カバーの仕方もいつも通りの演奏というわけではなく、ビッグ・バンドスタイルのものであり、どこかのジャズバンドが演奏したのかと思うような内容です。もっとも、シカゴ自身も活動初期はブラス・ロックといわれるジャズとロックの融合型のようなジャンルのバンドでしたので、このアルバムのようなスタイルは彼らのルーツというべきものということもできます。
さて、聴き所は多くある作品ですが、中でも私が最初に度肝を抜かれたのは、収録曲の一つ「Sing, Sing,Sing」に参加しているゲストでした。参加ミュージシャンの中に「ジプシー・キングス」の文字があったためです。
ジプシー・キングスといえば、CM曲としてもお馴染みの「ボラーレ」や、時代劇「鬼平犯科帳」のエンディング曲として知られる「インスピレイション」などが有名な、フラメンコを基調とするワールド・ミュージックに分類されるバンドであり、どちらの作品も好きで良く聴いていた私からすれば、何処に接点があるのかわからないほど音楽性のかけ離れたバンドの組み合わせというのが第一印象でした。
ただ、後でよく調べてみると、シカゴとジプシー・キングスが直接共演したわけではなく、一度完成していたシカゴの演奏に、後からジプシー・キングスの演奏とヴォーカルを重ねて録音したというのが実際のところだったようです。
これはこのアルバムのプロデュースを担当した、故ブルース・フェアバーン(ボン・ジョヴィのヒット作「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」等の、主にハードロック作品のプロデューサーとして有名)がアイディアを思いつき、録音済みのテープを持参してジプシー・キングスのもとに出向いて演奏の付け足しを依頼したとされています。
実際にその「Sing, Sing, Sing」を聴いてみると、最初からこの組み合わせを意図していたとしか思えないほど、見事な完成度です。このアルバムの演奏・アレンジは全体的に非常に質が高いのですが、その中でもこの曲の出来は際立っています。他の収録曲も有名曲ばかりで、どこかで聴いたことがあるものが多いと思いますし、幅広い層にお薦めできる作品だと思っています。
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購入金額
1,190円
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購入日
1995年05月頃
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購入場所
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