レビューメディア「ジグソー」

原作コミックを読んで、改めて映画製作者の想いを知る

こうの史代原作 この世界の片隅に 

 

キネマ旬報ベストテンをはじめ、数々の映画賞を受けたアニメ映画「この世界の片隅に」の原作コミックを入手しました。

できるだけネタバレ無しを心がけて、原作コミックの良さをお知らせしたいと思います。

更新: 2017/01/26
満足度

これからなら映画〜原作〜映画の順がオススメ

公開2日目の11月23日に劇場で鑑賞しました。

 

最初にTBSラジオ火曜たまむすび内「町山智浩のアメリカ流れ者」でこの映画を知りました。

 

町山さんが力を込めて解説して下さる映画は全て見たくなるのですが、放送中に流れる音声にただならぬ力を感じました。

また主演女優が能年玲奈改め「のん」さんであることに起因しているのか、上映館が極めて少なく

家から何軒もの映画館の前を通り過ぎながら出かけなければなりませんでしたが、ZIGSOW友達のぴょんきちさんからも「初動が大事だから、行けるなら行ってあげて」との声に後押しされました。

 

町山さんが

「映画はテンポよくどんどん進むよ」

「鳥や昆虫、花や海、空の雲のありようにも意味があるよ」

「戦前戦中の暮らしを解説無しで描くので、それ自体を知らないと判らない表現があるよ」

「いろんなことが映画には隠されているよ」 

 

とにかく画が素晴らしい。 音楽も素晴らしい。 

のんさんの演技力・のんさんが演じるすずさんその人自体がすばらしい。

 

と力説なさるので、それに負けないようにと意気込んで鑑賞しました。

 

人の情報収集力や記憶力なんてたかがしれていますので、集中するあまり、映画自体を楽しめていないかもしれません。

 

主題歌の「悲しくてやりきれない」は想像とは違って冒頭の平和なシーンでだけ流れましたが

それ以外の楽曲を覚えていないのです。

でもそれは映画と音楽が見事に融合していたからだと解釈してます。

少なくとも、「ロッキー」や「ニュー・シネマ・パラダイス」のように、楽曲を涙腺やアドレナリンに作用するスイッチとして利用していないことは確かでしょう。

 

脳のクロックを最大限に高めて鑑賞しましたが、よく理解できないシーンが残りました。

あれ?あの時あそこに居た人は誰? あの人があそこに居たということ?

あれ? がいくつも残ってしまいました。

 

帰宅後人に尋ねたり、Webで調べたり。

後日、町山さんの有料コンテンツを拝聴したり。

私の周りにも明らかに誤解、曲解、思い違いをしている人がおりました。

 

でも そのままでも良いかも しれません。

少なくとも 良い映画だったね と感じて居られたなら そのままでも良いかもしれません。

 

実は原作コミックで描かれている、ある重要なエピソードが映画では語られていませんでした。

でも

そのエピソードが完全に無かったことにされているわけではなく、その事実があるからこその

証拠が画面に現れます。 あるからこその感情のゆらぎが表現されています。

 

映画を繰り返し繰り返し鑑賞しても、その欠落したエピソードにたどり着くことは困難だと思います

原作コミックを読むことで理解できるようになりました。

 

それを知ることで、初見時にはあまり気にならなかった「小さな疑問」が「やはり意味があったのか」に変化します。

 

上映中にとても座り心地が悪くなるシーンがあるのですが、なぜそのようなことがあったのかを

理解できるようになります。

 

また原作コミックでは語られていないセリフが足されていることを知ることができました。

原作者が伝えたかった事を大事にしながら、監督が足したり、変更したセリフがありました。

それは「反戦」というキーワードで括られるセリフです。

 

それが足されたから、引かれたから その結果 よりプロパガンダ映画に近づくとか

反戦映画に近づくとか  左翼的になるとか右翼的になるとか の問題ではありません。

 

原作コミックの99%は白黒表現ですが、一部カラーの表現があります。

そのシーンは映画の中で、最も印象的なシーンの一つとして再現されています。

 

すずさんの描く「ゴッホのような絵の世界」にすずさんが居るそのシーンは とても素晴らしい。

また原作コミックを読み始めると すぐに映画製作者が原作者に敬意を払っていることが判るシーンがあります。

それを見た時には不意に涙が溢れました。

 

映画鑑賞中は涙腺が緩むことは無かったのですが、2度めの鑑賞時にはオープニングから危ないかもしれませぬ。

 

1巻の内表紙 幼いころの 浦野すずだった時代

 

2巻の内表紙 北条家に嫁いだすずさん

3巻の内表紙 すずさんの周りに掲載されているモノたちが時代を表現しています

 

広島は江波の海 瀬戸内海にある波頭をうさぎで表現している 大事な 象徴的な絵です

ものがなく生活は困窮を極め、いつ爆弾の雨が降るかもしれない 

その日々を

精一杯 懸命に 明るく 生きた人々

 

 

周作はなぜ 祝言の席でごちそうに箸をつけなかったのか

名指しで嫁取りに来ていながら、迷った時に道を教えてくれたすずさんに気づかないわけは

無筆のりんさんが大事に持っていた名札は何の切れ端? 誰が書いてくれたの?

水原が北条を尋ねた夜の出来事

壊滅的な被害を受けた朝日町ってどのあたり?

お腹の子は? 引き取る事になった子は? 

バケモノって何?

 

興行収入が10億円を越えましたので、監督が落とした部分を足した完全版が公開される予定だと

伺っております。

完全版でそれを知るも良しですが、原作コミックも映画に負けず素晴らしいので、完成を待つ間

ぜひお楽しみ下さい。

  • 購入金額

    2,100円

  • 購入日

    2017年01月頃

  • 購入場所

    Amazon

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    2017/01/25

    しかし国産映画、大当たりが続きますね。
    国産だけでも「シン・ゴジラ」、「君の名は。」、そして一番心配していたこれが一番大きな衝撃に。

    原作者の別の本は読んでいたので期待はしていたのですが、ここまで反響があるとは思っていませんでした。

    それはこの話のあとの話になるのですが、それだけでもかなり胸を突くものでした。

    これはどうにか見なければなりませんね。
  • フェレンギさん

    2017/01/25


    ぜひ ぜひ ぜひ でございます。

    君の名は は見ていないのですが、シンゴジラはとても気に入ったので、多くの人にオススメしてました。

    この世界の片隅に は好きすぎて、シンゴジラのときほど手当たり次第にススメてません

    今回のレビューを書くに際しても、普段より慎重に取り組みました。

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