所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。以前は、街で、テレビで、ふと耳にした曲を調べるのは大変でした。インターネットというような巨大な情報プールがない時代、記憶に残った歌詞の一部を元に人に訊きまくったり、ジャンルなどでアタリをつけて「レコード」屋でジャケットでカケにでたり...でも今はインターネットがそんな「出逢いを」取り持ちます。最近ある出来事で、インターネットの妙を感じたアーティストのインディーズデビューアルバムをご紹介します。
森広隆、シンガーソングライター。ファンク~ポップのあたりに濃いところがあるという意味では、久保田利伸やスガシカオ、FlyingKidsのあたりのカテゴリーなのだが、ビートが前に行っていると言うよりはギターと詞が来ていて、一番近いのはスガシカオかな。でも、スガの昏さはあまり感じない。JamiroquaiやCharが好き、というあたりでcybercatとは似た感じのところに音楽の根がある。
そんな彼は、2001年にメジャーデビューし、3年ほど活動したあと、インディーズへ拠点を移す。少し間が開いたので心配したが、2008年にシングルを、2009年にアルバムを
届けてくれ健在ぶりを示してくれた。
2014年現在の最新作は“いいんです”。
どちらかと言えば短髪のイメージが強かった森がロン毛でゆったりと歌うのは時の流れを感じるが、でも彼の芯にはやはりファンキィなものが宿っている。
それが表されたのがメジャーデビューの数ヶ月前に、リリースされたデビューシングル曲を含むインディーズミニアルバム。TOWER RECORDS系のbounce recordsよりのリリース。メジャーデビュー、およびセカンドシングルの曲(こちらはメジャーリリース時には再録音された)が収められ、どちらかというとクロウトウケする彼の曲をイントロデュースする形になっている。
「ただ時が経っただけで」。メジャーデビュー曲であるこの曲はキャッチーな出来ではないが、ちょっと古めの感じのモコッとした音作りの紺野光広のベースライン、シンバルの録り方がアングラっぽい関口源八のドラムに乗せて、ギターを弾きつつ森が歌うと言う形。ねばるギターのカッティング、時々挟まれるファルセットの高音...21世紀というよりはブラックが全盛期だった頃の風合い。う~んシ・ブ・イ!
続くは「ゼロ地点」。実はこの曲がcybercatが彼と出会った曲だが、地下鉄の構内でサークル状に配されたレールの上をカメラがまわり、演奏するバンドの周囲を360°周回しながら映す印象的なPVのバックに流れていたメジャー2ndシングル版ではない。メジャー盤は森のギターと紺野のベースにドラム担当は波多江健、キーボードは河内肇という布陣で、キーボードの持続音でソリッドな中にもメロディアスなスピード感が感じられる出来だったが、本作のヴァージョンは関口のドラムと大里和生のギターが唸るザクッとしたギターバンド仕立ての曲となっている。♪意味/素性/世評/状況/捨て去った先のゼロ地点/好きか嫌いか/そこに理由なんてありはしないんだ/衝動が示す自分方向に/ただ進むだけなんだ♪ちょっと外国詞っぽい言葉遊びのようなフレーズだが、こちらのテイクの方がヴォーカルの録り方も歪んだような力強さがあってファンキィかつロッキン!
「Fuzz Master」はその名の通りACE TONEのFuzz Masterというギターエフェクターを彷彿とさせるヴァリッヴァリにつぶれたエレキギターのリフが印象的な曲。刻むリズムとファズギターと掛け合うコーラスが懐かしい。本曲(と次の曲)はメジャーアルバムにはテイク違いも収録なし。
メジャーデビュー盤と比べるとテクニックを弄していなくて「シロウトっぽい」ともいえるが、その若さが熱さが、「イロく」な雰囲気がイイ感じ。
アツイ、そしてウマイ歌声を届けるアーティストだったのだが、時流には乗ることなく万人に識られるという事はなかった。そんな彼は現在インディーズで変わらず活動中。以前はインディーズに潜ったアーティストの消息は掴めない事が多かったが、現在はインターネットという便利なモノがある。そこでTwitterなどで動向を追っていた。
そうしたら...先日彼のTwitterでリツイートされたピアニスト河内肇とアンジェラ・アキ共演のつぶやきをさらにリツイートして転送したところ...自分のフォロワーに「森広隆」の名がw
十余年前、深夜テレビで耳にした「ゼロ時間」、耳に焼き付けて歌詞を殴り書きし、探して探してCDショップで見当つけて買ったアーティストから、フォローされる..時代の妙を感じた出来事でした。
【収録曲】
1. ただ時が経っただけで
2. ゼロ地点
3. Fuzz Master
4. 雨は止まない
「ただ時が経っただけで」
疾走感・燃焼度・爆発力、全てにおいて、濃い
メジャーデビュー前の森の全力疾走・全力歌唱。全てが説得力とエネルギーに溢れている。
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購入金額
1,200円
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購入日
2002年頃
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購入場所
TOWER RECORDS
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