実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
さらにしつこく小説家谷甲州のSF連作“航空宇宙軍史”シリーズ。
時系列的には、「外惑星動乱」の不発により、外惑星連合軍(SPA)も地下活動を余儀なくされた時代。
外惑星動乱時には語られることのなかった天王星系がクローズアップされる。それが単に今まで語られることのなかった木星・土星系より一つ先の外惑星、として語られるのではなく、年表的に天王星系は外惑星争乱時に戦略的に有用な位置にいなかった、ときたw。地図や年表、距離計算などでリアルな世界を作り上げるに長けた谷の面目躍如である。
過酷な環境であったために、負傷兵をサイボーグ化して開墾に当たらせたが、争乱勃発とともに戦略的立地の悪さから、開発が中断し棄てられた彼ら。そのうちのひとりオグを一つの軸として話が進む。
外惑星側の蜂の一刺しであった攻撃は地球-月連合に読まれ、壊滅させられる。地下にも潜った彼らは23年後その時点では戦略的有用性を増した天王星系の第六衛星エリヌスに政権を樹立し、迅速な政治工作により政権運営を開始、地球-月連合軍からの注文を内政干渉として退けることができる橋頭堡の設立を企てた。
それに絡むSPA側エージェント=ジャムナとサイボーグ兵士オグの物語、フリゲート艦アクエリアスの戦闘、SPA内の意外な内通者(積極的内通者の多くに見られるように自分の思う大義のためには味方も裏切る)、などが絡み合いながら話は進むが、この“航空宇宙軍史”シリーズでは最も初期の著作のため、物語の根幹をなす記述が見られる。
でも触れた「探査船オディッセウス『0』号機」の話、それがなぜ天王星系に関わってくるかを、太陽公転面に対して横倒しに自転する星系である特徴から計算して語る。
近未来で戦闘もあり話が作りやすいからか、主に「外惑星動乱」時代を中心に展開するシリーズの他の話とは少し時系列的には離れているが、大河小説としての“航空宇宙軍史”には欠かせない一冊。
でも芯を貫いているのは、事故のため妻子を捨てざるを得なかった(と思っている)男と、母と自分を捨てた父を恨みながら同じ道へと進んでいく娘の哀しい物語であるところが、技術的な話におぼれない谷甲州カラーなんですが..
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購入金額
580円
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購入日
1988年頃
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購入場所
makibisiさん
2011/09/13
cybercatさん
2011/09/13
>宇宙はロマンですね~><
今回クローズアップされる天王星系は横倒しの状態で太陽の周りを回る奇異な惑星系であり、その南極と北極は銀河系に対して常に同じ方を指しているというのが開発の必要性として語られていますが、極地方では42年間の昼と42年間の夜が続くという惑星、おもしろいです。