モノには「定番メーカー」というのがあり、「ここのメーカーならハズレはないだろう」という誰もが認める王道メーカーがある。しかし時に全くの無名の、もしくはそれまでその分野であまり実績を残していないメーカーに突然変異的に素晴らしいものが生まれることがある。
SoftBank SELECTION。その名の通り、通信キャリアのSoftBank(ソフトバンクコマース&サービス)が展開するiPhoneをはじめとするスマホ用アクセサリーを取り扱うブランド。ケースやモバイルバッテリー、スタンドやキーボードなど手掛けるカテゴリーは広く、そのオンラインショップでは他のブランドのものに交じってオリジナルの商品が売られている。
そのなかのイヤホンカテゴリーではBeatsやONKYOなど定評のあるオーディオブランドも扱うからか、今まではオリジナルブランド「SoftBank SELECTION」としては「お父さんイヤホン」といったデザイン特化のものか、ワイヤレスヘッドセットのような機能>音質といったものが多かった。そこに生まれた突然変異が「SE-5000HR」。2015年末発売のこの商品は市場での評価がきわめて高く、さまざまなオーディオ雑誌などでの「2016年の1万円以下のイヤホンベスト3」などという特集には、だいたい顔を出しているようなハイパフォーマンスイヤホン。
造形としては、この下の非ハイレゾイヤホン「SoftBank SELECTION music piece SE-1000」に近い感じの耳側がやや開いた釣鐘というか「銅鐸」のような形状だが、「金管楽器をモチーフにした」ということで、金管楽器の先の「朝顔部分」のイメージなのかな。ケーブルの出し方も凝っていて、ハウジングサイドから直接ケーブルが「生える」のではなく、ハウジング端から一旦絞り込まれてからケーブルの末端に横から接続するという、大型金管楽器(ユーフォニアムやチューバなど)のピストン部に至る配管?ようなイメージの仕組み(Floating Cabinet 構造)。これに金属感がある部分とシックな塗りの部分とのツートンカラーが組み合わされ、すごく美しい。ただ、この形状のため少しハウジングが長くなることと、金属筐体(アルミ)のため少し重い(実測16g)ので、少しフィッティングは耳の形を選ぶかもしれない。
カラーはホワイトのイヤーピースにシルバーのボディ、ケーブル末端処理の金属素材部分がホワイトゴールドで軽やかな「ゴールド」、ブラックのイヤーピースにスモークグレーのハウジング、末端処理は暗めのガンメタのシックな「ブラック」、イヤーピースはブラックながら、ピンクゴールドの末端処理と珍しいワイン~ブラウン系のハウジングを持つオトナっぽさ漂う「カッパー」がスタンダードカラー。
そこに2016年10月、本品発売後約1年目にして追加された1000台限定カラーが本品、「ネイビー」。ピンクゴールドというよりもう少し赤めの新品10円玉に近い金属部に、鈍く光る濃紺のハウジングと紺のイヤーチップという組み合わせで、粋。
またスマホ用品販売ブランドのSoftBank SELECTIONらしく、マイクつきリモコンも備える。これは1ボタンながら、押した回数と長押しか否かで、通話と音楽の再生/停止/早送り/巻き戻しなどのすべての操作が網羅できるもの(iOSの場合)。
とりあえず週の初めに到着したので、いまやエージング専用機の気配すら漂うみっくみくウォークマンとともに段ボール箱に放り込んで熟成させることおよそ100時間、その週末評価した。
*試聴環境はAK120BM+
直挿し。
吉田賢一ピアノトリオの生録りハイレゾ音源(PCM24bit/96kHz)“STARDUST”
の「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」は、高域ちょっとキツイかな...あまり左右に広がらないのに右チャンからフットクローズドハイハットにライドシンバルレガート、リムショットがスティックの鳴りも含めて近い音場で在る。ただベースはやや腰高ながらも結構大きめに聞こえる。生ベの倍音構成がちょうどいい感じにはまっているのかな。
一番聴き込んでいる曲の一つ、宇多田ヒカルの「First Love」はハイレゾ(PCM24bit/96kHz)の“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”
から。これはバランス良いかも。広さもさほどに広くなく、あまり尖ったところがないけれど、生ギターのタッチノイズなどのリアリティは残しつつも耳障りと言うほど大きくないし、カッティングの大きさも絶妙。途中から入るベースも存在感在りつつ過剰じゃない。ストリングスも上に伸びてゴージャス。そしてヒカルの声が常に優勢。このイヤホン、この曲でチューニングしたのか?というほどベストバランス。
CDから起こした曲(FLAC16bit/44.1kHz)は、日野'JINO'賢二がラップとベースを担当したファンキィジャパニーズフュージョン、T-SQUAREの「RADIO STAR」をセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”
から。この曲ハイハットとバスドラのキレが気持ちいい!ベースは低音弦のプッシュはもう少しガツンと来て欲しい気もするが、プルの弾けが良い。イヤホンのキャラクターからシンバルやEWIの鮮やかさは最初っから予想付いていたけれど、意外に良かったのがストリングス系の音のシンセの音。特にピアノソロのバックの音などは今まであまり意識したことがなかったんだけれど、このイヤホンのバランスだと割に前に出てくる。
歌うまい女性声優あやちゃんこと洲崎綾の色気「表現」溢れる(色気そのものがあるとh.アワワワ)全力歌唱、デレマスのソロ曲「ヴィーナスシンドローム」
は、もともと4つ打ちのバスドラが唸る「下寄り」「ビート寄り」のアレンジだが、このイヤホン、ムチでしばくようなしなりが感じられる上手い打ち込みの16ビートのハイハットやリバースサンプリングのシンバル音を左右に散らしたSEなどが目立ち、ずいぶん上寄りの印象に変わる。ただ、ザンネンなのは人声より上の領域が出張っているため、あやちゃんの声も少し引いてしまって、目立たなくなるのが今一歩か。この曲、美味しくいただこうとすると結構難しいな。
Eaglesのロックスタンダード「Hotel California」は同名アルバム"Hotel California"
から。比較的高音域が伸びているイヤホンの割には、イントロはさほどにギターのアルペジオが目立つ感じはしないのだが、ハイハットの刻みと生ギターのカッティングが常に大きい感じ。そしてスネアはボディある音とスナッピーの弾け方が気持ちいい。この曲で一番良いのはスネアじゃないか?左右の音場はさほど広いわけではなく、耳から耳の間に位置するのだけれど、何というか上に広いといか、各楽器の立ち位置が明確というか、あまり重なった感じがなく明晰。
最後にオーケストラ系楽曲として交響アクティブNEETsの「艦これ」オーケストラアレンジの第一弾“艦隊フィルハーモニー交響楽団”
のラストを飾る激しく勇壮な「鉄底海峡の死闘」。ティンパニの深みはないが中低域を埋めるストリングスは上手く表現されている。ただやはり華は高音域で、ブラスの響きやシンバルの通り、スネアのスナッピーの音などが刺激的で、高音域のストリングスのボウイングの音や和風な調べを奏でるフルートのブレスノイズなども良く判り、実在感が感じ取りやすい。上に抜ける音場で映画館の音響のような立体感も感じられる。
全体的にいうとハイハットやシンバルの音が美しく、左右の広さはないが各楽器の分離が良いので縦の広さのようなものが感じられて聴きやすい音作り。そのハックリクッキリキラキラな音色はとてもわかりやすい「ハイレゾ」。人々が「ハイレゾ」と聴いてイメージしやすい音で、たしかにウケたの分かるわ―。
ちょっと金属ハウジングが重く大きいので人によってはフィッティングが悪いかもしれないけれど、そうでないなら買ってソンはない(断言。
cybercat的には現在長距離移動時にはiPhone6 Plusに仕込んだライヴのm4vファイルを見ていることが多いんだけれど、その場合iPhoneの「ビデオ」アプリの曲送りがスクリーン上のボタンになるのでタッチ不良で上手くいかないことがある/2時間くらいのライヴのファイルになると上のバーでは1曲分だけ進ませる(戻す)ということが困難、ということもありリモコン付きで高音質の本品を使うことがほとんど。
「音」の良さで買う気になったけれど付加価値もあった品。iPhone6s系までのイヤホン端子有のユーザーならぜひ一度ご賞味あれ?
【仕様】
ドライバーユニット:ダイナミック型 φ8.0 mm
再生周波数帯域:5Hz~45kHz
インピーダンス:12Ω±15%
音圧感度:94dB±3dB/mW
最大入力:5mW
プラグ形状:φ3.5mmステレオ4極ミニプラグ(L型)
コード長:約1.2m (Y型)
質量:約15.9g
保証期間:6ヶ月
付属品:イヤーピース(XS・S・M(装着済み)・L) ×1、ポーチ、取扱説明書/保証書
SoftBank SELECTION SE-5000HR紹介ページ
誰が聴いても美しいと感じるようなわかりやすい美音
造りが上手く、クリアでキラキラ感がある(金属ボディの鳴りもある?)。ハイレゾ(=再生周波数が上に伸びている)というフォーマットで、想像しやすい音作りで期待を裏切らない。
高域に倍音成分を持つものは特に美しい
スネアやリップノイズといった基音は中域ながら高域に広く倍音の分布があるものは美しくリアル。曲調的にはやや静かなタイプ、空間に「間」があるものの方が聴かせる。
低音の「響き」があるような重厚さはなく、若干薄め
コンテンポラリーミュージックではバスドラやベースのアタックはきちんと聞こえるのでアコースティック系でないとダメということはないが。
左右よりも上下?の広さを感じる
左右の広さはイヤホンの外から聴こえるというほどではないが、縦方向の広さを感じる不思議な鳴り方。定位の良さが上手く働いているのかもしれない。
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購入金額
8,877円
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購入日
2016年10月18日
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購入場所
SBセレクションオンラインショップ
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