「民藝とは新しい言葉です。それがためあるいはこれが民族藝術の略字とも解され、時折農民美術とも混合されました。また民衆藝術という華美な言葉にもとられました。しかし吾々はもっと質素な意味で、民衆の民と工藝の藝とを取って、この字句を拵えたのです。」
民衆の日常に使われることを目的として、無名の職人たちが作り上げた食器や家具、調度品などの無銘の雑器に美を見出し、民藝運動を興した柳宗悦の40年にわたる足跡、その膨大な著作群の中から民藝に関する論稿を主に選び、一冊の文庫にまとめたものである。
「されば地と隔たる器はなく、人と離るる器はない。それも吾々に役立とうとてこの世に生まれた品々である。それ故用途を離れては、器の生命は失せる。」
『工藝の美』において朗々と語られる、雑器たちの中に柳が捉えた普遍の美の意味。
そして小堀遠州を「歯牙にかけるほどのものでさえない。」また「趣味の過剰が目立って、美の本道から遠いものだ」と言い切り、茶聖利休に至っては、権門や金力に媚びることを怠らなかったその生涯を「不純」で「幇間くさいものがあるのには閉口する。」と斬って捨てる『利休と私』。
少々難解な『美の法門』では、自然や伝統、実用性などに援けられ生まれてきた民藝の美を仏教の他力道になぞらえ、宗教的真理へと到達する。
しかし何と言っても、物欲の民である私(いや、zigsow民すべてかも?)にとって『蒐集の弁』は小編であるが、本文庫に収められている中でもっとも魅力あふれる読み物である。
「この一個こそ」そしてその「一々が初恋なのだとでもいおうか。」
生涯にその情熱を「日本の眼」に傾け続けた求道者、柳宗悦の美を求める心を熱いほどに感じる名著だと、読むたびに思うのです。
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1,008円
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不明
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