所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。詞を聴きたい歌。インストナンバーを多く聴くcybercatとしては、多くの唄の詞は記号に過ぎない。ドレミで歌ってようがスキャットで歌われようが旋律が美しければおk、の場合が多い。そんな中、詞を聴きたい歌を歌うシンガーというのがごく少数はいる。そんな心に刺さる歌を唱うシンガーのアルバムをご紹介します。

スガシカオ。チャート1位は不思議とないが、一桁常連。アルバムはファーストアルバムから連続13枚ベスト10入りの日本記録を持つ。一番知られているのはSMAPの「夜空ノムコウ」の作詞者としてだろうか。基本的にシンガーソングライターだが、歌詞だけ書くこともある。この詞が、イイ。聞くところによると彼はどうやら曲を先に作り、詞を後から充てる作曲方法をとるらしいが、そうは思えないほど詞がいいのだ。

そんな彼の8枚目のオリジナルアルバムが“FUNKAHOLiC”。
「バナナの国の黄色い戦争」はアルバムタイトル通り、ブラスが入ってちょっとドロくさいファンク風の味付け。THEATRE BROOKやFOUR of a KINDでキレたドラムを叩く、「日本で一番忙しいドラマー」沼澤尚のクイクイの軽いリズムでちょっち古めのイメージを醸し出しながら、その上でスガの詞が遊ぶ。バナナの国で開戦の理由さえわからず続いている戦争を歌っているようだが、いつの間にかバナナ味の歯磨き粉の話に行き、♪人のそれってすごく気になるトコ♪と続き♪あいつのバナナ黒いって／さっきも自慢してたけど／あいつのバナナかぶってて／どーせグニャグニャだって♪と意味深ｗ。二重三重に暗喩や風刺が仕掛けられていて、でもそれがディスコ調ファンクのリズムに乗って打ち込まれるのだからおもしろい。

「13階のエレベーター」は13階に家がある人物が息苦しく遅いエレベータで♪死ぬまで行ったり来たり♪する。♪10＋3＝Blue♪♪3rd＋10th＝Blues♪の言葉遊び、♪5階で乗ってきた女の／透けた赤い下着／タバコと香水とメスのにおいで充満した／めちゃくちゃにしたいな／このエレベーターの中で／監視カメラがじっとぼくのこと見ている♪

彼の詞は本能的で、鋭く、様々な欲望も表現する。だから時にしてエロ。でも、歌も表現も人の本能的なモノでそこには欲望も興奮もある。そんなところが詞がこっちに入り込んでくる理由なのだろうか。

歌詞カードに添えられる写真も淫靡

でも時に泣きたくなるような優しい歌も歌う。♪知らない人ばかりで／街ができてるとしたら／この世界は／とてつもなくでかい孤独のカタマリだ／誰かといても寂しいって言う人／ぼくのこの指とまれ／ムリヤリもう／笑わなくていい／いつかの悲しみが消えない人／ぼくとにらめっこしようよ／笑いかた思い出すまで♪「コノユビトマレ」。The London Session Orchestraのオブリによるアシッドな味付け、サビに行く前の有賀啓雄のベースグリス、屋敷豪太のタイトなリズムで底抜けにアッパーな曲だが、詞はまじめな人生応援歌。元気になれる、力がわいてくる。

デビュー当初と比べて彼の詞の先鋭さが鈍った、という人もいるが、表層的な深さを突き抜けたところに今の彼はいる。

歌詞を聴きたい、曲達です。

【収録曲】
1. バナナの国の黄色い戦争
2. NOBODY KNOWS
3. POP MUSIC
4. プラネタリウム
5. Call my name
6. FUNKAHOLiC
7. フォノスコープ
8. 潔癖
9. 13階のエレベーター
10. コノユビトマレ
11. sofa
12. 宇宙

初回特典DVD
1. フォノスコープ (PV)
2. NOBODY KNOWS (PV)
3. コノユビトマレ (PV)

Suga Shikao Official Website

「コノユビトマレ」