実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
「アイルの書」。女流作家ナンシー・スプリンガー(Nancy Springer)の大河ファンタジー。前回ご紹介した「白い鹿」
と同じく「アイルの書」、その第2巻。前作でエリドを助け、アイルを安んじた真王ことベヴァンは海への、その果てにあるエルウェストランドへの憧れを捨てきれず西の海に船出してしまう。アイルは残された隼王クインとエリドの血統によって治められることになったが、「聖なる子」の名の下に行われる東からの侵略はその後も続き、7代を経る頃にはベヴァンの血をひきアイルの地に戻ってきたヴェランを始祖とする聖王の血筋の影響が及ぶ場所は、アイル南西部の一部を残しなくなっていた。
その7代目東方の王イスコヴァルの治世、始祖クインの血につながるラウェロックの領主の息子アランがイスコヴァルの警邏隊に追跡されていたところから物語は始まる。イスコヴァルはアイルの西方ウェラスやラウェロックを攻め、領主リュインは連れ去られていた。警邏隊に追い詰められたアランの前に一人の男が現れる。不思議な言葉で馬たちを従わせる青年ハル。彼に助けられたアランは旅をともにするが、今度は薬草を買いに行ったハルがイスコヴァル側の領主に捕まってしまう。命がけで石牢に忍び込んでハルを助けたアランに、ハルは秘密を打ち明ける。自分はイスコヴァルの息子であると。そして体中につけられた傷を見せ、これは父王であるイスコヴァルによってつけられたもので、我らの間には愛情がないと告げる。そしてアランの父リュインがイスコヴァルの拷問の末死んだことを伝える。
衝撃を受けるアラン。しかし、それまでの同行で強く心を通わせていた二人は義兄弟の儀式を行い、旅をつづける。途中ハルは地方領主の娘ローズマリーと出会い運命を感じる。さらにそこから西方ウェラスへ移動しているうちにハルが捕まる。探すうちに騎馬武者に嬲られている乙女リセと出会う。助けに入ったアランは重傷を負い、彼女の属するエルフの里に担ぎ込まれる。そこでハルと再会したアランはハルにエルフの血が流れていることを知る。不死のエルフに恋をしたアランは苦しみ、愛を識らぬリセに求愛し、傷つくが、旅立ちの時彼女からエルフの守り石を託される。
ウェラスへ移動した彼らはそこで伝説の書、「太陽の書」の内容を聞かされる。
“ひとりの指導者が来たるだろう。ヴェランの血をひく若者で、叡智と幻視の力と、失われた言語の知識を持つものが~体には苦難の跡が、目には月光の輝きがある。その名は~<落日王>とよばれるだろう”“かれとともに、その兄弟が来たるだろう。血と土地の絆に縛られぬ大いなる心の持ち主にして、ヴェランその人にも似たるもの。かれは~<旭日王>と呼ばれるだろう。その運命の印は、トリネコの乙女よりの贈り物、緑のエルフ石にある”
この後、二人の若者を待つ試練と、二人の乙女との愛、隠されていた秘密が明らかになり忍び寄るよこしまな考えなどの出来事をダイナミックで息もつかせぬ筆致でアイルの解放までを一気に歌い上げる400ページ超の長編。
アイルの書の中でもっとも独立していて、(一部勧善懲悪的なステレオタイプな点はあるが)もっとも素直に感動できる物語。
超超オススメです。
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購入金額
520円
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購入日
1984年頃
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購入場所
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