日本では2014年2月に公開された「ラッシュ/プライドと友情」
レイトショーで観覧しました。
自分史ですが、レース映画として圧倒的にナンバーワンです。
物語は、実在の天才ドライバー ニキ・ラウダとジェームス・ハントの関係を人間ドラマとして
きちんと描く中で、オイルやタイヤが焦げる匂いを漂わせます。
ニキ・ラウダ
1949年生まれのオーストリア人
裕福な家庭の長男として生まれましたが、
家族はレーサーになる彼の希望を承服しませんでしたので、自らの手腕で資金を集める必要がありました。
銀行から融資を受ける際に、自らの生命保険金を担保としたり、様々な苦難を経て、フェラーリ総帥のエンツォに認められるまでに。
セルフプロデュース能力に長け、レースの現場に「テスト」という概念を深く落とし込んだ才能は
現在では当たり前の生き方をいち早く具現化したものとして高く評価すべきものです。
ワールドチャンピオン獲得
その翌年もチャンピオンシップをリードしていたラウダでしたが
レース中のアクシデントで車両火災が発生し、頭部の大火傷のみならず、肺の中はFRPボディが発する有毒ガスでひどい状態に陥ります。
そして病室には牧師がおとずれることに。
まさに生死の境をさまよいますが、ラウダの鋼鉄の意思は酷い痛みを伴う治療に耐えます。
そして火傷の傷も十分に癒えないまま、事故の6週間後!に復帰します。
その時ラウダの左側の外耳は失われていました。
ポイントランキングトップのラウダを3点差で追うのは英国人レーサー・ジェームス・ハント。
その年の最終レースは日本。 舞台は富士スピードウェイ。
レースが始まっても降り止まない雨に、ラウダは僅か数週をスロー走行した後自らハンドルを置きます。 リスクが大きすぎると言い残し。
その結果、3位に入賞したジェームス・ハントが逆転王座を得た年が1976年でした。
ジェームス・ハント
1947年生まれの英国人
彼も裕福な株式仲買人の家庭に生まれましたが、やはり家族は彼がレーサーになることに反対します
しかし貴族であるヘスケス卿をパトロンとしてから、運命は良い方向に転がります。
ラウダとは違う方法でレース界でその名を轟かせるジェームス・ハントですが、私生活のそれもラウダとは全く異なるもの。
映画ではそのような表現はありませんが、まさにセックス&ドラッグを地でゆく生き様だったようです。
口伝ですが、同期に活躍していたジョン・ワトソンという英国ドライバーが居るのですが、ハントに
「何故彼はワールドチャンピオンに成れないのか?」という質問に対して
「奴はアイリッシュ(アイルランド人)だからさ。」 と答えたそうです。
思ったことをそのまま言葉にする彼らしい逸話。
ラウダとハント
対象的な2人の関係を、富士スピードウェイのレース結果、そしてハントが迎える早すぎる死
それを描いた映画なのですが、ラウダもハントも、対照を成す存在を得たことによって
それぞれの魅力が際立ったのではないでしょうか?
藤波辰爾と長州力
王・長嶋と江夏豊
アイルトン・セナとアラン・プロスト
北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手にしても、彼と対を成すライバルが存在しないことが
災いしているかもしれません。
意外にも彼が一面を飾るスポーツ紙の売れ行きは良くないのだとか。
個人の感想ですが
ニキ・ラウダとジェームス・ハントの関係やレース結果は、すでにファンの知るところですので
私が上に書いた内容をもって、映画のネタバレとはならないはずです。
知っていたはずの結果の裏側、人生の機微、愛憎の移り変わりを、映像で堪能する邪魔にならないと思います。
ラッシュ・プライドと友情
その映画のどこが気に入ったのか? 個人の感想を書いてもよいでしょうか?
ニキ・ラウダがそのあと家庭を築く相手であるマルレーヌと出会う場面があるのですが、彼女所有のプジョーをラウダが運転するんです。
メカに精通するラウダは、すぐにプジョーの不調に気づくのですが、やがて立ち往生します。
偶然ランチャのベルリーナで現場を通りかかったレース好きのイタリア人は、それがラウダだと知り
ヒッチハイク成功。
イタリア人はラウダにハンドルを委ねます。
ラウダはタウンスピードでランチャを転がすのですが、彼らにせがまれると果敢にアクセルを踏み込む下りがありました。
この時、ラウダのペダル操作がフューチャーされるのですが、このシーンが素晴らしい。
クルマと会話するのが楽しいと感じるクルマスキーのおものだちならお分かりいただけると思います
昭和の80馬力800キロ 100馬力1トン 130馬力1300キロのMT車を楽しんだ方ならおわかり戴けると思います。
低いギアを選んで、床が抜けるほど強くアクセルを踏み込んでも、それを制御できる性能の車をお持ちでしたか?
その時、ほぼアクセルを戻さずギアをあげますよね。
ドカンとアクセルを踏み込んだ後、やはりドカンとブレーキを踏みました。
フロントディスクローターとパッドのクリアランスが広がってしまうので、その状態を探りつつ
ドカンとブレーキを踏んだでしょ。
まさにラウダの操作はその感じなんです。
一見乱暴な操作に見えますが、ランチャは滑るようにイタリアの田舎道を駆け抜けます。
イタリアの若者2人は大興奮していますが、マルレーヌの顔は恐怖に引きつりました。
当時のF1はウイングカーと称される強烈なダウンフォースでコーナーを駆け抜けることが可能になり始めた時代だと記憶していますが、映画を楽しむ我々は、それを体験したことはありません。
私はプレステのグランツーリスモで、その片鱗に触れました。
F1は150キロで走るより250キロで駆け抜けたときのほうが遥かに安定しています。
もちろんそれに伴う強力な横Gはゲームでは伝わりませんが、自重を遥かに上回るダウンフォースを得たマシンは、遠心力に抗して旋回速度を高めます。
だからでしょうか? 映画はF1のレースシーンでのみCGを使い、燃料が空気と混ざり圧縮され燃焼しタイヤに伝わる様子を表現しています。
あの感覚を正しく観客に伝えることが困難だからだと判断したのが理由だと思うんです。
対してエントリーカテゴリーでのマシンにはウイングなどが装着されていないので、そのトリッキーな挙動は私達の想像上にあります。
レース中の鍔迫り合いが「身近に」緊迫感を持って楽しめたのは下位カテゴリーレースでした。
初めて逆上がりができた子供の感覚を伝えるために、校舎の様子から青空の様子、そして自分の後方にある壁の様子から足元の地面が見えて、また校舎が見えるまでを映像化すれば、多くの観客の共感を得ることができると思いますが、内村航平選手の目線を再現しても、それは彼の体験を疑似体験することにつながらないと思うんです。
この辺りのさじ加減は、映画監督・スーパーバイザーの力によるものでしょう。
クルマスキーのおものだち全員にオススメしたい名作です。
因みにレイトショーで楽しみましたが、手元にディスクはありません。
一度観ただけです。
人生は短い そう考える私は、同じ映画を望んで二度観ません。
集中して一度だけ観ます。 縁があれば、作品に力が有れば、二度目もあると考えております。
本来は映画の半券を登録すべきかもしれません。
でもご興味を持っていただいた方がリンク先で購入しやすいようにと思い、DVDを登録しました。
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購入金額
1,200円
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購入日
2014年02月09日
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購入場所
MOVIX京都
bibirikotetuさん
2016/10/25
どんなに説明しても、あの爺さん誰??状態だったうちの奥様も
さらにF1の世界、その裏にある世界を妄想し楽しめるようになったようです(笑)
フェレンギさん
2016/10/25
おおそうでしたか〜。 それは良かったです。
普段は家内と一緒に映画に行くのですが、これはおひとりさまでした。 残念。
今週に予定しているスタートレックは一緒に行けそうでございまする。
checkerflagさん
2016/10/25
懐かしいですねえ。
我々はレースの表面だけをカッコいいと見ていますが、その裏には金、女、名声 などなど、そこにたどり着くまでに色んなドラマが有るんでしょうねえ。
まあ、ドライバーの全員がすべてそんな経験するわけではないでしょうが。
レースも同じですが、ドラマを感じますね。
フェレンギさん
2016/10/25
もし未だなら、ぜひ御覧くださいね。
クライマックスの富士スピードウェイの駐車場にに初代セリカが並んだ様子が再現されているところも、オールドファンには堪らないところ。
世界中のフリークが撮影に協力したんだとか。
外国勢から「将軍」と呼ばれたとか呼ばれないとか、長谷見さんの勇姿もうまく表現されていたような記憶があります。