実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
小説家谷甲州のSF連作“航空宇宙軍史”シリーズ番外編。
この「惑星CB-8越冬隊」は彼の初単行本として刊行されたが、発売当初は“航空宇宙軍史”シリーズに数えられていなかった。話的にも完全に独立しており、CB-8という辺境の極寒の惑星で生存をかけてサバイバルする話。単なる冒険小説と違い、地軸が横倒しになっており公転が偏心している惑星上の話であったり、制御不能の人口太陽を止める行動が話の中心であったり、伝説の精神生物が出てくるがそれが重要なキーファクターであったりするところはSFだが、“航空宇宙軍史”シリーズの話のキーとなるエピソードでもなく、独立して出された。事実cybercatのもつ1983年発行の初版には「航空宇宙軍史」のサブタイトルは、ない。しかし現在販売されている新装版には「航空宇宙軍史」と記されている。Amazonの新版の商品ページ
これは設定が同じだからだ。時系列的には
よりも遙か未来。「終わりなき索敵」で汎銀河連合に破れた航空宇宙軍。軍は解体され、地球は監視下に置かれ...地球は宇宙の中心から、単なる辺境の惑星へと没落し、その位置も人々から忘れ去られている時代。汎銀河連合は繁栄を続け...、そして澱んでいた。
汎銀河連合が見つけた辺境の惑星、CB-8。公転面に対して横倒しに自転しながら偏心した軌道で公転する極寒の惑星。惑星改造技術も発展し、複数の人口太陽を利用して温暖化、緑地化しようとしている。
しかしどんなに技術が進んでもヒトというものは変わらないのか..
報告書には「高等生物はいない」と記されているにもかかわらず、精神的に発展した生物の存在を落ち延びて極寒の地で自活していた地球人から聞かされた現場観測員バルバティ。自分たちの惑星改造が惑星気候を激変させ彼らを死に追いやると官僚の上長に報告すると「この惑星に現住生物は存在しないとの報告がなされている」「(その)伝聞は、この惑星に不法に住み着いている地球人達のものだ」と一蹴される。
そのくせ直径変動する「柔らかい」惑星、というその星の特異性で人口太陽の制御が崩れると、官僚とおつきの科学者は安全な(と思われる)後方基地にこもり、バルバティをはじめとする現場観測員に危険な極地基地に行き制御を回復するよう命ずる。バルバティ達は従って出発したが輸送機は不時着。再会した地球人達に訳を話し、彼らと協力して極地基地を目指すバルバティ達だが、自然の猛威はかれらを飲み込み...
どんどんヒトが死ぬ。わずか数行ほどの記載で。「パイロット」など個人名がなかった人たちはもちろん、主要キャストの観測隊の生き残りも地球人も。そこには愁嘆場も何もなく、あっけなく冷厳に命が消える。しかし人口太陽の制御を取り戻す、ということに協力すると一度決めた地球人は仲間が亡くなろうが、バルバティを基地に到達させるために死力を尽くす。
まさに処女峰の頂点を極める一人のアルピニストのために尽力し、道半ばで滑落していったガイドやシェルパのように....
SFであるとともに、冒険小説であり、山岳小説であり....
設定は突飛ですが、谷甲州らしく「人」を描いたザクっとした味わいの小説です。
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購入金額
320円
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購入日
1983年頃
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購入場所
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