“ふきのとう”は以前ご紹介した
北海道出身のフォークデュオ。代表作はデビュー曲の「白い冬」に「風来坊」、「春雷」あたりか。前回ご紹介したアルバムにその「春雷」は入っているのだが、その年のあたりは彼らにとっても、グループ活動の半ばで色々な方向性の模索があったり、音楽界もフォークというジャンルが廃れ、ニューミュージックというロックテイストを効かせたジャンルの勃興もあり、混沌としていた時期。
そんな時期にデュオの片割れ、細坪基佳が出したソロアルバム。“ふきのとう”というデュオは、二人とも曲が書け、二人ともリードヴォーカルがとれるグループだったが、ヒット曲は全てデュオのもう一方、山木康世が曲を創り、細坪がメインヴォーカルを取るパターン。細坪の曲や山木がメインヴォーカルを取る曲もアルバムには収められたが、主流ではなかった。それが細坪には不服だったのか?、このアルバムは山木の協力を仰がず創られている。
「ミスター・グッドバーを探して」。当時のふきのとうではあり得ない、かなり前衛的なアレンジがされた曲。16ビートのリズム、エレキギターのリードから始まる比較的ハードな曲。詩の世界が単語を並べる抽象的なもので、写実的、もしくは叙情的なふきのとうの詩とは一線を画している。まるでCandy Dulfer
のようなキャッチーさで、でもエレキギターと対旋律をとりながら転調を繰り返す凝ったJake H. Concepcionのアルトサックスソロがいい。
「愛のナイフ」は作詞者の故天野滋が所属していたN.S.P.が出したシングルの方が有名なこの時代を代表する曲。N.S.P.のオリジナルと思っている人も多いが、この細坪版の方が数ヶ月はやい。細坪の筆になる繊細なメロディが沁みる。
「激しい雨」。この曲はこのアルバムの1年前、ふきのとうのシングル(「影法師」)のB面としてでた曲の別アレンジ。比較的ヘヴィなアレンジで、叩きつけるようなアコースティックピアノのイントロから、スラップベースで盛り上げるサビまでかなりハード。リズム的にもイントロ~Aメロの半速からBメロでスピード感が加速し、ベースが唸るサビになだれ込むなど、力強いアコギのカッティングがメインでどちらかというと単調で、詩を聴かせるアレンジだったオリジナルとの対比が面白い。
この他にもバンジョーをフィーチャーしてコミカルタッチの詩をつけたカントリーフォークの「僕の可愛いお嬢さん」などのおもしろい(可笑しい)曲を入れたり、A面を「LOVE SONGS」として様々な恋の歌をあつめ、抽象的なB面「風の詩」と趣を変えたりと、様々な仕掛けが入った作品だった。“ふきのとう”はこのあと10年ほどして解散、再結成はされていない。未だに二人とも現役であり、作品も発表し続けているが、現在ビックリするほどこの時期の作品は入手しづらい。本家?のふきのとうが“かぐや姫”や“ガロ”などフォーク全盛期より少し遅れてきたグループだったからか、活動期間は長いわりに「大」ヒットが少ないからか、そもそも取り上げられる回数が少ないので、その時期のソロアルバムもそうなのだろうが...
現在プレミアもついて購入価の6倍以上での取引となっていますが、そんな「コレクターズアイテム化」することなく、もっと皆さんに聴いていただきたい曲たちです。
【収録曲】
LOVE SONGS
1. ミスター・グッドバーを探して
2. 僕の可愛いお嬢さん
3. 愛のナイフ
4. 激しい雨
5. ひとりの君へ
風の詩
6. 風の轍
7. ゆうすげ(メルヘン)
8. 木精
9. 子守唄
「愛のナイフ」
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購入金額
1,500円
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購入日
1995年頃
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購入場所
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