レビューメディア「ジグソー」

「これは-ひとつのはじまりです。長い道をもどらなければならないが、とにかくはじまりです」

本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。

ここのところ連続してご紹介しているMarion Zimmer Bradley(マリオン・ジマー・ブラッドリー)の連作、ダーコーヴァ年代記。時系列的には突出して最初。ダーコーヴァ年代記を連作として書き継いできた彼女が、一度話を完結させたのだが(といってもこのシリーズ、時代が長く登場人物が多いので「一応の決着」だが)、その後出版社の求めに応じて書いた「この世のはじまり」、つまりダーコーヴァという舞台の成り立ちに関する前日譚。

整備された植民星に移民する人々を乗せた宇宙船が墜落したところから、物語は始まる。銀河の辺境に放り出された人々。船長を含む乗務員は、なんとか再び飛び立つ努力を始める。

一方移民者である乗客は宇宙船がすぐに直らなかったときのことを考え、資材やマンパワーを少なくとも一定期間この惑星で過ごさなければならないことも考慮に入れて惑星に生活の基盤を作る方が先だという意見で、前者の代表であるレスター船長と後者を代表する植民団代表マレーは意見を対立させる。

どちらにせよとりあえず自分たちの位置を把握するのが先決と、混成メンバーで山に登り、測量と観測を行うことにした。乗客で地質学者のレイフことレイフェル・マッカランや、航宙学と銀河地理学を修めた一等航宙士カミラ・デル・レイ、医師ユーアン・ロス、植物学者のマルコ・ザバル、異星生物学者のジュディス・ラヴァットなどが急拵えのパーティを組んで、その任にあたることになった。しかしなにしろ未知の惑星、比較的温暖な季節と思われたが、とつぜん降り出したみぞれや毒を持つ昆虫に阻まれ、なかなか目的地に着けない。マルコが毒虫に咬まれたときに全員での登頂は絶望的でレイフは隊をふたつに分けることにする。

地質学者の自分と銀河地理がわかるカミラが山頂アタッカーになるという決断。ソリの合わない二人だったが共通の目的に向かっているうちに親密になっていく。そんな彼らが、目的の測量をおえて下山中に事件は起こった。普段はCOOLで理知的なカミラが花の香りをかぎ開放的になり、金色の花粉に彩られた彼女を魅力的だと感じたレイクは彼女と愛を交わす。そのころベースキャンプでも同じようなことがおこっていた。とくにジュディスはこの世界の生物と愛の交歓をした記憶があった。そして彼らは自分たちのカンや閃きが鋭くなっているの感じる。レイフらは自分たちに起こったことを集団狂気のようなもので片付けようとしたが、帰還した彼らに衝撃的な事実が告げられる。いわく、この惑星の自公転周期の関係で、月経周期に根ざした今までの避妊法は役に立たないという。

一方宇宙船の状況は深刻であることが判明した。少なくとも数ケ月飛び立てないという。ここにいたってレスター船長も折れ、マレーに一時的な指揮権を与えることを了承する。しかし測量隊と同じ狂気がコミュニティを襲うことになる。犯される殺人、破壊される宇宙船、消されたコンピュータプログラム、彼らがもとの世界に戻る道はほぼ閉ざされてしまった。

そしてカミラは妊娠が告げられる。宇宙飛行士として厳しい訓練を受けてきた彼女にはその事実を受け入れることができない。堕胎を望んだ彼女だが、現実を見据えているユーアンから、自分たちが生きのこるためには遺伝子のプールは下限ギリギリなので必ず生むように諭される。今までの教育もあり、高いプライドを持っていたカミラは「ただの雌馬じゃないの」となかなか受け入れることができない。しかし時が経つにつれて自分の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じていた。それはお腹の子を感じることでもあった。

冬に備えて、地質調査の旅に出たレイフたちは急変した気候に遭難しそうになるが、ふしぎな光や声に導かれてなにものかの住居に転がり込む。先住者の存在が明らかになるが、害意は持っていないようだった。それはジュディスの会った先住者なのか?そのジュディスはその先住者からもらった青い水晶が自分のESPを強化することを発見するが・・・

果たして彼らは生きのびることができるのか?レスターとマレーの確執は?カミラやジュディスの子は?彼らの獲得しつつある能力は開花するのか?

人間らしく生きることとはなにか、機械やテクノロジーを捨てることは「退化」なのか?子孫に残すべきはなんなのか?いろんな問いかけがあるロストワールド系古典SFの薫りがぷんぷんとする作品。
他のシリーズとは違ってファンタジー的要素はない作品
他のシリーズとは違ってファンタジー的要素はない作品
のちの年代記とはかなりかけ離れた内容の作品だけど、ダーコーヴァ年代記に貫かれる思想、設定、風習などに納得がいく作品。

時系列的に独立しているので、いつ読んでもたのしめるけれど、ダーコーヴァの世界に魅せられはじめたあたりに読むのが吉。読了後、首まで浸かっている自分が発見できますww

そうそう、ダーコーヴァのコミンになぜ赤毛が多いのかも明かされますよww
  • 購入金額

    430円

  • 購入日

    1987年頃

  • 購入場所

15人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • タカキさん

    2014/02/23

    小説を登録しても良かったんですね。気が付いていませんでした。

    もう一度読み直してdarkoverにいきたくなりました。加藤洋之&後藤啓介さんの絵も不思議な感じで好きでした。絶版になってるんですかね?懐かしすぎます。
  • cybercatさん

    2014/02/23

    タカキさん、コメントありがとうございます!

    >小説を登録しても良かったんですね。気が付いていませんでした。
    サイトの性質上、またインターネット上ということもあり、コンピュータ系やデジタルガジェット系が多いですけど、いろんなカテゴリーがありますよ。

    >もう一度読み直してdarkoverにいきたくなりました。加藤洋之&後藤啓介さんの絵も不思議な感じで好きでした。絶版になってるんですかね?懐かしすぎます。
    自分もこのレビューのために全巻読み直し中です(遅々として進みませんが)。
    久しぶりのダーコーヴァは旧き佳きSFの薫りが懐かしいですね(特に本作)。
    ぜひ読み返してみてください。
    タカキさんの旅に幸あらんことを!

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