そろそろSATA2&DDR2環境からのアップグレードをしておきたい。
という訳で条件は「PhenomII X3 700e」を使えて「SATA3」「DDR3」に対応する「MicroATX」マザー。
密かにサムスンSSDレビューに向けてSATA3化を狙ったわけだがそちらはお流れ。とはいえWindows7化を考えてもアップグレードして損はないだろう。
一見大した事のない条件に見えるが実は「MicroATX」が曲者。これを満たすマザーボードの数はかなり限られる。PhenomIIを使うだけならAM2+~AM3+世代と幅広く、DDR3メモリ対応を絞ってもAM3&AM3+と選択肢は一見多そうなのにだ。
まずはAM3+マザー。AMD9XX世代のロー~ミドルレンジマザーはFM1ソケットとなっているのでPhenomIIは搭載できない。となるとハイエンドの990系になるのだが…
何故かATXフォームファクタばかりでM-ATXのラインナップが1個もない。戦略としてMicroATX向けはFM1に一本化されているのだろう。実際FM1環境に移行するのが利口な選択なのだが、ここはあえてPhenomII X3 700eに拘ろう。
となるとAM3後期~AM3+初期に使用された890GX/880G搭載のM-ATXマザー。しかしここで更に罠がある。Intelプラットフォームでは最近聞かなくなった「サウスブリッジ」の存在だ。880Gを搭載したロー~ミドルレンジモデルだと、サウスブリッジが旧世代の「SB710」なマザーが多い。コイツはSATA2なので今回の希望スペックから外れてしまう。
…という訳で選択肢は「SB850」搭載に絞られる。後々を考えてAM3+という条件を付け加えた日には文字通り数える程しかないし、上位となる890GX搭載板となると…実質的な選択肢は限りなく少ない。
今回は手持ちのPhenomIIにこだわった故だが、AMD FXを使ってM-ATXマシンを作りたいと思った場合も同じ選択肢になることだろう。それの需要があるのかは別として。
それら条件を満たす数少ないマザーの一つがこのASRock 890GM Pro3 R2.0だ。ベースとなる 890GM Pro3自体が890GX搭載・SB850によるSATA3対応という隙の無い仕様だったのだが、「R2.0」ではAM3+ソケット搭載・UEFIの採用と更なるな進化が加えられている。
正直コレの存在を知った時点で、VAIOの更新用マザーは確定したようなものなのだが、2012年現在新品販売がされていない。
ASRock公式サイトのマザーボード一覧はソケットを指定すると全てのモデルが出るが、ソケットを指定しない一覧ページだと一部のモデルしか表示されない。他のラインナップから推測するにどうやらこの一覧から抜けているものが終息品という扱いとみていいだろう。
しかも価格比較サイトの履歴を見る限り2011年3月~10月の僅か半年間しか価格登録が無かったらしい。これでは大した数が出回っているとも思えない。今回じゃんぱらの中古通販にて入荷を確認。最早チャンスは限られるので後先考えずにとりあえず注文した。正直現在のASUS M3A78-EMで十分だというのに。
既に自腹SSDレビューでピーピーなのに自腹板祭りか。
さて現品を見てみよう。
中古品とはいえ箱・付属品はほぼ揃っており、基盤もなかなか綺麗だ。ドライバCDは本来紙ケースの筈だが前オーナーがプラケースにいれかえたのだろうか。更にマザーに貼られている注意書きシールまで袋に貼り直して保管されている。まさに美品。
というかロゴ型ヒートシンクには保護ビニールが付きっぱなし…いやまて、これZ68 Pro3-Mにもあったタイプのヒートシンクだよな…自分も剥がした記憶無いぞ、後で確認してみないと。
AM3との差別化として黒くなったAM3+。PhenomII搭載なので意味は無いが。DDR3スロットは4スロットを搭載し、OCでDDR3 2000までの対応を謳っている。
今回はTEAM製のDDR3 1333 4GB*2kitを搭載するが、まだXPなので約5GBが無駄になる(オイ
そしてチップセット統合グラフィックスとしては最強クラスになるHD4290を統合した「890GX」。
まるでファンレスグラフィックボードのように巨大なチップセットヒートシンク。780G搭載のASUS M3A78-EMもチップセットにしてはいかついヒートシンクを持っていたがそれ以上。
PCIex1スロットと平行になる位置は高さが抑えられており、階段状になっている。とはいえグラフィックの型番はHD4290。かつて衝撃的な性能を持って登場した780Gの統合グラフィック「HD3200」とは異なるものの、その後登場した785G統合「HD4200」の小改良版となり、極端に性能アップしている訳ではないようだ。後に780Gとの比較も掲載してみよう。
そしてSATAポートは5ポートを備え、全てがSATA3。このSATA3ポート数の多さはインテルプラットフォームに慣れた身には衝撃的だ。尚前身となる890GM Pro3からの変更点のひとつがこのSATAポートの配置で、向きが互い違いになり間隔が広がった。これによりラッチ付きSATAケーブルが扱いやすくなっている。同じく無印からの改良点として補助コネクタが8pin化されているがやはり今回の電源は4pinなので無駄だった。
バックパネルはブラック処理が施されている。USB3.0は背面の2ポートのみだが、当然VAIO筐体にフロントUSB3.0…いやフロントUSB自体が無いので問題ない。むしろ2.0ピンヘッダが余りまくってもったいないのでUSB2.0背面ブラケットを別途用意した。
ちなみにUSB3.0チップは定番ともいえるEtron EJ168Aチップ。他のASRockマザーにも言えることだが、ドライバはEtron公式サイトで配布されているものの方が新しい。
同じEtronチップを搭載したASRock Z68 Pro3-MはASRockサイトにあるドライバだと、USB3.0HDDケースが初回認識時フォマット要求される現象が起きていたのだが、上記Etronサイトにあるドライバをインストールしたところ、問題なく動作するようになった。自己責任ではあるが、もしUSB3.0機器の動作が不安定な場合試す価値はある。
今回の890GMは初回からEtronサイトのドライバを突っ込んでしまったので同じ現象が起きるかは不明。
ちなみにLANはAtheros AR8151という聞きなれないチップだが、とりあえず実用上は問題なさそうだ。
さて起動となるが、まだWindows7化の予定はもう少し先なので、今まで使用していたXPをそのまま使ってしまう。幸いドライバ類の入れなおしで済んだ。ちなみにCCC&RadeonドライバはそのままでOK。
グラフィカルなUEFIインターフェイスはZ68 Pro3-MのIvy未対応バージョン(あちらはIvy対応版にアップするとデザインが変更された)に準拠したデザイン。もちろんAMDとIntelで設定項目の違いは多い。
ちなみにAMDCPUに搭載されるCoolinQuitはIntelの省電力機能のようにUEFI側で設定しただけでは機能せず、AMD製CPUドライバをインストールした上で、XPの電源管理を「最小の電源管理」に設定する必要があるので忘れないでおこう。
それではお待ちかね?ベンチマークのお時間です。まずは総合性能を古いベンチだがCM2004R3で見てみる。
スコアは総じて上昇。またDDR3メモリの恩恵はスコア以上に大きく、CPUとHDDは流用ながら一般用途での体感速度は確かに上昇した。
そして3D系のスコアも上昇しているが…3Dmark06とPSO2ベンチを使ってもう少し掘り下げてみよう。ちなみにPSO2は1280*720のウインドウモード、画質設定は標準だ。
780Gに対して着実なスコアアップを示しており、ライトな3Dネットゲームならプレイ可能なスコアだ。GeForce6600GT以上の性能は持っていると言えるし、何気にDirectX10.1対応だ。更に動画再生支援を考えればマルチメディアマシンとして優秀だ。
しかし最近のゲームとしては比較的軽量なPSO2のスコアを考えると、上記の用途が限界とも言える。
何せ今となってはIntel側もCPU内蔵グラフィックという形でオンボードグラフィック性能を向上させてきており、HD2000といい勝負のスコアなのだ。但し同等の性能ならドライバに関して煮詰められた「Radeon」ブランドを持つ890GXのアドバンテージが残る。
…とはいえFF14ベンチをやった事がある人なら判ると思うが、このスコアだと例えHD3000でもプレイは厳しい。
せっかくなので消費電力の測定だ。
内蔵グラフィックの性能は向上し、USB3.0等の付加機能が追加されながら、消費電力は総じて10W程低下している。
もちろんDDR2*4からDDR3*2になったメモリの影響・マザーボード自体の設計もあるだろうが、プラットフォームとして消費電力低下が行われているのは間違いないだろう。
Intelプラットフォームの影に隠れがちだが、1世代前のCPUとマザーで全体の消費電力をここまで抑えているのは、ワットパフォーマンスの面から見ても優秀と言える。
2012年となった今では目新しい性能を持つわけではないが、DDR3・SATA3・USB3.0・UEFIを揃えたM-ATX。まさに890GX搭載マザーの決定版と言える。M-ATXのAM3+ならコレを買えば間違いないと言える程に隙の無いマザーだけに、新品購入できないのが惜しいところだ。
また、チップセット統合グラフィックスに着目すると、780Gと比べれば確かに進化しているが、既に登場していた785G比では限定的。後継のFM1…APUシリーズまでの繋ぎといった感が否めず、780G登場時程のインパクトは無い。
しかしこのままM-ATXのAM3+が自作市場に出なければ、M-ATXでFXマシンを組める最強候補の一角であり続ける事になる。一応980Gというグラフィック統合チップセットの存在はあるらしいが、やはり自作市場には登場していない。
そして980Gが出ない以上、最強最後の「チップセット統合グラフィック」といって過言ではない。かつてIntel i81Xにより普及し、nVidia、ATi、VIA(まだ自社向けにあるけどさ)、SiSと幾多のメーカーが開発していったこのジャンルにおいて、1つのピリオドとなる製品となるだろう。
その巨大なチップセットヒートシンクは、低価格PCの普及に貢献した者達の記念碑か、あるいはCPU統合グラフィックに置き換えられ、役目を終えていく者達の墓標なのか。
追記:Opteron 3280も動いたのよ。
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購入金額
5,500円
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購入日
2012年05月頃
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購入場所
じゃんぱら通販
Manyaさん
2012/06/05
Sandy世代になって死角ないからなぁ。
下小川さん
2012/06/05
Aシリーズなら大幅に性能アップするので魅力的なんですが、FM1だとCPUとマザー両方買い替えになるんで、廉価Sandy+グラボがライバルになってくるんですよね。
はにゃさん
2012/06/05
直接比較できると思いますが、後釜のAPUはやっぱりパワーがありますね。
780Gが登場したときはすごいなぁって思ったのですが、一時代が終わった気がしますね。
下小川さん
2012/06/05
やっぱり一度Aシリーズ触ってみたいなあ…これ以上PC増やしてドースンダ。
Aシリーズが控えているからこそ、780G→785G→890GXの内蔵グラフィックスは最小限の改良に留めたのでしょうね。
はにゃさん
2012/06/06
下小川さん
2012/06/06
1から組むならコスパや性能のバランスがいいんですが、どうしてもパーツが余っている身だとグラボ等を流用したほうが結果的に安上がりになったりするし、お互いPCの台数自体が多いですしねw