所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。デビューシングル。通常そのアーティストを一番良く顕す曲がピックアップされます。そしてインパクトの強さ、時代性などが合わさり選曲されていきます。上手さよりも個性が強い方が、そして美しい曲よりもアクが強い楽曲の方が印象に残りやすいモノです。歌声としては決して美声ではなく、歌い方も発声の上手い方ではないアーティストが、それでも周囲に強烈に自分を印象づけたデビューシングルをご紹介します。
スガシカオ。先日デビュー20周年を記念して今まで関係のあったアーティストらを集めて「スガフェス!」を開催し、大成功を収めたシンガーソングライター。メジャーデビュー15年でメジャーとの契約を切り、インディーズで自分を見つめ直した後、2014年メジャーから再デビューしてこのフェスを成功させた。
今では「ベテラン」と言う言葉が似合うほどの立ち位置の彼だが、その最初の一歩はメジャーデビュー盤の本作。
ファンキィでフォーキィでえぐる詞という初期のスガがすでに確立している。
「ヒットチャートをかけぬけろ」。山崎まさよしのアコギのキレの良いカッティングと久保田利伸や杏里のレコーディングやツアーでノッリノリのベースを聴かせる中村キタローのうねるグルーヴに載せて、少しノリ切っていない声で♪ぼくのいやしき魂よ/ヒットチャートをはしりぬけ/君の明日にとどくがいい/いつの日かきえてしまってもいい♪と歌うスガのデビュー時からの斜なスタンスがいっそ心地よい。
「サービス・クーポン」。1曲目の山﨑と中村を除けば、基本的にスガのマルチプレイで構成されたこのシングルに色を添えているのが菊地成孔
のサックス。打ち込み臭がプンプンと漂う実験的な感じの曲で、サビへの入り方が通常の感性じゃないのが明確。この退廃的な感じのするヘヴィファンクにダーティな感じの菊地のサックスが絡みつく。それは「ソロ」というよりは効果音っぽい感じで、メロトロン調の原始的な感じのサンプリング音を多く使ったこの曲を盛り上げる。
一転して「ひとりぼっち」は出だしは♪大好きな人は/幸せにやっていますか♪と語るフォーキィな曲で、多重録音されたギターとリズムマシンを中心として囁くようにスガが歌う⇒⇒⇒それが、ラスト(アウトロ)でリズムインしたとたんダーティでヘヴィな曲に一転!♪君もぼくも/とてもとても/ひとりぼっち/空も海も/永遠に/ひとりぼっち/愛の歌も/やがてやがて/ひとりぼっち♪と一度しかない大サビで声を絞り出すように歌う二面性。導入と終末が天と地ほどに違うこの曲は、「通し」で聴かないと彼の世界が掴めない。
スガは今は十分に「上手い」と言えるシンガーだが、この時はテクニック的には惹きつけられるという程のものではない。ただ、その詞は、曲の世界の創り方は、まさに「引きずり込まれる」エネルギーに満ちている。完全にチャート域外だったこのシングルだけれど、ガッチガチに尖った原石。この頃の尖り方は尋常じゃない。それは若さ故なのか?まだ世に出ていないと言う焦りのためか?
そんなことを感じながら浴びるような大音量で聴いて、自分の中の獣を呼び起こしたくなるような曲です。
【収録曲】
1. ヒットチャートをかけぬけろ
2. サービス・クーポン
3. ひとりぼっち
「ヒットチャートをかけぬけろ」(↓一見動画なさそうだけど、観られます)
上手いシンガーを聴きたいンじゃないんだ。
荒削り。だがそれが良い。
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購入金額
500円
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購入日
2010年12月01日
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購入場所
yahooオークション
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