レビューメディア「ジグソー」

戦争が終わっても、終わらない戦い

本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。

ついにラス前!小説家谷甲州のSF連作“航空宇宙軍史”シリーズ。

時系列的には、終戦時を描いた

の3ヶ月後。各話視点が若干異なるが、いずれも掃海艇CCR-42の「最後の戦闘航海」に関わる内容。

敗戦後「外惑星連合」軍の仕事は戦争中両軍により敷設された機動機雷の撤去などの危険な作業だった。それに従事する掃海艇CCR-42の艇長田沢がキーマンとなっている。その作業を終えて帰港した田沢に小惑星ヒマリア調査同行の指示が来る。重力波センサの軍事研究施設があり、その情報を収集するのが目的という。機雷密集地区のため、それを排除しながら研究者を軍事施設に送り届けるのがミッション。ヒマリアの施設は以前淡い恋愛感情を抱いた人物がいたところと言うこともあり、興味をそそられるが、部下達もこれが掃海艇CCR-42の「最後の戦闘航海」になると、引き受ける。

しかしそのうち「航空宇宙軍」の調査の真意が別のところにあると気づく。ヒマリアにはもう一つ秘密の研究所があったが、そこで行われていたのは捕虜を使ったサイボーグ実験。「航空宇宙軍」の士官は言葉を濁して多くは語らないが、小惑星接近時に機雷攻撃を受け、サイボーグ研究所に不時着する。奇跡的な機雷回避は何者かが情報を画面に流した結果だったが、艇内の誰もその情報を流してはいなかった。その後。「航空宇宙軍」の士官が研究記録を調査しているうちに、燃料確保のため施設を調査していた田沢らはサイボーグ=「作業体K」に言及した記載を発見する...

戦争がすべての人々の良心を麻痺させていくこと、ヒトではないものにされながら、その悲劇を公開し世の中に残そうとする意志を語った物語。

そうそう“航空宇宙軍史”シリーズのカバー絵はすべて横山宏(よこやまこう)画伯が手がけるが、本作だけ木嶋俊画伯であり、少し風合いが異なる。古本屋などでは見逃さないように。

【収録作品】
・最後の戦闘航海
・見捨てられた星
・失われた翼
・死に絶えた海
・葬られた過去
  • 購入金額

    460円

  • 購入日

    1991年頃

  • 購入場所

16人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • makibisiさん

    2011/10/07

    これも面白そうですね!><

    表紙の絵にも、そそられます。w
  • cybercatさん

    2011/10/07

    makibisiさん、コメントありがとうございます!
    >表紙の絵にも、そそられます。w
    横山画伯のタッチがわかるような絵画調の絵もいいですが、SFっぽさと言う意味では木嶋画伯の緻密な絵もまた、アリ、です。

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