えくしみえむ氏制作の、X68000XVI専用増設メモリ。

俗に〈子亀〉として知られるメモリの互換品。

今じゃ信じられない話だけど、XVI用の増設メモリは三種類あり、

・マザーボードに装着する、増設メモリソケットを装備した〈CZ-6BE2A（通称:親亀）〉

・CZ-6BE2Aのソケット上に装着する〈CZ-6BE2B（通称:子亀）〉

・背面IOスロットより実装する10MHz動作メモリ基板〈CZ-6BE4/CZ-6BE4C〉

・・・と、装着方法によって型番も形状も異なる仕様となっていた。

ちなみに、上の製品から順に買わないと認識出来ない。

本体基板に載っている2MBメモリと合わせた12MBフル実装を行う場合、CZ-6BE2Aが59800円、CZ-6BE2Bが54800円（一枚あたり）、CZ-6BE4Cが98000円もした（同等性能の旧型番たるCZ-6BE4だと138000円）ので、フル実装時のメモリ価格は本体価格の70％を超える（XVIは33万）。

親亀に子亀実装した状態。左上の1番ピンとマークを合わせて装着する。

なお、何でこんなアホみたいに高いかというと、当時のPC自体が高額だったこともあるが、XVI用に採用されていたDRAM自体が「特殊で高額な代物」だったことが原因。

この特殊DRAM、Static Column Mode DRAM（SCM-DRAM）といい、アクセス速度向上のためにDRAM内に1ページ分のバッファ用SRAMを持つという、非常に「構造難解にして高コスト体質（SRAMの価格はDRAMの十倍くらい高い）」な代物だった。

ちなみに、コイツが出た直後にPC98やDOS/V用のSIMM用高速DRAM（Fast Page Mode DRAM）が市販されたので、PC用では「X68000以外での採用事例が殆どない」そうだ。

んで、このSCM-DRAMの特徴として、SRAM内に格納されたデータについてはCAS信号固定して連続読出し出来るというものがあり、この機能を使用しているときはガチに高速（SRAMアクセスなんで当たり前だけど）なんだが、DRAM側格納データを読み出す場合は、FPS-DRAMと差がない。

そして、ここからが重要なのであるが、実はこのSCM-DRAMの特殊機能は「上位機であるX68030では使用されているものの、XVIでは利用されていない」という点。

つまり、XVI用のメモリなら入手困難なSCM-DRAMを使わずとも、FPS-DRAMで代用出来る。

この盲点を利用したのが、この互換メモリである。

現在でも、比較的安価に入手可能なFPS-DRAM（東芝製TSOP）を使用することで、当時の純正メモリ価格のおよそ1/20以下という驚異的なコストダウンを達成。

これを使えば、現在は入手が極めて困難なXSIMM等の互換メモリを探さずとも、親亀さえ持っていれば（製作者であるえくしみえむ氏は、親亀のほうも同様の互換品を配布している）かなり安価にXVIにメモリ増設出来るのである。