とてもリアル。虚飾なくリアル。
中音域のパーカッシヴな音はとてもリアル。特にクローズドリムショットはその立ち上がりの金属音(リムの音)、音のボディとなる胴鳴りの金属胴スネアと木胴スネアの差、余韻となるスネアサイドのヘッドの音まできちんと描き出す。ハイハットもシンバルのどこに当たっているか、スティックをどう当てているかがよくわかる。また中高音の表現力が高いので、女性ヴォーカルは良く聴こえる。「前に出る」のではなく、「ヴォーカルを中心に曲が構成される」という感じだが。
量で評価するなかれ、質で語れ。
低域の量は多くない。また「重」低音はない。ただキレッキレなのでダンスミュージックなどビートを聴きとりたいものには有用(ビートを感じたいもの...ではないところに注意)。ベースはアタックが「立つ」ため、バスドラとの絡みを堪能できる。テクニカル系楽曲や打ち込み系楽曲ではこのスピードとアタックが活きる。
場は広くないが像はシャープ。
ステージは広くはなく、やや近鳴りタイプ。ただ各楽器がソリッドでにじみがないため、狭いなかにも凝集した「世界」を魅せる。
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購入金額
157,980円
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購入日
2016年07月10日
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購入場所
e☆イヤホン名古屋大須店
北のラブリエさん
2017/11/07
なんとか一つくらいIEMがほしいもんです。
harmankardonさん
2017/11/07
(言葉になりません)
いいですね,MAVERICK!
私もMAVERICKⅡが欲しいのですが...
ところで,ユニバーサルモデルとカスタムモデルで,同じ音ですか?
cybercatさん
2017/11/07
cybercatさん
2017/11/07
がじおさん
2017/11/08
しかし、かなりの金額のものですが、数もすごいですね!(^^;;;
cybercatさん
2017/11/08
CIEM熱はもはやビョーキかも....(^^ゞ