実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
アン・マキャフリイ(Anne McCaffrey)言わずと知れた「パーンの竜騎士」シリーズの作者の女流SF作家。少し詳しい人はコアになる第一作を彼女が作って、他作家と共著をしたり、原案のみ提示して他者が仕上げた「歌う船」シリーズを思い出すかも知れない。
前者は極めて偏心した軌道を持つ惑星からの侵略者=糸胞(これは有機物をすべて食いつくし、地面にもぐりこみ猛烈な勢いで増殖する生物で、それに対処するには空中で焼き尽くすしかない)と戦うために品種改良された火蜥蜴とそれを操る「騎士」を描いた華麗で絵画的な殿堂入りSF。後者は重い障害がある少女が生まれ、安楽死か、宇宙船に組み込まれるかの選択を迫られた両親が後者を選んだことで、宇宙船に組み込まれて旅をすることになった話。同じ境遇の他のものと彼女が違ったのは「歌うことができたこと」。この歌う宇宙船が他者と心を通わし、大事な人を喪い、傷付き、最後には平安を得る、という話でどちらも他に比べるもののない場面設定と女性ならではの機微に富んだ作品。
そんな彼女が創作期間の中期に手がけた作品。
いつもながらに秀逸な場面設定はこう。
クリスタル・シンガー。この職業はタイムラグない星間通信などに使われる特殊な鉱石「クリスタル」を採掘し、必要な場所に設置、調整をする職業。なぜ「シンガー」なのか。彼らが使うクリスタルの採掘器具、音波カッターを正確な音程で調律し「切り出す」から。このことからこの作業は「クリスタルを歌う」と呼ばれる。これを行うためには「完璧な」絶対音感が必要。
音楽院の生徒でオペラスターになるため研鑽を積んできたが、生まれつき声にわずかにあるキズによって、その道を絶たれたキラシャンドラ。10年の研鑽が水泡に帰し、スターでなく裏方になるよう諭された彼女は全か無かとばかりに、星を飛び出してしまう。絶望の中で「クリスタル・シンガー」という人種に出会い、その人的魅力と莫大なクレジットに魅せられ彼女もクリスタル・シンガーになることを決意する。
しかし、クリスタル・シンガーになるためには絶対音感とともにもう一つ大きな問題があった。それはクリスタルの採掘地、惑星「ボーリィブラン」にカギがある。この惑星土着の共生生物と共生しなくてはならないこと。このことにより驚異的な治癒能力と特殊能力を得るが、一方で生殖能力は失われ、記憶力が欠如していき、さらにこの惑星を長期間離れて生きられなくなる。またその共生のさなかに何らかの身体能力を失うので、聴覚や声を失うとクリスタル・シンガーになれず、でも、この惑星から離れられないため、工具の整備士など周辺の職業に就くことになる。そもそも共生が上手くいかない場合もあり、最悪落命することもある。
こんな危険を知りながら、「一番」じゃなきゃイヤ、オペラスターでなければ裏方の仕事なんかまっぴら...そんなキラシャンドラはここでもシンガーになるかいなかの、のるかそるかの賭に出る。
そんな彼女は賭に勝ち、完全適合である「マイルキー移行」を果たし、最も高価なクリスタルである黒クリスタルとの高い感応能力を得、クリスタルギルド会長ランゼッキの寵愛も受け、自分の立場を築くのが1巻目「クリスタル・シンガー」。
続く「キラシャンドラ」は前巻で一山当てた黒クリスタルの鉱床を嵐で失い、切り詰めた生活を強いられる彼女に星外の仕事が舞い込む(クリスタル・シンガー、というか共生生物を受け入れた人は惑星を遠く離れられないが、惑星気候が荒れ狂うマッハ嵐の時は惑星外で暮らさなければならず、シンガーのように体内に「クリスタルの残響」が残っている人物は特に離れていないと共振で気が狂いそうになる⇒そのバカンスを勝ち取るためにもクリスタルを切り出しクレジットを稼がねばならない)。その惑星オプセリアでクリスタルを使った楽器=感覚オルガンの修理を行う、という表向きの仕事とは別に、一度住み着くと出国する人がいないというその星のナゾを解く任務も与えられて出向くが、着く早々誘拐され無人島に置き去りされてしまう。ここを辛くも脱出したキラシャンドラは反政府勢力の青年ラルスと出会うが、実は彼が誘拐犯。なぜ彼女を誘拐したかを探っているうちにラルスの置かれている状況とかつての自分の状況を重ね合わせ...恋に落ちてしまう!
何とかその星の政府の悪行を暴いて脱出したものの、ラルスはキラシャンドラの証言が元で有罪になってしまい...
彼女の新しい恋は実るのか?
...なんにせよこの小説はその場面設定の妙につきる。主人公のキラシャンドラは.....
う~ん、遠くで幸せになって欲しい感じ?ww飽くなき上昇志向、孤島から脱出するバイタリティなどに加え、「キラシャンドラ」では恋人のラルスが罰せられる元が自分の証言(台での生理状態スキャン)の結果と知ってオロオロするカワイイ面や会長ランゼッキが自分のせいで鉱床に行けずクリスタルのとの絆が切れそうだと知り身を引くけなげな面もあり、小説主人公としては華があるが....
鼻持ちならない「一番じゃ無きゃイヤ」という性格、自己の欲求(特に性欲w)に従順な?ガマンしない性格、つどつど出逢う男性ごとに恋しているような浮気性な性格....
1巻目の方がSFとしては読み応えあります。2巻目の方は恋愛小説です。実は日本で未訳の3巻目(Crystal Line)があって、この後どう展開するのか、それを読んでみたいと思っているうちにともに絶版。作者のAnne McCaffrey女史も翻訳者の浅羽莢子さんも鬼籍に入られた。3巻目が翻訳される可能性は限りなく少ないと思いながら、続きが気になる、作品です。
例によってAmazonは1巻目に繋いでありますが、価格は2巻分です。
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購入金額
1,463円
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購入日
1995年頃
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購入場所
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