レビューメディア「ジグソー」

「ひょっとしたら愛にはほんの少し狂気が必要なのかも知れません」

本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。

ここのところ連続してご紹介しているMarion Zimmer Bradley(マリオン・ジマー・ブラッドリー)の連作、ダーコーヴァ年代記。時系列的には終章。ダーコーヴァ年代記を連作として書き継いできた彼女が、一度話を完結させたのが本作(その後読者と出版社からの要望でダーコーヴァ史を遡って書き継ぐことになるが)。ダーコーヴァという特異な世界、そこに住む現住種族、それが地球世界との交流で変わっていく。望むと望まざるに関わらず。その変わってしまう世界は果たして「故郷」なのか?

今までの連作とはやや異なる風合いで物語は始まる。二人の男がとあるビルの最上階を訪ねる。その二人の男にはなんの特徴もない..訪れたのは惑星投資会社、別名「惑星壊滅サービス」。地球帝国に対して独立しており、市場を開放していない星、つまりある種鎖国状態にある惑星は、そこに魅力的な産物や資源があろうとも帝国は開国を無理強いすることができない。しかし、一部の投資家などからするとそれらの魅力的な商品を扱うことで利益を上げたいという欲求がある。そこで、その標的となった星の経済を壊滅させ「自発的に」地球帝国に市場を開放させるよう仕向ける商売。彼らとこの後ろ暗い商売の取引を行ったのがアンドレア・クロッスン。彼女はビジネスとして数多くの惑星を「公開」させてきた。ダーコーヴァもそのひとつ、になる事だろう。でも今はダーコーヴァと呼ばれているその星は、彼女にとっては想い出の星であった...

落日のダーコーヴァ七領土。そこを独り行く若きハスター家領主レジス。かつてダーコーヴァをラランの力をもって治めた七貴族も今は見る影もない。オルトン家は絶え、エルハリン家とライドナウ家の当主は暗殺された。そしてレジスの2人の幼い息子も...

次々と狙われ、命を落とすコミンたち。それはダーコーヴァをダーコーヴァたらしめているラランを持つ氏族が絶えるという事を示していた。レジスは旧知の地球人医師ジェイスン・アリスン(あのトレイルマン熱の抗血清を求める旅

でともに旅をした)の助けを借り、全宇宙からラランをもつもの=テレパスをまねく計画を立てる。呼びかけられたのはテレパスを用いてイカサマをする賭博師、他者の苦痛を感じてしまう医師、宇宙船事故で非常事態用パブルスーツに数ヶ月独りで閉じ込められて「気が狂った」宇宙飛行士、そして異性とみれば誰彼なしに秋波を送る嘘つき娘...さらにダーコーヴァからは呼びかけに応じてシャーラの事件

で活躍した「訓練されたテレパス」デシデリアがかくしゃくたる老女(!)として、そして森からは...伝説の雌雄同体の種族チエリが協力を申し出た。彼らの調査・検査をし、なにが彼らをテレパスたらしめているのか調べようとするレジスとジェイスン。それにテレパスとしてあつめられた被験者でもある医師、デイヴィッド・ハミルトンが協力して調査していくうちに、テレパスのあばずれ娘ミッシイがチエリであるケラルと同じ脳波パターンを示すことを発見した。身体をあらためると雌性が優性であるものの、雌雄同体であることがわかった。彼女は喪われたチエリの一族なのか?

一方ダーコーヴァの危機はさらに大きなものになっていく。不作に続いて度重なる山火事。資源の少ないヒトの居住できる地域が狭いダーコーヴァにあって、火事への対処は何にも優先する事項。それがあろうことかこの火事は放火だというのだ。戦争より、親の敵よりも、消火が優先されるような土地柄、あえて「自分で火をつけて回る」正常な人間がいるとは信じられないダーコーヴァ人。地球人で「すら」しないその行為にはアンドレアの陰がちらついていた。

そのアンドレアは仕上げにダーコーヴァに降り立ち、森を枯らす致命的なウイルスを大地に埋める。それは彼女の生まれた世界に、異生物が満ちあふれた世界に、彼女を見捨てた世界に、彼女の喪われた子供の記憶に引導を渡すことだった。

研究を進めるデイビッドとケラルは親密になっていくが、雌雄同体ながら雄性の形態をとるケラルに惹かれていく自分に嫌悪感と戸惑いを隠せないデイビッド。しかし同様な気持ちを抱き、戸惑うケラルの事を知り、いとおしく思うようになる。そんなとき、レジスの子に対してまたしても襲撃が試みられる。からくも襲撃を阻止したケラルだが、襲撃者を殺めてしまったこと、自分の種族にとってはかけがえのない「子供」という存在を害そうとするアイデアがあること自体にショックを受け自分の殻に閉じこもろうとする。デイビッドはそんなケラルを救おうと自分で禁忌としていた行為に及ぼうとするが...

ダーコーヴァの未来は?レジスたちの運動は実るのか?アンドレアとは何者なのか?そしてデイビッドとケラルの愛の行く末は?
絶望的な孤独の元、アンドレアは二面性を...
絶望的な孤独の元、アンドレアは二面性を...
SF、ファンタジーの衣をまとってはいるが、大胆に生と性の問題を扱った作品。

変わりゆく世界にあって、「愛」という普遍のモノを語った作品です。
  • 購入金額

    430円

  • 購入日

    1987年頃

  • 購入場所

19人がこのレビューをCOOLしました!

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