ルーンクエストという名作RPGを、簡略かつ初心者に分かり易く一冊に纏めようとした意欲作、それが、ルーンクエスト90’sでした。
しかしながら、その抜粋は、ルーンクエストの世界を知り尽した人のアンチョコのような様相を呈しており、少なくとも、ルーンクエスト本編に触れたことのない人間には説明不足が目立ちました。
その90’s発売の一年後に、登場したのが、このドラゴンアトラスです。
遅れてきたガイドブックですね。
二冊一組にするか、「ルーンクエストが良く分かる本」というようなタイトルでこちらを先に出すべきだった。
90’sは、本編のエッセンスを残しつつ、如何に簡略化するのか、苦心した事は想像に難くないのですが。
苦心したからといって、素晴らしい作品になったのか、というと、それは別のお話になりますね。
ルーンクエストという作品の世界、設定を、全く知らない人間がいるということに対しての視点が欠けていた、或いは気づかなかったのが、問題だったのではないか、と考えます。
ドラゴンアトラスを読んでから、90’sを読むと、キャラクターの信仰についてのロールプレイを如何にするべきか、分かり易くなりますし、ドラゴン・パスでの冒険者たちの振る舞い、そして扱いについても把握しやすくなると感じました。
特にルーンクエストとその派生作品である90’sにおいて、プレイヤーキャラクターを含めた登場人物は特定の神を信仰して、その戒律に従って行動する存在です。
その神の解説が「風の神です。太陽神を殺して世界の支配者になりました。また、混沌の神とは相容れません」というような簡潔さで、「混沌の神で有名なのはグバージ、彼は倒されましたが他の混沌の神は未だ神々と争っています(他の神の名前は省略)」となっていて、果たして、ロールプレイは成立するのか。
いや、それ以前にゲームマスターが物語を紡げません。
これは、本当に困りものでした。
ルーンクエスト(RQ)は、世界観、舞台となる国、土地の来歴などとシステムが深く結びついた作品です。
それは、すなわち、世界観の理解が出来なければ、ルーンクエストを楽しむことは難しいという事になりますね。
比較されることが多い、ライバルな作品としてあげられる、ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)では、サプリメントブックなどで確かに、舞台となる国家や世界が追加されてはいます。
しかし、基本ルール上では、ドラゴンと神がアンタッチャブルな存在として恐れられているという事は示されているものの、土地や、国の記述については特に指定されていなかったように記憶しています。
能力やシステムが背景世界のストーリーとはそれほど強力には結びついていないのですね。
魔法の呪文を一つ使うにしても、
・D&Dでは、呪文の効果と名前を知っていれば、「マジックユーザー」として振る舞う(演技)事が出来る。
・RQでは、呪文の力を与えてくれる神の事を知らない状態では、「使い手」として振る舞う事は難しい。
信仰による制約(極論化していますので実際とは異なる場合があります)と、
・D&Dでは「クレリック(聖職者)」は戒律で刃物を使えない。という事に気を付ければロールプレイ可能。
・RQでは、信仰する神の戒律はまちまちで、普段の言動にすら気を付けないとロールプレイとして破綻する。
例:フマクトという神は、死を与える力を使って人の祖先と太陽神を殺した事により、死を司る神となった。その為、信徒は、蘇生術などの奇跡を使用して死から復活する事は許されない。
この神の信徒を演じるならば、パーティの誰かが死んだ時に、蘇生する行為自体に嫌悪と反対の意思を示さないといけない事になります。
自分が蘇生された場合は、施術者を殺して自殺する事、とも言われている上に死を恐れる行動(戦闘時に傷が深いので癒しの術を受ける為に防御を繰り返すことなど)は禁止とされているので、戦士として優秀な信仰ではあるものの、扱い難いものになりますね。
こういった神を信仰する上での制約、或いは得られる力についての解説も、このドラゴンアトラスに初めて詳細に記されたものが多かったりします。
プレイヤーキャラクターが冒険する時代までの、歴史についても、神々の関係性、それを信仰する者たちの勢力や争いも含めて、必要なレベル位には説明がされていますので、ルーンクエスト世界に浸る事が出来るようになったといっても過言では無いです。
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購入金額
1,887円
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購入日
不明
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