レビューメディア「ジグソー」

In Memory of Our Beloved Drummer Jun Aoyama, Alex

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。バラードを上手く歌うというのはシンガーにとって大きな目標です。ビートの効いた曲や速い曲は声量や滑舌、リズム感である程度「ごまかし」が効きますが、バラードは簡単ではありません。正確な音程はもちろんのこと、長音が多いためそれに表情をつける抑揚の技術、スローなテンポであるゆえ求められる息の長さ、ビートが効いていないがために逆に求められるリズム感...そんなポイントをすべてクリアし、J-POPのバラードの女王と呼ばれているアーティストの想いのこもった作品をご紹介します。

MISIA。言わずと知れたJ-POPの女王。今年デビュー14年を超えたもはやベテラン、と呼んで良いキャリアだが、デビュー当初から堂々とした歌いっぷりだった。黒人のヴォイストレーナーからトレーニングを受けたと言われるその声量、表現力、そして正確なピッチと深い声でバラードが最も受けが良い(cybercat的には粘るソウルフルなリズムがある曲の方が、彼女の真骨頂であると感じているのだが、どうも一般的にはそうらしい)。

そんな彼女の最新アルバム(2014年5月現在)。
前作“SOUL QUEST”

と3年近くも開いたこの11枚目のオリジナルアルバムは、「HOPE & DREAMS」と「君の太陽になろう」、「Re-Brain」の3曲を除けばおおざっぱにはバラード~ミディアム系カテゴリーと言って良いものであり、歳を経てますます深みに磨きがかかる彼女の声が堪能できる。

「僕はペガサス 君はポラリス」はテレビドラマ「S -最後の警官-」の主題歌として書き下ろされた曲だが、いわゆるバラードと言うよりもっとドラマチックで、もっと壮大。歌詞も男女間のものと受け取っても良いし、同性の間のものと考えても解釈できる内容となっている。♪I believe in love/君は僕の/この胸に輝くポラリス/I believe in you/駆けてゆける/ああ/風になり/ああ/光になり/I believe in love I found you on my way/僕はペガサス/君はポラリスさ/この道を照らしてる♪重見徹のピアノの旋律に種子田健のベースで静かに始まり、徐々にFUYUのドラマチックなドラムとともにゴージャスなストリングスがかぶさるこの曲は朗々と歌うMISIAの美声に酔える。サビの前に1小節2/4拍子を挟むアレンジがさらにこの曲を盛り上げる。

つづく「蒼い月影」はコーラスアレンジの妙。サビでの女性コーラスが1拍目、3拍目の裏に入る♪Ah♪という合いの手?が、よく動く種子田のベースラインと中野勇介のミュートトランペットの物悲しいオブリガードと折り合ってジャジィな薫りを醸し出す。

元気系?楽曲の再右翼、「君の太陽になろう」は、基本Gomiによる打ち込みチューンで、ちょうどライヴの〆のあたりで演られることが多い「We Are The Music」のようなバスドラ4つ打ちでハンドクラップが通しで聞こえるようなハッピーでノリノリなソウル調J-POPなのだが、サビのヴィブラフォン音色のソロがいい感じのジャジィなテイストを付け加えていて、打ち込み中心の楽曲の冷たい感じがしない。

残念なのはDVDとCDが別で外装のビニールがなくなるとバラバラになること。
残念なのはDVDとCDが別で外装のビニールがなくなるとバラバラになること。

初回特典のDVDもそうだが大編成のストリングスが生で入ってゴージャス。溢れるやさしさが感じられる造りだ。

星空のライヴでの大編成ストリングスをバックに歌うMISIA
星空のライヴでの大編成ストリングスをバックに歌うMISIA
河口湖ステラシアターでの「Candle Night」のシーンも幻想的
河口湖ステラシアターでの「Candle Night」のシーンも幻想的

実は彼女は昨年末大変な試練に遭った。彼女のツアードラマーとして永く彼女のステージを支えたAlexこと青山純の突然の死。

特にバラード曲でのMISIAへのサポートで定評のあった青山との親交は深く、それだけに彼女の悲しみもまた深かった(このアルバムにも彼との最後のレコーディングとなった「Jewelry」が収められている)。

青山サン、私また頑張るよ、そう言っているような作品。
青山サン、私また頑張るよ、そう言っているような作品。

でも彼女は歩みをやめなかった。
新たな曲で我々に感動を与えるステージに戻ってきた。
しかも彼女が青山と一緒に演るのが好きだったというバラードを多く含んだこの作品で。
「僕はペガサス 君はポラリス」のレコーディングでは「青山さんっていうポラリスを胸に抱いて」臨んだという。

歌詞カードの最後に大きく“In Memory of Our Beloved Drummer Jun Aoyama, Alex”と綴られたこの作品は、彼女の青山に宛てた手紙なのかも、しれません。

【収録曲】
<CD>
1. HOPE & DREAMS
2. 僕はペガサス 君はポラリス
3. 蒼い月影
4. アイヲシルセカイ
5. Miss you always
6. 魔法をかけたのは君
7. Daisy
8. Jewelry
9. Especially for me
10. 幸せをフォーエバー
11. One day,One life
12. 君の太陽になろう
13. My pride of love
14. Re-Brain
15. DEEPNESS (*1) 【Bonus Track】
16. Back In Love Again (*1) 【Bonus Track】
<DVD>
1. 僕はペガサス 君はポラリス (*2)
2. HOPE & DREAMS (*2)
3. 幸せをフォーエバー (*3)
4. Daisy (*3)
5. 僕はペガサス 君はポラリス (Music Video)

*1:from 星空のライヴVII-15th Celebration-Hoshizora Symphony Orchestra@Nippon Budokan
*2:from 星空のライヴVII-15th Celebration-Hoshizora Symphony Orchestra@Yokohama Arena
*3:from Candle Night Fes@Kawaguchiko Stellar Theater

「僕はペガサス 君はポラリス (SPOT)」


参考:最新音楽ニュース ナタリー「MISIA 音楽の翼で羽ばたくペガサスに」

  • 購入金額

    4,298円

  • 購入日

    2014年04月13日

  • 購入場所

    フタバ図書

19人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • きっちょむさん

    2014/05/18

    知り合いが2年くらいMISAのLIVEバックダンサーで踊ってました。

    個人的には、J-POP界では一番歌が上手い人だと思ってます。
  • cybercatさん

    2014/05/18

    >知り合いが2年くらいMISAのLIVEバックダンサーで踊ってました。
    わお!w

    >個人的には、J-POP界では一番歌が上手い人だと思ってます。
    評価が一次軸の分野でないので「一番」かどうかは判りませんが、少なくとも最っ高ーの集団を形成する一人だと確信します。

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